もうマイナーチェンジはしません!?いやはやビックリである。今、スカイアクティブ技術という名で、前代未聞の理想主義的クルマ作りを敢行しているマツダだが、なんとその理想主義をマイナーチェンジ!? もとい“商品改良”でも行うというのだ。と言うかそもそも“マイナーチェンジ”という考え方自体をやめるそうで、果たしてそれは商品改良となにが違うのだろう。 具体的には約3年弱ぶりに改良されたフラッグシップのアテンザとSUVのCX-5の同時試乗会でのことだ。 「そもそも“マイナーチェンジ”は、アメリカのGMがT型フォードに対抗するために編みだした手法なんです。その後アメリカと日本で常識になりましたが、基本はお色直し。見た目を変えて商品の新鮮さを保つのが狙いですが、我々は違う。あくまでもユーザーにその時点での最良の商品を提供すべく、新技術をなるべく早いタイミングで入れて行く。事実CX-5はこれまで既に3回改良してますから。あえて言わせていただくと、これもウチの理想主義のひとつですね」(CX-5開発主査の大塚正志さん) そもそもクルマは誰のためにあるのかこれは言うは易きで行うは難しの典型だ。フルモデルチェンジ時を除く商品改良は見た目を大きく変えない限り、インパクトは薄いし、ビジネスを考えると中身に金をかけても効果は見込めない。だが、大塚さんは言う。 「マツダは中小企業じゃないですか。大メーカーさんと同じ事をしてもしょうが無いし、そもそもクルマは誰のためにあるのかということですよ。我々はクルマをビジネスのためのものとは考えてないんです」 うーむ、なんとも青臭いレベルのマツダ理想主義。とにもかくにもチェックしてみた。 マイチェンならば絶対に金かけ過ぎ!まずはフラッグシップのアテンザからいくと、外観はもちろん鉄板部分は変わりない。だが、樹脂部分であるグリルとヘッドライトとバンパーはすべて一新されていて、サイドミラーや高輝度シルバーの専用ホイール(ホイールは塗装変更)まで新調し、「より精悍かつエレガントにすべくチェンジ」(担当デザイナー)。 中でもグリルは水平基調をより強調する専用グレーメタリックのルーバーが奢られていて、これが一本一本外れる手間の掛かる構造。V字のメタリック枠にしろデミオで導入されたより太くて立体的なタイプになっており、「車格が下のデミオだろうが、入れられる新しいソリューションはどんどん入れて、他の車種も順次アップデートさせる」マツダの姿勢が良く表れている。 同時にLEDライトもデミオで導入して印象的なアクリル製ブロックレンズを採用しており、まさに動物の目のようで、これはリアコンビランプも同様だ。しかもよく見るとレンズにはデミオではやってなかったクロームメッキが施されており、輝きを増している。そのほか細かい部分だがグリルとボディの間に密かにライティングシグネチャー、つまり夜に光る部分を設けており、妖しさを増している。 インパネ上部&コンソールを一新だが、真骨頂はインパネだろう。アテンザは特に外観が大胆かつセクシーな割に、コンサバだったこともあって、今回はインパネ上半分とセンターコンソールを一新。ナビモニターも新たに独立式となり、アクティブ・ドライビング・ディスプレイまで全車標準装備。まさにマイナーチェンジの枠を超えた大改良と言える。細かいところではセンターのパネルもスピード感をより強調する新デザインになっており、2種類のメタル調パーツと革調素材からなる複雑な組み合わせ。 狭い面積内に3つのマテリアルをきっちり揃えて合わせるには今まで以上の精度が必要であり、大変だったとか。そのほかエア吹き出し口も今まで形状がCX-5と共通だったのをわざわざ変えて専用の型を起こしており、パワステスイッチ回りもより精緻に見える樹脂パネルに改良されている。ある意味「自己満足」と言われないか心配になるくらいのこだわりようなのだ。 4WDを追加設定し、足回りも熟成それは走りも同様で、分かり易いところではこのクラスのFFベースセダンにしては珍しくフルタイム4WDモデルを導入。4WDモデルは今や全体の7割を占めるというディーゼルエンジンに設定され、しかも6速MTまで選べる。この当たりもジミだが嬉しいチョイス幅だ。 だが、なによりマツダ理想主義を感じさせるのは足回りの熟成で、より高級車らしい上質さと静粛性を得るべく、前後サスペンションを全面的に見直し、アテンザはフロントダンパーに微低速域フリクション低減タイプを初採用。リアダンパーもピストンサイズをアップさせ、これまたダンパーにフリクションコントロールデバイスを導入。ちなみにこれらはデミオで初採用された技術で、外観同様まさしくアップデートされたわけだ。 そのほかフロントロアアームのブッシュの形状変更を行い、より理想的なタイヤの動きを求め、4WDモデルはドライブシャフトの貫通で補強がなくなった分、専用のV字の切り口を持つブレイスバーを追加し、ステアリングセンターのフィールを改善した。 静粛性やシートのフィット感も向上静粛性に関しては「音を調律する」という考えで吸音材やシール性を良くしたほか、アテンザはフロアを覆うアンダーカバーシールを改善し、リアボディに制振材やサスペンション共振コントロールの部材を追加。CX-5に至ってはリアドアガラスの板厚アップまで行っている。 実際に試乗してみた感じだが、アテンザで明らかに増したのは静粛性で、ディーゼル車に関してはタイヤのザラザラ音が減って、エンジン音が明確に聞こえるようにすら感じた。そして全体的にしっとり感は増し、ステアリングフィールはヴィヴィッドになった。 意外に良かったのが新シートで、高振動吸収ウレタンの採用でより腰にフィットするようになったし、両者ともガソリン車に初めてシフト脇に「ドライブセレクション」を装備。これはスポーツ走行というより、混んでいる街中で使うイメージで確かに「SPORT」を選択するとアクセルに対する追従性が良くなり、より自然に流れに付いて行ける。 これまた実際に街中で使ってみないと分からない実直な改良と言える。 「SUVらしさ」を増したCX-5一方、CX-5だが、こちらはアテンザに比べ一見変更点が少なく、外観はグリルとアテンザ同様、新たにアクリルレンズが入ったライト類以外は変わってない。だが、これまた小手先の変更というより、明らかに意図を持った改良で、それは大塚さんの言う「SUVらしい見た目」にするための改良だ。 これは特に北米市場で効いてくるらしく、なぜならSUVは、乗用車の延長、つまりクロスオーバーとみられると評価されず、ワイルドなSUVに見られないと売れない。よって今回CX-5は、顔が張ってしかも横に大きく見えるように明らかにグリルを網目から太目の水平ルーバーにし、バンパー左右のスモールライト回りも同じデザインにした。 しかもこれはインテリアも同様でアテンザほど変えてはいないが、インパネセンター下の物入れの容量を拡大すると共に縦基調のメタリック加飾をやめて、横基調を強調。インパネサイドのエアアウトレットもメタリック調になって高級感が増した。 国産ブランド初の防眩ハイビームを搭載さらに走りはアテンザ同様、前後サスにフリクション低減タイプを導入し、ブッシュ形状を変えてより自然なタイヤの動きにしたのと、CX-5に限ってはフロントサスペンションのスプリングのレイアウトを見直し、よりスムーズに上下するようにした。結果、こちらも静粛性が上がっているのと上質感が増したわけだが、とはいえやっぱり目立たない地味な改良ではある。 それよりアテンザ、CX-5共にぶつからない機能を持つハイテク安全の「i-ACTIVSENSE」の最新バージョンが搭載され、中でも話題は国産ブランド初搭載の防眩ハイビームを備えたALHことアダプティブLEDヘッドライトだ。これはメルセデス・ベンツEクラスなどがいち早く備えたもので、先行車や対向車の位置を検知して自動でハイビームロービームを切り替えるだけでなく、左右の照射角もコントロールして死角を減らし、さらに片側に4個並んだLEDの指向性を活かし、対向車のいる部分だけを消灯して相手に眩しい思いをさせないというモノ。こうした技術も今後順次下のクラスにも導入されるだろうから凄い。 だが、なにより4WD仕様に雪国では必須のヘッドライトウォッシャーを標準装備するような部分こそが、マツダのマイナーチェンジではない「商品改良」の真骨頂ではある。 マジメな話、金と手間がかかってる割りに見栄えの効く変更が少ないので、どこまで即効的な販売促進に結び付くかは疑問だが、長い目で見ればマツダのブランド価値は間違いなく上がるはず。 このマツダの理想主義、ホントにどこまで続くかが見ものですよ。 スペック【 アテンザセダン XD プロアクティブ 】 【 CX-5 XD プロアクティブ 】 |
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