嬉しいクルマの進化って何だろう?ユーザーにとって嬉しいクルマの進化って何だろう? 心ときめくデザイン性、毎日使って嬉しい機能性や経済性、安全性、それとも走行性能を磨き上げること? 直感的に受け止められる最初の3つは購入動機に結びつきやすい要素になるけれど、走りの性能については「私は余り飛ばさないし、そんな機能は使わない」なんていう意見も聞こえてくる。物作りが成熟し、どれを買ってもある程度のスペックが得られるようになった今、使いこなせない機能に「興味ナシ」と言われるのも家電の世界であれば頷ける。 でも、クルマの場合、走行性能の僅かな違いが走行中のストレスの有無やいざという時の操縦安定性、走りの質を大きく左右するのが現実だ。そんな、ある意味“目に見えにくい進化”に地道に力を注いで作られたモデルが今回の6代目ムーヴなのである。 狙ったのは「次世代のベストスモール」ムーヴといえば、乗用系のハイトワゴンとして広々快適な室内空間とハイクオリティなデザイン、そこに走りをバランスさせたマルチな軽自動車として人気を得てきたロングセラーモデル。1995年に初代が登場してから20年、現在のダイハツの車種展開を見ると、更なるスペース系にはウェイクやタント、経済性や燃費といった本質を極めたミライース、スポーツカーのコペンも復活し、ニーズの多様化を受け止める準備は万全だ。 そこで、6代目ムーヴが狙ったのは「次世代のベストスモール」。軽自動車という枠に囚われず、魅力的なスモールカーを作るべく立ち上がった。かつては標準モデルとカスタムの2つのキャラクターで展開されてきたムーヴだが、今回新たにカスタムの「RS」と「X」に上級グレードの“ハイパー”を追加。カバーレンジを拡げることで、軽シェアを伸ばす鍵となる登録車からの乗り換え層を捉え、コダワリ層の要求に応える形で登場させた。 大きく様変わりした見た目小さいクルマへの乗り換えで気になる安全面においては、低速域衝突回避支援ブレーキ、アクセルとブレーキの踏み間違い事故を抑制する誤発進抑制機能を含む「スマートアシスト」に後退時の衝突事故の被害を回避または軽減する「後方誤発進抑制制御機能」が加わったこと。さらに、横滑り防止装置(VSC)やトラクションコントロール(TRC)、坂道での後退を抑制するヒルホールド機能が全車に標準装備されている。 デザインをみると、標準モデルのムーヴはヘッドランプの雰囲気こそ先代から受け継がれているが、これまでの素朴な表情と比べると、2つのライトの間を横切る第3のグリルが加わったことで、堂々とした顔つきに進化した。平面をラウンドさせて張りをもたせたフォルムはボディカラーが映えるデザインで、実際に目にすると先代よりも上質さは格段に増していると感じる。 一方で、「X」の文字をモチーフにデザインされたというムーヴ カスタムはどっしりと構えた出で立ちで存在感が大幅アップ。フロントバンパーからサイドに繋がるフェンダーアーチにはダイナミックな抑揚が与えられて頼もしくなった。夜間の印象をガラリと変えるのがLEDのイルミネーション。ヘッドランプ周りは白色の光がクリアな視界を確保するほか、高性能な輸入車的にテールランプがムーディーな後ろ姿を演出するあたりがニクい。 強烈なまでの存在感を放つ“ハイパー”そして、カスタムに新たに設定された注目グレードの“ハイパー”だが、プラスαの特徴としては、グリル周りとリヤコンビネーションランプに専用のダークメッキを施し、フォグランプとグリル下部にLEDを採用。ニュアンスカラーで雰囲気を変えてみせる小ワザを見せつけ、これまでの軽には見られなかった“粋”な領域に手を染めた。 ハイパーはそれぞれのグレードに切削加工のアルミホイールまでが標準装備され、インテリアにはブルーのステッチ入りのファブリック×本革のコンビシートを採用。インパネ周りには宇宙空間を連想させるラピス色のパネルがはめ込まれていて、コダワリ抜いて作られたスモールカーであることを意識させられる。 それだけではない。ついに、ムーヴとしては初めて標準モデルとカスタムともに専用設定の2トーンカラーの外板色まで用意してきた。過去の名声にぶら下がることなく、予想の一歩先を行く進化。ロングセラーモデルゆえに既存のイメージを大きく打ち破って見せたということか。限られた文字量では紹介しきれないほどの新装備の数々。とにかく、これまでとは違ったレベルの進化であることが手に取るように分かるのである。 クルマとしての基本性能が大幅に向上しているそして、なんと言っても最大の進化のポイントはボディの骨格から見直した基本性能の向上だ。ボディの板厚は1.5倍に強化しながら、軽量高剛性のハイテン材を採用したほか、ボディの一部に樹脂外板を採用。バックドアは横開きから縦開きに変更、余分な補強材の削減などの効果でボディ単体でマイナス20kgのダイエットに成功した。 「軽いのはいいけど、走りの信頼性は?」と気になるところだが、実際はむしろその逆。ステアリングの支持剛性は2倍、フロント周りの横剛性アップ、シートが揺すられる要因となるフロア剛性をしっかりさせるなど、上半身はアスリートのごとくガッチリ構えることで足がしっかり働くクルマへと進化させている。 ダイハツでは「フォースコントロール」という言葉を使っているが、路面のうねりや段差など、乗員が知らず知らずのうちに受ける衝撃をクルマ側がコントロールすることでフラットな走りと快適な乗り心地を実現してみせるというワケだ。 ノンターボ×14インチタイヤの乗り味は?まずは、標準モデルの「X」に試乗してみる。すると、石畳を通過しただいぶ後にその快適性の高さに驚かされた。普通は軽自動車の後席に乗っていたら、クルマが浮ついたり、ガタつきによって不快に感じるはずの路面の凹凸があったにも関わらず、同乗者と会話をしながらごく自然に通過してしまっていたからだ。 さらに分かり易いのは、コンビニの駐車場の出入口付近の僅かな段差の乗り越えやカーブの走行。30km/h以下の領域でも乗員の頭が揺すられにくくて目線のブレが明らかに少ない。交差点の右左折でハンドルを切り出して動き出してみても、その操作にクルマが自然についてきて、姿勢の収まりがいい。出足でもたつかないから、当然不安だって少ない。 運転操作がしやすいという意味では、今回のモデルでは運転姿勢が取りやすくなっているのも安全上において特筆すべきポイントだ。シート自体の面積が広くとられて大人の男性の上体を受け止めやすい形状に変わっているし、それでいて運転中の身体の収まりもいい。ドライバー寄りに手前にレイアウトされたハンドルは軽く肘が曲がる形で自然に手が添えやすく、背もたれの角度さえ倒し過ぎていなければ、切り遅れることも少ない。地味な改良ではあるが、クルマの動きを捉えやすく、正確な操作に結びつく大切な部分だ。 静粛性や快適性はライバルを凌ぐノンターボのエンジンの実力については、4名乗車でドライブしても自然な感覚で走り出せるという必要にして十分なレベル。エンジンの力に限りはあるものの、CVTの制御が秀逸なので、唸って走るような違和感を与えない。 追い越し時や高速道路の合流などで力強さが欲しい時は、ハンドル上に設置された「PWR(パワー)」モードのスイッチをON。アクセルの踏み込みに対して素早くエンジン回転が高まってレスポンス良く力を引き出してくれるので、必要な時に手軽に力を得ることができる。 また、走行中にストレスが少ない理由のひとつがエンジンルームから響いてくる音が少ないこと。このあたりは、騒音の進入経路となる穴を極力抑えていたり、吸音材の配置や高剛性化の効果で走行中のノイズが聞こえにくい構造にしている効果なのだとか。走行中の静粛性や快適性においては、ライバルとなるスズキのワゴンRやホンダN-BOXといったモデルと比べて格段に上にあると感じられる。 ターボ×15インチタイヤの乗り味は?続いて、ターボモデルの「カスタム RS“ハイパー”」に乗り込む。ベージュの内装色の標準モデルと比較すると、ブラック基調のカスタムは軽自動車で初めて採用されたTFTカラーマルチインフォメーションディスプレイなど、上級装備を手にして一段とテンションがアップ。ターボエンジンは日常的な回転域から自然な形で過給が始まり、わずかな踏み込みでゆとりをもってパワーが漲ってくるイメージだ。 15インチのタイヤとスポーツサスペンションは段差の乗り越え時にスポーツ仕様特有の縦揺れを意識する感覚はあるものの、揺れの収まりは比較的早い印象を受ける。前席主体でクルマを使う機会が多く、カーブを駆け抜ける時に切れ味を求めたり、気持ちよく駆け抜けられるモデルを求める人には15インチの「RS」はオススメのグレードといえそうだ。 実のところ、個人的には同乗者の快適性が得られながら、ゆったりしたリズムでしなやかに走れる14インチタイヤの仕様が好み。基本性能を見直した素性の良さが分かり易いのもその理由のひとつだ。 乗れば分かるという自信の表れ今回のムーヴのグレード構成では、標準モデルもカスタムもノンターボの2WDは全て31.0km/L、ターボは27.4km/Lといった具合に燃費の数値が統一されている。よりシンプルに好みのグレードを選べるように配慮されているのも美点といえるだろう。 「クルマは乗ってみなければ分からない」、まさに、そんなメッセージが伝わってくる6代目ムーヴのクルマ作り。ある意味、軽自動車を作り続けてきたダイハツだからこそやってのけた新たな挑戦とも受け取れる。 ともあれ、今や軽自動車は上級車からの乗り換え層をターゲットにシェアを伸ばし続けており、油断は許されない戦国時代に突入している。各メーカーの動向に目を向けると、自らの強みを活かしたクルマ作りで個性を帯びて、積極的に選べる楽しみも膨らんできた。軽自動車のイメージを裏切ってみせるひとつの作品として、今回のムーヴ、みなさんも実際に試乗してみてはいかがだろうか。 主要スペック【 ムーヴ カスタム RS "ハイパーSA"(FF仕様) 】 【 ムーヴ X "SA"(FF仕様) 】 |
GMT+9, 2025-4-30 18:18 , Processed in 0.061827 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .