根強い需要があるコンパクトセダン2008年まで販売されていたフィットアリアは、東南アジア向けに開発されたシティだったが、新たに発売されたグレイスもまた生い立ちは同じ。フィットをベースにしたセダンで、2014年1月にはインドでシティとして発売されている。ただし、フィットアリアと違うのはハッチバックにトランクルームを付けただけのノッチバックではなく流麗でスタイリッシュになったこと、そして日本仕様はハイブリッド専用車とされたことだ。 5ナンバー・サイズのセダンは、地味であまり人気がないように思えるが、根強い需要はあるのだという。ホンダでもフィットアリアの他、トルネオやドマーニなどといったコンパクトなセダンが過去には存在し、そこからの乗り換えに困っているユーザー、あるいは子育て期間が終わってミニバンからセダンに回帰したいユーザーなどが少なからずいるそうだ。 多くは高齢化しているので手頃なサイズを望み、セダンは満足度の高いクルマであって欲しい、せっかく買い換えるなら次はハイブリッドカーにしたい、という声があり、グレイスはそこにはまる商品として開発された。プリウスに対抗するために売り出しつつもひっそりと消えていったシビック・ハイブリッドや2代目インサイトの後継という意味合いもあるのだろう。 燃費は34.4km/Lと秀逸ハイブリッド・システムはフィット・ハイブリッドと同様のi-DCD。前代未聞の5度のリコールを出してしまったが、そのためにグレイスは6月予定だった発売を半年ずらして品質確認。問題は克服したとホンダは断言している。 燃費は34.4km/L(DXグレードのFF)と秀逸で、フィット・ハイブリッドのベースモデル以外の量販グレードを上回っているが、これはタイヤと空力で達成。スタイリングと燃費スペックだけみても、フィットアリアよりも飛躍的に商品力は高まっているので、コンパクトなセダンを検討している人には気になる存在だろう。 後席はアコード・ハイブリッドに匹敵する広さセダンはその形状から、ボディ剛性を確保しやすく、静粛性に優れ、空力がいいという、生まれながらにしてメリットを持っているが、グレイスはそれを最大限に活かすべく設計された。 ノイズが侵入してくるボディの隙間への対策を徹底し、遮音・吸音材の適正配置、フロントドアガラスの板厚アップ、フロントウインドーへの遮音ガラス採用(EXグレード)など静粛性にはこだわり抜いている。リア周りは環状構造とすることで剛性アップ。入力分離式ダンパーマウントや液体封入ブッシュなどで上質な乗り心地と応答性に優れたハンドリングの両立を目指したという。 リア周りの剛性を高めたことは、ホイールベースの延長や、後席をなるべく後方へ配置することを可能とし、後席の足もとスペースを拡大することにも繋がっている。そのサイズはアコード・ハイブリッドに匹敵するほどで、座ってみればたしかにゆったりとしていて広い。リアドアの開口部が大きくとられているので、乗降性もいい。頭上スペースにはあまり余裕はないが、コンパクトなセダンとしては十分以上に使える後席だと言っていいだろう。 少し残念な変更もハイブリッドカーはトランクルームが侵食されることもあるが、出力密度の高いリチウムイオンバッテリーを含むIPU(インテリジェント・パワー・ユニット)はトランクルーム床下に収まっており容量は430L。トランクスルーも可能になっている。 インテリアの質感もまずまずといったところ。ダッシュボードの助手席側のソフトパッド、高輝度塗装で周囲を囲んだセンターパネルなど、日本のBセグメントとしては高級感がある。 コクピットに収まって少し残念に思ったのは、シビックやインサイトなどで採用していた上下二段のマルチプレックスメーターではなく、一般的なものに変更されたこと。高齢者ユーザーがターゲットならば、視線移動が少なかったマルチプレックスメーターは有効だろうし、やめるならヘッドアップディスプレイなども検討してしかるべき。また、Aピラー付け根とドアミラー周辺の死角が大きく視界良好とは言えないのも高齢者向きではない。これはスタイリング優先の結果だという。 リズミカルな加速、上質な乗り味i-DCDは発進をモーターのみで行うので一般的なDCT(デュアルクラッチトランスミッション)のようにガクガクすることがないのがメリット。グレイスもエンジン音なしのままスムーズに走り始め、10km/h程度でエンジンが介入する。アクセルを強く踏み込んでいくと想像するよりもずっと力強く、ステップギアならではのリニアでリズミカルな加速感が気持ちいい。 乗り味はフィットに比べるとずいぶんと上質に感じられる。サスペンションは微少入力域からスムーズに動き、街中の速度域では快適だ。静粛性はハイブリッドカーなので、そもそもから高いが、その反面で目立ちがちな風切り音やロードノイズはほどよく抑えられている。 セダンの復権なるか速度が高まり、大きな段差などを乗り越えるとちょっと硬さがでてくるが、スポーティな走りももたせているからだろう。今回はワインディングなどを走っていないが、ステアリング操作に対する動きは素直で機敏さもあった。高速道路での直進性もまずまず高く思えたが、試乗した日は強風が吹き荒れていてフラつき気味になることもあった。5ナンバー・サイズはトレッドが狭いので横風にはあまり強くないようだ。 i-DCDはブレーキフィールにこだわっているのも特徴。低速域ではサーボが急激に立ち上がるような違和感がなく、強いブレーキではリニア感がある。停まる瞬間にググッとしっかり感が強調されるのは安心感があっていいのだが、カックンとなりがちな気もする。だが、ハイブリッドカーやEV系のなかではもっとも扱いやすい特性だろう。 日本のコンパクトセダンとしては流麗なフォルムをもち、ただの地味系とは違う魅力をもったグレイス。ハッチバックのフィットでは出せない動的質感やハイブリッドならではの低燃費性能とあわせてセダンの復権なるか。注目の一台だ。 スペック【 グレイス ハイブリッド EX 】 |
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