「メルセデス-マイバッハ」としてリスタート2012年に一旦は幕を下ろしたマイバッハの復活がメルセデス・ベンツよりアナウンスされたのは昨秋のことである。但し、新生マイバッハは従来とは異なり、メルセデス・ベンツのラグジュアリー性を究めたサブブランド「メルセデス-マイバッハ」として位置づけられた。同様にパフォーマンスを追求した「メルセデス-AMG」と同じように、あくまでメルセデス・ベンツをベースにするモデルというポジションに再定義されたのだ。 その第一弾として送り出されたのがメルセデス-マイバッハSクラスである。その名の通り、ベースとなるのはメルセデス・ベンツSクラス。最大の特徴は、B~Cピラー間でホイールベースが200mm伸ばされたことだが、そのサイドビューを見れば、単なるストレッチ版ではないということは一目瞭然だ。実はリアドアは逆にSクラス ロングより66mm短縮されており、Cピラーには独立した三角窓が設けられている。これだけでも明らかに違った、上質な雰囲気が醸し出されているのだから巧いものである。 Sクラスのハイエンドモデル外観上のその他の違いは、ラジエーターグリル内の縦ルーバー、ディッシュタイプとなる専用の鍛造20インチホイール程度。マイバッハのエンブレムはCピラーに付けられ、またトランクリッド左側にも「MAYBACH」のロゴが入るが、車両の前後中央に輝くのは、あくまでメルセデスのスリーポインテッドスターだ。 同じようにSクラスをベースとしながらオリジナルのスタイリングをまとっていた従来のマイバッハとは異なり、メルセデス-マイバッハSクラスは、あくまでもSクラスのバリエーションのひとつであり、外観上もそう仕立てられている。かつてほどのエクスクルーシヴ性は無いかもしれないが、一般に向けた解りやすさは間違いなく上。この辺りがどう捉えられるかは興味深いところと言える。 文句のつけようがない豪奢な内装何より力が注がれているのは、やはりリアシートである。ニースペースはSクラス ロングに較べて59mm広く、ルーフ形状の変更でヘッドルームも12mm増えている。独立した左右席がそれぞれ航空機のファーストクラスキャビンのように囲まれたエグゼクティブシートは、前後スライドとリクライニングを独立して調節できる。バックレストの立てた状態での角度が19°で、最大では43.5°まで寝かせること可能だから、空間にも姿勢の自由度にも文句をつける余地など無い。 そもそも見えるところすべてにレザーやウッドが張り巡らされた豪奢なインテリアには、更に好みに応じて選択できる様々なオプションが用意されている。 リアドアが短い理由とは?試乗車は、何とここも革張りの格納式テーブル、飲み物の保温/保冷も可能なサーモカップホルダーなどを備えるセンターコンソール付きの“ファーストクラスリアスイート”仕様。助手席を通常より更に前に出すことができ、後席用フットレストも備わる“ショーファーポジション”、更には高性能フィルターやイオン化機能、専用のパフュームアトマイザーなどをセットした“エアバランスパッケージ”も用意された、まさに贅を究めた仕立てとされていた。もちろんレザーやウッドなどは好みに応じてどのようにも組み合わせられることは言うまでもない。 こうして数字や装備を並べるだけでも十分唸らされるのだが、実際にそこに腰を下ろしてみると、更なる驚き、感動が待っていた。 前述の通りリアドアは短く、それ故に着座位置は少々奥まったところになる。顔の真横に来るのはドアウインドウではなくCピラーと、そこにはめ込まれた小さな三角窓。おかげで閉塞感を覚えることなく、それでいて適度に外界から遮断された感覚を得ることができる。このクルマのリアシートに座るような人は基本的に、周囲からそう注目されたくはないはず。リアドアが短いのは単なるデザインではなく、マイバッハならではのニーズに応えるものなのだ。 大理石でも敷き詰めてあるんじゃないか…カリフォルニアにて行なわれた今回の国際試乗会に用意されたのは、V型12気筒6リッター・ツインターボエンジンを積む「S600」。ラインナップには他にもV型8気筒4.7リッター・ツインターボの「S550」、そしてその四輪駆動版である「S550 4MATIC」も設定される。 さすがマイバッハらしく、試乗は運転手付きでスタートした。慣れないリアシートに乗り込み走り出してもらうと、まずはこの手のロングホイールベース車にありがちなフロア周辺の微振動が完璧に抑え込まれていることに、大いに感心させられることとなった。 まるで足元に大理石でも敷き詰めてあるんじゃないかというほどの落ち着きをもたらすのは、もちろん第一にはボディ剛性の高さ。実はドア開口部が小さいことが、ここにも効いているという。他のSクラスと同様にランフラットながら、内部に制振フォームを入れた専用タイヤの効果も小さくないに違いない。 静粛性の高さはまさに圧倒的あのメルセデス・ベンツS600ロングを明らかに凌ぐ圧倒的なまでの静粛性にも舌を巻いた。剛性の高いボディに、更に広範囲に敷き詰められた遮音・制振材、密閉性を増すよう改良されたドアシールなどによって、風切り音もロードノイズも徹底的に抑えられている。 更に、実は件のドアよりも後方となる着座位置も、静粛性に貢献しているという。重く構造の複雑なドアや開閉機構を持つリアドアウインドウは、実は外部からの風圧などによって騒音源となりがち。乗員の耳の位置をそこから遠ざけ、真横には固定式のウインドウを置いた空間設計は、実はプライベート感だけでなく静粛性のためでもあったのだ。 ちなみにステアリングを握った印象は、確かに通常のロングボディがライトウェイトスポーツカーに思えるほどどっしりとはしているものの、それ以外はボディの剛性感も高く、パワーも当然ながら十分で、快適に走らせることができた。つまりショーファーの立場でも、文句の出る余地など無いということである。 「プルマン」の復活も予告リアシートの快適さ、仕立ての上質さではかつてのマイバッハに決して負けていないメルセデス-マイバッハSクラスだが、価格は最高峰の「S600」で18万7841.5ユーロ(約2500万円)と、4千万円以上したマイバッハに較べると相当にリーズナブルな設定となっている。 従来のマイバッハがロールス・ロイスのファントムやベントレーのミュルザンヌに対抗していたのに対して、今回はゴーストやフライングスパーをライバルと見据えていると言っても間違いではないはずだ。アメリカ、ヨーロッパ、日本だけでなく中国や新興国での伸びが著しいこのセグメントへの投入は納得できる。 しかしながら冒頭に第一弾と記したように、メルセデス-マイバッハの攻勢は、これだけでは終わらないのだ。まず予定されているのは、更に大型のボディを持つ最上級モデルの「プルマン」。1960~1980年代に“究極のメルセデス”として君臨した往年の名の復活が、今回の試乗会の場で正式に宣言された。こちらはおそらく全長6.5m前後、3列シートのリムジンとなるだろう。 次なるモデルはSUVか!?そして、ここからは噂の域を出ないが、メルセデス-マイバッハはそのラインナップを更に拡大するつもりだとも言われている。驚くなかれ、次なるモデルはSUVだと言われているのだ。たとえば“メルセデス-マイバッハ GLクラス”なんてモデルが登場したと想像するならば…ベントレーやロールス・ロイスの参入も囁かれているこの市場で、大いに注目を集めることは間違いない。 そのブランド戦略は、巧みの一言。これからのハイエンドラグジュアリーカー市場、メルセデス-マイバッハが大いに楽しくしてくれるはずだ。 主要スペック【 メルセデス-マイバッハ S600 】 |
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