好調ルーテシアに注目のグレード登場フランス車は長いトンネルを完全に抜けたようだ。少し前までルノーにもプジョーシトロエンにもワクワクするモデルが少なかった。ドイツ車や日本車のように次から次へと新車を発表する勢いはなく、たまに出る新車も“ならでは”の魅力に欠けていた。これなら日本車でいいじゃんというモデルが多かった。 ただ、フランス車は長らく調子がよかった試しがない代わりに、ずっとダメな時期もない。一時的に魅力的なクルマがなくなったとしても、しばらく待っていれば必ず登場するという歴史の繰り返しだ。なんだかんだ言って、彼らは最初にクルマをつくった国民であり、過去にいくつもの傑作を生み出してきた。短いスパンで判断すると見誤ってしまうのがフランス車だ。 実際、プジョーシトロエンが先日ようやく日本導入を果たした新型のプジョー308とシトロエンC4ピカソはどちらも会心の出来といってよいし、そのライバル、ルノーが2012年にモデルチェンジした4代目ルーテシアは、翌13年に日本導入されて以来、販売好調で、ルノー・ジャポン躍進の立役者となった。今回はそのルーテシアに新たなグレードが追加されたというお話。 3気筒ターボ×5速MTのマニアックな仕様新たに追加されたルーテシア・ゼン0.9Lは、その名の通り0.9リッター・ターボエンジンを積む。既存のルーテシアが積む1.2リッター・ターボエンジン自体、欧州の新定番であるダウンサイジング・コンセプトを取り入れた、従来の1.6リッター・エンジンに代わるエンジンだが、よりダウンサイジングされたモデルとして追加された。 手法は単純で、1.2リッター直4エンジンからシリンダーをひとつ落とし、0.9リッター直3エンジンとして成立させた。直3エンジンは欧州コンパクトカーの新しいトレンドといってよく、VW up!、ミニ、プジョー208、308あたりが採用するほか、ニッサン・マーチ、ノートも採用する。といっても3気筒自体は特に新しいコンセプトではなく、日本が誇るスーパーミニ、軽自動車は昔から3気筒ターボが主流だ。 1.2リッター直4ターボ搭載車が6速デュアルクラッチ・トランスミッションを組み合わせるのに対し、0.9リッター直3ターボ搭載車は5速マニュアル・トランスミッションとの組み合わせのみ。そういう意味では、この追加モデルは単なる廉価版ではなく、ある程度乗り手を選ぶマニアックなグレードという狙いなのだろう。 出来の良いシートとソフトな足回り街中を試乗する。エンジン始動時には3気筒特有のポロロンという音がするが、走行中やアイドリング時は静かで振動もよく抑えられている。直噴ではなくポート噴射だということも静かさに貢献しているはずだ。排気量が0.9リッターといっても、ターボ付きで、さらに吸気側のバルブが可変タイミング式という結構なハイテクが盛り込まれているので、最高出力90ps/5250rpm、最大トルク13.8kgm/2500rpmと立派なパワースペックを誇る。1.5リッターNAエンジン程度のパワー感だろうか。 マニュアル・トランスミッションではあるが、クラッチペダルが重いわけではなく、また坂道発進を簡単にしてくれるヒルスタートアシスト機能もついているので、例えば「夫が衝動的にこのクルマに買い換えてきちゃったんだけど、MTなんて何年も運転していないけれど大丈夫かしら」という奥様でも、短期間で慣れるはず。 MTである点を除けば、ゼン0.9Lはいつもの欧州コンパクトカーだ。つまり内装の仕立てなどは決して豪華ではないが、シートは見るからにコストがかかっていそうで、実際に座り心地も素晴らしい。足まわりはどちらかというとソフトな味付けで、シートの出来のよさと相まって、長時間の運転もなんのその、といったところだろう。このクルマを買う意味の半分くらいは、この乗り心地のよさにあるのではないだろうか。 1.2Lよりむしろスポーティな外観ゼン0.9Lは、従来からあるゼン1.2Lとほぼ同様の装備内容だが、ブリリアントブラックパーツやクロームメッキフィニッシャーが用いられるなど、外観の一部に上級グレードのインテンスに準じるパーツが採用されている。ブラックにシルバーの縁取りの16インチアルミホイールはゼン0.9Lの専用装備。同サイズのシルバーのアルミホイールが装着されるゼン1.2Lよりも引き締まった印象となる。 内装はゼン1.2Lと同じ。今やルノー車だって(オプションの)カーナビをビルトインされたモニターに映し出すことができるので、すっきりしたデザインのインパネを追加モニターでぶち壊しにする必要はない。 車両価格は208万円。同クラスの国産コンパクトカーよりも多少割高かもしれないが、発表されていないものの0.9リッター直3エンジンなんだからそれなりに低燃費のはずだし、排気量1L未満なので自動車税も年間2万9500円と安い。長く乗れば乗るほど経済的なクルマのはずだ。ルーテシアの新グレードは、”ならでは”のデザインと乗り心地を得られると同時に経済的でもあって、日本でわざわざ買う意味のあるフランス車の一台だと思う。 スペック【 ルーテシア ゼン(0.9L) 】 |
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