クリーン・ディーゼルの日本導入を検討中先代モデルよりもサイズを一回り小さくするとともに、2001年以来の新開発プラットフォームで車両重量を約100kgも軽くしたプジョー308。それを知っただけで「期待が持てそうだ」と思っていたが、乗ってみると想像以上のフットワークの持ち主で驚いた。シャシー性能は、高評価なVWゴルフを凌駕していると言っても過言ではなく、ヨーロッパ・カー・オブ・ザ・イヤー2014に選ばれたことにも素直にうなずける。 そんなプジョー308に、ダイナミックバージョンのGTが登場。ポルトガルで開催される国際試乗会に赴くことになったのだが、じつは嬉しいサプライズがあった。プジョー・シトロエン・ジャポンでは、このプジョー308/308SW GTのクリーン・ディーゼルを導入することを真剣に検討しているというのだ。日本のディーゼル乗用車市場は、まだ絶対数は少ないながらもマツダやBMW、メルセデス・ベンツなどで人気に火が付き、これからの飛躍が見込まれている。以前からディーゼル導入に意欲を見せていたプジョーにとっては、いいタイミングだろう。 欧州で人気のディーゼルだが、なかでもフランスは特にシェアが高い。また、ガソリン車が中心のアメリカに販売網を持たないプジョーにとって、ディーゼルはコアテクノロジーといえるもので性能には大いに自信を持っている。是非とも日本でも乗れるようにしてもらいたいものだ。 ちなみにGTは308以外の車種でも展開され、スタンダード・グレードと、208に用意されるGTiの中間的なモデル。日常域を大切にしながら、ダイナミックなパフォーマンスへと引き上げている。 専用エクステリアと気分を盛り上げるインテリアプレミアムやアリュールといった通常のモデルのフロントマスクは、ライオンのエンブレムがボンネット上に配されるが、308GTではグリル中央にデンと構え、3本のラインと構成される。 ヘッドライトは左右合計62個のLEDを使用する専用品。リアビューではブラックのディフューザーとツインエキゾーストパイプが採用されている。ダイヤモンドと名付けられ、スポークに溝が着られた18インチの専用ホイールはミシュラン・パイロットスポーツ3との組み合わせ。車高はフロントが7mm、リアが10mm下げられている。 インテリアは、基本的なデザインに変わりはないものの、特徴的な小径ステアリングの内側に赤ステッチが入り、下部にはGTエンブレムが入る。赤ステッチはダッシュボードにドアパネル、シフトレバー周りなど各部に入れられ、センス良くスポーティ気分を盛り上げるものとなっている。 180ps/400Nmのハイスペックで燃費は25km/LGTにはガソリン車もあるが、今回の試乗では眼中になく、ひたすらディーゼルを味わうことにした。欧州で308が発売されたタイミングで新開発された直列4気筒 2.0L BlueHDi 180は、当然のことながら最新の排出ガス規制、EURO6対応。 最大2000barまで作動する第三世代コモンレール燃料システム、7穴インジェクター、0W-15の超低粘性オイルなどを採用し、従来型に対して7kgの軽量化も果たしているという。 最高出力180ps/最大トルク400Nmとハイスペックながら、燃費は欧州モードで25km/Lと秀逸。ミッションはATのみ。アイシンAW製の第三世代は高効率化を果たし、燃費はMTとほぼ同等になったという。ちなみにVWゴルフGTDは2.0L+DSGの組み合わせで 184ps/380Nm、燃費は22.2km/Lとなっている。 ガソリン車かと思うほどの静かさ日常の足としてBMW 320dに乗っていることもあって、同じ2.0Lのプジョー製クリーン・ディーゼルはどんなものかと大いに興味があった。最大トルクが308GTのほうが20Nm高いことに軽く嫉妬を覚えつつ(!?)、始動してみたらびっくり。ノイズとバイブレーションは圧倒的に308GTが低い! 最近のディーゼルは昔のようにうるさくない、というのは半ば常識だが、誇張無しに、言われなければガソリン車かと思うほどに静かだ。一応、BMWの名誉のために付け加えておくと、1気筒あたり500ccのモジュール戦略となってからの新しいディーゼル・エンジンがかなり静かになっているのは、欧州仕様のMINI 5ドアで確認済み。直接比べてないので断言できないが、静粛性はいい勝負なんじゃないかと思う。 新しく、ユニークなエンジンサウンド発進からじつに頼もしいのは言うまでもないが、そこはBMW 320dを確実に凌ぐというほどではなかった。ATの段数の差や最大トルク発生回転数の違いによるものもあるだろうが、静かで振動が少ないので感じ方も変わってくるのかもしれない。 いずれにせよ、そこは些細な差なのだが、308GTが魅力を輝かせるのがアクセルを積極的に踏んでいったときのサウンドの質だ。センターコンソールのボタンでスポーツを選択するとサウンドシグネチャーによって擬似的なエンジン音が室内に響き渡ることになる。擬似的といっても、完全な作り物ではなく、あくまでエンジンを音源として音質調整しているという。 ガソリン・エンジンのスポーティさとは異質で初めて聞く類の音色。荒々しい鼓動が強調されているのが、いかにも高圧縮なディーゼルらしいところだ。ビートが効いていて低音域の迫力がありつつ、甲高い音も入り交じったサウンドにはブラックミュージックのような興奮があり、ガンガンにアクセルを踏んでいきたくなる。ディーゼルをこんなにもスポーティに聞かせるのは新しく、他にはないユニークな試みだ。 シャシー性能は間違いなく一級品ノーマルモードでの静けさから、スポーツモードに切り替えたときの豹変ぶりにびっくりさせられた308GT BlueHDi 180だが、シャシー性能も大いに魅力的だった。ロール剛性はフロントが20%、リアが10%強化されているが、主にチューニングに腕をふるったのはダンパーだという。 微少入力域から、サスペンションはスムーズに動いているので乗り心地に不快さはなく、またステアリングやブレーキ、アクセルの微細な操作に対して敏感に反応してくれる。引き締めてはいるが、突っ張った印象はまるでないのだ。 それでいて、路面から大入力を受けたり、ハードにコーナリングをしても、タフでじつに頼もしい。ストロークしていくごとにググッと粘りが増していくような感覚で、コーナーを飛ばせば飛ばすほど路面に吸い付いていく。しかも、どんな状況でもしなやかさがあり、コーナー内のバンプやうねりを見事に吸収していく鮮やかな足さばきだ。 FFながらアンダーステア感がほとんどない一体感の高さ、十分に高いスタビリティながら動かしたいときに動かせる感覚のリアなど、前後バランスもいい。シャシー性能は間違いなく一級品だ。 日本導入は来年中の予定正直に言って、メインマーケットの南欧の経済状況の悪さが直撃して業績が思わしくなく、よそから資本注入まで受けたプジョーが、よくぞこんなクルマを造れたもんだと感心させられる。それは、状況を打破するべく付加価値を高めようとする表れだろう。プジョーは今、本気でプレミアム・ブランドへ脱皮しようとしているのだ。それが結果に反映されているのか、2014年にはV字回復を見せ始めている。 ただし、そのプレミアム化はちょっと悩ましくもある。この308GT BlueHDi 180、本国価格で約3万4000ユーロ(約462万円)と少々お高いのだ。確かにそれに見合うだけの実力はあるし、日本で売れているMINIなどでもクーパーSにオプションをちょっと付ければそれぐらいになることを考えれば、対価を払える潜在ユーザーはいるはずだ。 ちょっとだけ幸いなことに、日本導入は来年中と時間はまだある。その間に、最近のプジョーはクオリティが大幅にアップし、ドイツ勢と肩を並べるプレミアム・ブランドになっているのだと周知させる必要があるだろう。 スペック例【 308GT BlueHDi 180】 |
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