GRの新サービス「サーキットモード」を試すTOYOTA GAZOO Racing(以下:GR)が8月21日より提供を開始した「サーキットモード」。 クルマのポテンシャルを引き出すという触れ込みの新サービスだが、「TGRD(TOYOTA GAZOO Racing Driving experience)」との併催で9月9日に大分県のオートポリスで行われたユーザー体験会にて、開発の狙いや実力を確かめた。 ◎あわせて読みたい: サーキットモードとは、スマートフォンの専用アプリ「サーキットモードアプリ」のGPSによる位置判定を使用し、特定のサーキット内でアプリからモードを起動すると、メーターがシフトタイミングやエンジン回転数を直感的に表示する専用デザインへと切り替わり、さらにアンチラグ制御の追加やスピードリミッター上限速度の引き上げなどが有効になる機能だ。 カーナビのGPS機能を用いてスピードリミッターを解除する機能は、日産「GT-R」やホンダ「シビックタイプR」など他社にも搭載されている。またシフトタイミングのインジケーターなど、メーター表示をサーキット走行に合わせて変える機能も登場しているが、後発であるGRのサーキットモードは何が違うのか? 開発を取りまとめたGAZOO Racingカンパニーの茶谷勝利氏は次のように話す。 「モータースポーツを楽しむ人が、もっと安心して楽しめるようにという点は(他社と)変わらないが、もっとドライバーに寄り添いカスタマイズできるようにしたのが大きい」 茶谷氏は、運転データをもとにソフトウェアを最適化させるKINTOのサービス「パーソナライズ」の開発にも携わった人物。パーソナライズは、ドライバーの個性や好みに合わせて愛車をカスタマイズすることでクルマとの一体感が高まる独自のサービスだ。筆者も以前体感した際、その可能性に大きく驚いたとともにワクワクした記憶がある。 「サーキットモードとパーソナライズは、アプローチこそ違うけれど狙いは同じ。どちらもサーキットをより楽しんでもらうためのもの(茶谷氏)」 ◎あわせて読みたい: >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら #トヨタ #GR #TOYOTA GAZOO Racing #GRヤリス #サーキットモード #LBXモータースポーツでの不満を解消開発の発端はやはりモータースポーツの現場だ。トヨタがWRC(世界ラリー選手権)で勝つために作ったと言っても過言ではないGRヤリスは、2020年の発売以降、ラリーだけでなくジムカーナや耐久レースなど数多くのモータースポーツへと投入され、壊されそして進化してきた。 「GRヤリスはカスタマーモータースポーツの現場でも鍛えてもらっていて、その中でサーキットを走る際にスピードリミットが当たってしまい満足できないという声があった。(180km/hの)自主規制はメーカーとして守らないといけないが、サーキットに行った時だけ開放して、もっともっとスピードを出せるようにできないかというのが開発の発端(茶谷氏)」 モータースポーツで得た知見を市販車に反映する、サーキットモードはまさに「モータースポーツを起点としたもっといいクルマづくり」を旗印に掲げるGRならではのサービスということだ。さらに茶谷氏は続ける。 「S耐やジムカーナ、ダートラなどでエンジンをかけて止まっている時がある。皆さんボンネットを開けて空気を逃がしていたがそれでも不十分だった。なかなか水温や油温が下がらなくて結果パフォーマンスが出せなくなったり、オイルの劣化が気になってなかなか全開で走れないという課題があった。モータースポーツの現場で困っていることを聞いて作ったのがクーリングファンの制御(茶谷氏)」 スピードリミッターの解除やクーリングファンのON/OFFは、言わば足りなかったものを“補う”機能。それに加えサーキットモードには、ユーザーがサーキット走行をもっと楽しむための“プラスα”も備えている。 ◎あわせて読みたい: >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら 電子制御で過給圧をコントロールする独自のアンチラグその際たる例が「アンチラグ制御」だ。 「ターボラグがあるせいでコーナーの立ち上がりでバラツキが出てしまう。色々なスキルのドライバーが同じような加速を得られるするために投入した(茶谷勝利氏)」 ラリーウェポンとして登場したGRヤリスらしい“いかにも”な機能だが、ラリーカーのように排気管の中で爆発させ“パンパン”と音が響くタイプだと触媒が傷んでしまうそうで、あくまでも電子制御で過給圧をコントロールする独自のシステムだそうだ(詳細は企業秘密とのこと)。 ◎あわせて読みたい: また、専用デザインへと変化するメーター表示も、進化型GRヤリスの開発にも携わったレーシングドライバーの大嶋和也選手と一緒に細部までこだわった逸品だ。レブリミットに近くなると表示でドライバーに知らせてくれるのだが、赤やオレンジが一般的な中、GRのそれは青い光で知らせてくれる。 「大嶋選手に聞きながら表示の点き方や色を詰めていった。何回もやり直して今の青い色を出したら『これいいね。わかりやすい!』って言ってくれて。最後(の色)は赤がいいか黄色がいいか、目立つために色々考えたんですが、結論は青でしたね。目線をメーターに持ってきてはダメなので、前を向いて外野視で色がわかるというのを特に意識した(茶谷氏)」 表示を変え“見やすいように点く”だけなら他メーカーからも同様の機能が出ているが、GRのサーキットモードでは、表示タイミングや回転数もドライバーがアプリ上からセッティングすることができるのが特徴だ。 「どの回転でシフト操作するかは、コースだったり、タイムアタックする時や練習で走る時などシチュエーションで変わってくる。インジケーターも、ドライバーによってタイミングの好みも変わってくる。プロの好みもたくさんあったので、これは1つにできないなと思って。ピッタリと自分に合うタイミングで表示できればバラツキも抑えられる。そこを選べるようにしたのがポイント(茶谷氏)」 ◎あわせて読みたい: >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら モータースポーツを擬似体験できるのも魅力茶谷氏の説明を聞いた後、いよいよ実際にGRヤリスに乗り込んで試してみる。今回は開発に携わったエンジニアに同乗してもらった。 まずはアプリを起動して、サーキットモードをオン。BluetoothやWi-Fiではなく、実際にサーバーと車両が通信を行うので、設定が反映されるまでおよそ10~20秒ぐらい(時間は通信環境によるとのこと)かかるのだが、起動するとメーターの表示が変わりアイドリングの回転数が高くなる。エンジニアによると、回転が高まるのは「あくまで高揚感を高める演出」だそうで、こういった遊び心も取り入れていることにも驚いた。 コースインして実際にシフトタイミングが近づくと、外野視の中で青い光が瞬いているのが想像以上によくわかる。視線を移す必要がないので、慣れてくるとシフト操作やライン取り、次のブレーキングポイントにより意識を集中することができた。 当初表示タイミングを1.5秒、回転数を6000rpmに設定したのだが、エンジニア曰く筆者は結果的に6500rpmあたりでシフトアップしていて、かつ変速スピードが速いので1.0秒に設定した方が狙った回転でシフトアップできるとアドバイスをくれた。 自分の癖などに応じてマシンをセッティングする作業は、レースの現場でプロドライバーがしていることと同じ。モータースポーツの擬似体験をユーザーが手軽にできるのもこのシステムの魅力かもしれない。 ◎あわせて読みたい: >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら アンチラグが街中で使えないワケ件のアンチラグは、効果がわかりやすいよう無/中/強の3つを試した。元々ターボラグをあまり感じないピックアップの良いエンジンだが、中にすると低速トルクがアップし排気量が大きくなったイメージで、コーナーからの立ち上がりがより鋭くなる。 一方、強だとこちらはさらに加速が強調されるのだが、アクセルオフ時もクルマが勝手に進んでいってしまう嫌いがあり違和感があった。 当初そんなに便利な機能ならデフォルトで一般道でも使えるようにすればいいと思ったりもしたが、茶谷氏は「極端に言えばアクセルオフでもクルマが加速しようとする。止めたいと思ってもクルマが逆の力を発生させてしまうので、交差点や街中で怖いと思ってしまうし、これはメーカーとしてやってはいけない。安全を担保するためにサーキットのみで使えるようにしている」と教えてくれた。 現在のところ対象車種は「GRヤリス」とレクサス「LBX MORIZO RR」のみの展開だが、茶谷氏曰く、もちろん他の車種への展開も考えているそうだ。また「コーナーごとに色々とセッティングを変えられたらF1みたいで面白いのでは?」と振ってみると、ゆくゆくはそれも考えています、とニヤリとしながら教えてくれた。 体験後茶谷氏に印象的なエピソードを聞いた。 「昨日サーキットモードの体験会に来たお客様が、以前パーソナライズを試してくださった方だったんですよ。パーソナライズした後サーキットを走り始めたと仰っていて、そういう方々をたくさん増やしたいと思って我々も作っているので、やっぱり嬉しいですね(茶谷氏)」 モータースポーツの一端を味わえるサーキットモード。オーナーならGRヤリスへの愛着がより高まることは間違いないだろう。GRヤリスは覚醒し、まだまだ進化を続けていく。 (終わり) ◎あわせて読みたい: >>全国のサーキット・走行会・イベント情報がまとまった「みんカラサーキット」はこちら |
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