“第二のテスラ”を目指す米スタートアップ勢の行方昨年アメリカでは118万9千台のBEVが販売された。これは記録的な数字で新車販売のおよそ7.6%に達している。この内、テスラは63万8千台と半数以上を占めている。 今や押しも押されもせぬ自動車メーカーに成長したテスラは2005年にロータスのボディをBEVにコンバートした「ロードスター」で世に登場したスタートアップだった。 そして2007年に発売した「モデルS」が成功し、2016年には25万台、その後「モデルX」「モデル3」そして「モデルY」を次々に送り出し、昨年は181万台を出荷する世界有数のEVメーカーに成長したのである。 この成功もあって、ここ最近アメリカでは5本の指に余るほどのスタートアップがEVの生産販売に名乗りを上げている。「ファラデー・フューチャー」「ルーシッド・モーターズ」「ニコラ」「リヴィアン」「カヌー」「フィスカー」などだ。 >>フォトギャラリーでルーシッドとリヴィアンを見る しかしその殆どが、当時たやすく入手できたチャイナマネーと、元大手自動車メーカーのEV開発担当のヘッドハントによる安易な人材確保、さらに熟慮とプロフェッショナル精神に欠けた企業経営などで、市販モデルの発売を待たずに破綻をきたしているというのは笑えない状況である。 しかし、今回紹介するルーシッド・モーターズとリヴィアンはすでに彼らの製品が市場に出回っており、第二第三のテスラになる可能性も見えてきている。 (次のページでルーシッド エアを解説) >>「サイバートラック」は意外にも快適! 日本は普通免許で乗れない可能性も!? テスラを超える超高級を目指す「ルーシッド エア」ルーシッド・モーターズは元テスラの副社長だったバーナード・ツェが2007年に興したEVメーカーで、日本の三井物産も出資している。 「ルーシッド エア」のコンセプトはモデルSを超える“ラグジュアリー・ハイフォーマンス・スポーツセダン”で、今回試乗したグレードはピュア/ツーリング/グランドツーリングのうち、中間グレードのツーリングだ。 全長4.98×全幅1.94×全高わずか1.41m、ホイルベース2.96mの未来的なデザインをもつ4ドアサルーンは、前後モーターのシステム出力が620馬力で、最大トルクは1200Nmを発生。 2150kgの整備重量(EU)にも関わらずダイナミック性能は0-100km/hが3.5秒、最高速度は250km/hに達する。 800Vのアーキテクチャーをもつ電池の容量は92kWhで航続距離は587km(21インチホイールの場合)、チャージ能力はAC(普通充電)で22kW、DC(急速充電)では最大で200kW。ACはフル充電に5時間、DCは320km分の電力を15分で充電できる。 エクステリアデザインは未来的だが、インテリアはそれほどではなく、素材や仕上げを見る限り9万5000ドル(約1450万円、試乗車の場合)を超える価格に見合う高級感は少なかった。唯一ユニークな点はフロントガラスがルーフにまで広がっていることで開放感が素晴らしいが、これも視界が上に広がっただけで他に特筆すべき機能はもっていない。 >>フォトギャラリーでルーシッドとリヴィアンを見る パワーペダルを踏めばEVらしい豪快な加速感を見せる。3m近いホイルベースのお陰でピッチングは少なく、特にハイウェイでの乗り心地は素晴らしいが、この価格でラグジュアリー層にアピールするためにはエアサスペンションが欲しい。そうすればワンランク上のスーパークルーザーとしてドイツのプレミアムブランドに対抗できるはずだ。 ロングレンジレーダー(LiDAR)やカメラ、超音波センサーなど合計32個のセンサーによって提供される先進運転支援システムは、ACC、ハイウェイアシスト、トラフィックサイン認識機能、前走車との停止距離警告、ハイビームアシスト、眠気警告、わき見運転警告など様々なアシストを提供する。 テスト車に装備されていたオプションの「ドリームドライブ」はハイウェイではACC機能を提供、ロングツーリングでもドライバーの披露を軽減してくれる。また、ボディ前後のトランクはそれぞれ283Lと456Lの容量があり、大人4人の旅行にも対応している。 テスト中はどこへ行っても声を掛けられたが、特に興味を示した人に黒人が多かったのは面白い傾向だと思った。流行に敏感で趣味の良いリッチな層が多い事から一定の売り上げに貢献するだろう。 ルーシッドはライバルのテスラ「モデルSプレイド」に対抗して1251馬力の超高性能モデル「サファイア」も発売。さらに昨年末にSUVバージョンの「グラビティ」を公開、今年発売を予定しているが、これでイメージアップと同時にバリエーションが増え、ある程度の台数を稼げれば経営はさらに安定するだろう。 (次のページでリヴィアン R1Tを解説) >>「サイバートラック」は意外にも快適! 日本は普通免許で乗れない可能性も!? Amazonを顧客にもつリヴィアンのピックアップ「R1T」アメリカ人の好きなピックアップをEV化したリヴィアン・オートモティブは2009年の創立で西海岸に本社を置き、イリノイ州の工場で生産を行っている。スケートボードプラットフォーム(モーターやバッテリーを平たい形状に搭載したEVならではのプラットフォーム)を使用したピックアップ「R1T」の3サイズは5.46×2.0×1.82mでホイルベースは3.35mもある。 テスト車のグレードはスタンダード仕様の「デュアルモーターAWD」でシステム出力は533馬力、827Nmを発生。性能は0-100km/h加速は4.6秒、最高速度は185km/h。駆動用モーターはドイツの「ボッシュ」が開発した製品で、リヴィアンが自身でライセンス生産を行っている。 スタンダード仕様に搭載されているサムスン製バッテリーは105kWhで400Vのアーキテクチャーをもっている。航続距離は270マイル(約435km)と発表されている。 フロイントデザインは遠くから見てもすぐにリヴィアンと分かるユニークな表情で愛嬌がある。一方、インテリアの質感は平凡で8000ドル(約1200万円)のクルマとは思えない。フルデジタルのインストルメントも取り立てて個性的ではなく、まるで既製品のようだ。 >>フォトギャラリーでルーシッドとリヴィアンを見る サスペンションは前がダブルウィッシュボーン、後はマルチリンク。前後の重量配分が51対49のシャーシはスケートボード構造による重心の低さもあって意外なほどにメリハリの効いたスポーティなハンドリングを見せた。 ただし路面からのステアリングフィードバックはやや希薄で、アクティブなドライブが楽しめないのが残念だ。おそらく自重が3.8トンもあるために上屋の動きにタイムラグがあるためかも知れない。 当然ながら加速は鋭くハイウェイのランプからの進入はその重量にも関わらずおよそ65~70マイル/時の速い流れに入り込むことができた。残念なのはこうしたセッションでも前述したようにクルマを操っている感覚が薄い事で、EVに共通な感動的なものがない。 一方ADASの「ギア・ガード(商品名)」は11基のカメラが周辺をセンシングしており、ハイウェイアシスト、レーンチェンジアシストが標準装備だった。 ピックアップはアメリカ、特に私の住む中西部では使い倒す「道具」で、リヴィアンは都会育ちのようで全体的にちょっと線が細い。各部に用意されたEVならではのスペースを有効に利用したトランクなどもアイデアとしては悪くはないが、果たして購入の決定打となるかは疑問だ。 プロモーションビデオではラフロード走行でのタフさが強調されていたが、今回はトライしていないので実力派は分からない。大きな問題点は製品ではなく経営にある。現在リビアンの販売台数はまだ採算分岐点まで行っていないのだ。しかしAmazonがBEVデリバリーバンを同社に発注した事で(2030年までに10万台)経営は上向きになるかも知れない。 (終わり) >>「サイバートラック」は意外にも快適! 日本は普通免許で乗れない可能性も!? |
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