販売好調のデミオで指宿スカイラインへ今年もやってきた鹿児島。空港に降り立った瞬間、東京よりも明らかに暖かいのだが、残念なことに雨。鹿児島は九州一広い県で、特に南北に長いため、本土内でも北と南では気候が結構異なるそうだ。訪れたのは南部の指宿。離島を除けば最も暖かい地域だろう。指宿といえば砂むし温泉。浴衣姿で砂を敷いた床(温泉による床暖房となっている)に寝転がり、上から砂をかけてもらうのだが、ほんの数分で額に汗が浮き始め、10分もすると自分の心拍数が上がっているのがよくわかる。15分が限界。その後数時間は身体がずーっとポカポカ。 ああ来てよかった指宿…という報告のために訪れたのではなく、マツダがここのところ恒例としている鹿児島試乗会に参加したのだ。昨年は出たばかりのアクセラに乗ったが、今年は発売直前のCX-3! …はちょっと間に合わず、販売好調のデミオを、最高に楽しいワインディングロードの指宿スカイラインでめいっぱい走らせてきた。 3カ月で7カ月分の3万5000台を受注昨年9月にモデルチェンジしたデミオ。その後3カ月で計画の7カ月分に相当する約3万5000台を受注したそうで、今も多くの方が納車されるまで奥田民生を聴きながらBe a driver状態でエア運転しているのだろう。 どこから数えてそうなるのかよくわからないのだが、2012年に登場したCX-5以降のアテンザ、アクセラ、デミオ、そして発売目前のCX-3あたりはマツダ社内で「第6世代」と呼ばれる。おそらく次のプレマシーあたりまで含まれるのだと思うが、要するにスカイアクティブ テクノロジーが盛り込まれてからのクルマを指す。これら第6世代のマツダは総じて評判が高く、販売も好調だ。 Bセグハッチでいちばん“走る喜び”がある実際、どれを走らせてもセダンはセダンなりに、SUVはSUVなりに楽しい。中でもコンパクトカーのデミオを走らせた時の爽快感はなかなかのもので、東西のいわゆるBセグメントのハッチバックを見て触れてみても、走らせて得られる喜びに関しては、デミオ以上のものが見当たらない(アウディS1はスペシャルモデルとして別枠扱い)。 なぜデミオが楽しいのか、指宿スカイラインを走らせながら確認していった。最初に乗ったのは「XD ツーリング Lパッケージ」。1.5L直4ディーゼルターボ(最高出力105ps/4000rpm、最大トルク25.5kgm/1500-2500rpm)のスカイアクティブ-Dエンジンと6ATの組み合わせを搭載する。加えてテスト車は4WD。18万3600円分のオプション装備を含めた価格は241万9200円※と、国産Bセグとしてはなかなかの価格となる。※ソウルレッドプレミアムメタリック(4万3200円)を選んだ場合の価格。 4WDでも重量ハンディを感じさせないディーゼルディーゼル・デミオはトルキーで、結果としてかなり速いクルマだが、FWDに比べ車重が90kg重い1220kgの4WDではどうかというと、重さによる影響はわからなかった。とっかえひっかえ乗れば気づくかもしれないが、以前乗ったFWDの記憶と比べると一緒。ウェット路面の状況ではコーナーの立ち上がりなどで恩恵を感じることはあっても、重さは感じなかった。 ただしこれはトルクで走るディーゼルならではのことで、ディーゼルより車重が約100kg軽いガソリン車の場合、4WD化による車重増のネガを感じるかもしれない。いずれにせよ、これだったら受けられる恩恵を考えて4WDを選んでおきたいと思わせるが、価格差20万円弱をどう考えるかは住んでいる地域や用途次第だろう。 AT任せでも力強いディーゼルの走り指宿スカイラインはひたすら右へ左へコーナーが続く。アップダウンも加わる。ひとつひとつのコーナーが長く回りこむように走る場面も多い。ただコーナーの曲率が途中で変わらないのでおっとっと…とはなりにくく、走っていて気持ちよい有料道路だ。料金を支払ってディーゼル4WDデミオのアクセルを深く踏み込むと、ディーゼルターボ特有のひと呼吸を感じさせた後、怒涛の加速を見せる。4WDだから一瞬も空転はない。その気になればリミットの4500rpmまでキレイに回るが、そこまで回しても速さにはつながらないので、スムーズに速く走らせたいなら最高出力を発する4000rpm前後に達した時点で自分でギアアップすべきだ。とはいえギア管理をATに完全に任せたって相当に力強く走らせることができる。 4WDでもリアサスはトーションビームのままだが、元々デミオのリアサスは高剛性ボディの効果もあってよく動き、よく仕事をする。路面のうねりにもよく追従してくれるので、安心感が高い。飛ばした時の報告ばかりになってしまったが、安心して飛ばせるということは、すなわち普通のペースならさらなる安心感を得られるということ。ファミリーカーとして使っても快適そのものだ。 アテンザにも見劣りしないインテリア先日、CX-5とアテンザが相次いでマイナーチェンジしたことにより、マツダ車のインテリアはどのクルマも、ひと目見て「ああ新世代のマツダだな」とわかる、統一感のあるデザインおよび仕立てとなった。コンパクトカーだからといってフラッグシップのアテンザに比べて安いっぽいかというと、そうでもないのがデミオの偉いところ。特に感心するのはシートの適度な弾力とドライビングポジションの適切さ。レザーシートでもファブリックシートでも、デミオのシートはなんというか、スマートな表現を思い付かないので感じたまま書いちゃうと“いい綿使ってんな”という印象。押すとゆっくり戻る低反発っぽいアンコによって腰を落ち着けるとビシッと決まる。 リアは足元の空間を確保するためかシートの座面が短め。個人的には足元空間が狭まったとしてももう少し太ももの先まで座面がきてくれたらなと感じたが、海外市場のことや使われ方などを総合的に考えてこの座面長に決まったようだ。 ドライビングポジションがいいもう一点のドライビングポジションは、デミオに限らずマツダが特にこだわりをもつ部分。身体の中心にステアリングホイールがきて、左右の足をどちらかにオフセットすることなくペダル操作が可能なレイアウトとしている。コンパクトなデミオでは運転席の足元空間を確保するのは容易ではなかったようだが、エンジニアは「前輪を前へ出来る限り追いやることで大きなクルマに劣らないペダルレイアウトを実現した」と胸を張る。実際、ATでもMTでもフットレストを含むペダルレイアウトは良好。 とにかく、走らせて楽しいと感じるのに大事なのはパワートレーンや足まわりだけじゃないよという主張を随所から感じる。 ワインディングで軽快なガソリンモデル翌日はFWDの13S、すなわち1.3L直4ガソリンのスカイアクティブ-Gエンジンと6ATの組み合わせに試乗した。パワースペックを見ると、最高出力92ps/6000rpm、最大トルク12.3kgm/4000rpmと、スカイアクティブ-Dに比べずいぶん控えめだが、車重1030kgと、前日のディーゼル4WDに比べて190kgのマイナス。さすがにこのダイエット効果は大きく、加速力を除く挙動はこちらのほうが軽快だった。翌日は晴れて路面が乾いたこともあって、指宿スカイラインのようなつづら折りにはガソリンのほうが似合っているような気がした。 発売から数カ月たったディーゼルとガソリンのデミオを存分に動かして、やはり走らせたらBセグメントでナンバー1だと再確認できた。ホンダ・フィットやニッサン・ノートのようなユーティリティー性能は望めない。トヨタ・アクアのようにハイブリッドじゃないので、渋滞したり調子に乗ってかっ飛ばしたりすれば燃費性能は負けるだろう。ただし、どこかへ行って楽しむのではなく、どこかへ行く過程を楽しむとしたら、マツダの末っ子で間違いないだろう。店の数が違うからベストセラーになるのは難しいにせよ、好き者に愛される存在であるのは間違いない。 スペック【 13S 】 【 XD ツーリング Lパッケージ 】 |
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