意外なクルマで雪山へ向かう予報ほどの雪が降らないまま、真冬を迎えてしまった灰色の都心を抜け出して、見渡すかぎりの雪景色を探すドライブに出かけてみた。いつもなら、頼もしい4WDのSUVなんかで悠々と走っていくのが定番だけど、今回の相棒たちはちょっとちがう。 2015年の元旦に、社名を「FCAジャパン」として新たなスタートを切ったインポーターが擁する5つのブランド、アルファロメオ・クライスラー・フィアット・ジープ・アバルトの中から、夜のイルミネーションが似合うラグジュアリーセダンや、太陽の下を元気いっぱいに走り回るイメージのイタリアン・コンパクトを選んで、あえて冬ドライブを試してみようと企んだのだった。 ストレスフリーな“いかつい”セダン大きなメッキフレームが威圧感あふれるフロントマスクに、肩をいからせているようなワイルドなボディで、佇まいからしてタダ者じゃない「クライスラー 300 SRT8」は、大人3人のスーツケースをラクラクと飲み込み、しっくり溶け込んでいた東京の風景をあとにした。心地よく肉厚なシートに身体をあずけていると、すぐに信号につかまるせわしない道も、まったくストレスにならないから不思議だ。 高速道路に入ると、20インチのスタッドレスタイヤは少々ゴツゴツとする場面もあるけれど、6.4LのV8・HEMIエンジンと5速ATの組み合わせはとてもなめらかで、ちょっと右足を踏み込めばバビュンと逞しい加速フィールを見せてくれる。 それに、欧州のラグジュアリーセダンが続々と味気ないデジタルメーターにデザイン変更していく中で、クライスラー300のメーターは優美なメッキリングに数字の目盛りと美しい針があしらわれた、どこかクラシカルな薫りの残るメーター。そこにサファイアブルーのLEDバックライトが先進感もプラスし、丁寧なつくりのインパネや手のひらに馴染むステアリングとあいまって、とても満ち足りた気分にしてくれる。 しばらく高速クルージングを楽しみ、小さなトンネルをいくつか抜け、日本有数の別荘地でランチタイムをとることにした。ICを降りると周囲にあまり雪は残っておらず、路面もほぼドライ。ただ、幹線道路からちょっと細道に入ったところで少々の雪を踏みしめ、ハンドリングや乗り心地になんの不安もないことを確かめたところで、クライスラー300とのなんとも優雅な冬ドライブを終えたのだった。 人気も頷けるスペシャルな「S」東京より外気温は7度ほど低く、ドアを閉める手が一瞬で凍りつく。でも温かい食事でパワーチャージを済ませた私たちが次の相棒に選んだのは、ツインエアエンジンとマニュアルトランスミッションのマリアージュが味わえる、イタリアン・ホットハッチの「フィアット 500S ツインエア」だ。 以前、日本では限定モデルとして発売され、あっという間に完売した500Sが、このたびカタログモデルとして堂々デビュー。キュートなイメージの強い500だけど、この「S」だけはエクステリアからしてひと味ちがっている。 スポーツ、スペシャル、洒落っ気、セクシーと、いろいろな「S」が意味付けられているだけに、大きめのスポイラーや鈍い輝きがシックな15インチアロイホイールなど、ほどよいヤンチャ加減が見え隠れして、これなら男性にもしっくり馴染む。ボディカラーは500S専用の新色、イタリーブルーで、これも今までになかった個性的なカラーだ。 センスを感じさせる仕立てインテリアを見てみると、こちらもいつものポップなインパネやカラーとは打って変わって、ブラック基調にガンメタのパネルがスポーティ。シートもカッチリとしたセミバケット風になり、ブルーのパイピングが効いてセンスの良さを感じさせる。 先日の改良で、フィアット初の7インチTFT液晶メーターが採用されており、速度・回転数・燃料・水温などの基本情報はもちろん、燃費やエコ運転の5段階評価まで表示される。シフトノブ付近のエコノミーモードボタンを押すと、アクセルコントロールに応じたインジケーターが出てきて面白い。 そして、気分をアゲてくれるのはなんといっても5速マニュアルの真っ赤なシフトノブ。センターパネルから斜めにニョキッとはえているのも、ちょっとクラシカルなレーシングカーっぽくていい感じだ。エンジンは500でお馴染み、わずか875ccの直列2気筒マルチエアインタークーラー付ターボ、TwinAir。でも85ps/145Nmと1.3L車並みのパワーを発揮してくれるし、燃費は26.6km/Lと優秀だ。ここからのルートは雪が多くなるはずだから、どんなドライブになるのかワクワクしてきた。 スカッとする加速のシャワー185Lと小さめ容量のラゲッジに3人分のスーツケースは収まらず、後席を片側倒してなんとかリアゲートを閉めることができた。後席に乗ってくれたのはカメラマン氏だが、頭上はタイトなものの、すっぽり収まる感覚でそれほど苦痛ではないらしい。前席2人は予想以上にゆったりとしていて、身体にほどよくフィットするシートが安心感も与えてくれる。 クラッチペダルは案外と剛性感があり、グッと力強く踏み込んでみる。勢いよく発進したのち、ものの数十秒。私はすでに、「楽しい!」と叫んでいた。もともと低回転からピークトルクが出てくるツインエアと、5速のシフト操作が合わさると、もうどこを切り取っても元気いっぱい、いつでも何度でもスカッとする加速のシャワーを浴びて走ることができる。少々の上り坂だって、3名乗車のくせになかなかパワフルで、走っても走っても楽しさが続いていく。 雪道でも楽しさは続いていく高速をおりて一般道をひたすら走り、タイヤから雪と氷の手応えを感じるようになると、それはまたちょっと別の楽しさへと変わる。FFだけどちょっと鋭くステアリングを切ったり、強くアクセルを踏み込むとリアが緩やかに振られて、気分だけはラリー車風の乗り味に。でも接地感はしっかりあるので不安はまったくなく、あくまで「コントロールしてる風」な感覚が楽しめる。 もちろん、路面状況によって過信は禁物だけど、降りた時にちょっとスキーやスノボをしたあとのような爽快感が残るのは、冬の路面でしか味わえないドライブだ。 ラグジュアリーな「クライスラー300 SRT8」、元気で爽快な「フィアット 500S ツインエア」で、新鮮な冬ドライブを堪能した私たち。あくる朝、新雪に覆われた美しい風景を目に焼き付けることもでき、もう、言うことなしの大満足だ。 でも、最後のシメとなるとやっぱり定番が欲しくなった。帰路には世界的に大ヒット中の「ジープ・グランドチェロキー」をチョイス。どんな気候、どんな路面でも無敵と言えるほどの走破性を誇るセレクテレインシステムに、230mmの最低地上高、頑丈なボディと先進の安全装備で、何が起こっても大丈夫という安心感に包まれつつ、東京へと戻って行ったのだった。 クライスラー 300 SRT8・主要スペック全長×全幅×全高=5090×1905×1485mm フィアット 500S ツインエア・主要スペック全長×全幅×全高=3585×1625×1515mm |
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