割り切りの物作り見てびっくり! 乗ってビックリ!! ひさびさに昭和のクソガンコ企業、スズキの真骨頂というか、心意気を見た気がしましたわ。そう、それが新型8代目スズキ・アルト。 昨年写真を見た時から、初代を彷彿させるスッキリしたセダンデザインや好き嫌いの分かれそうなニラみ顔に、硬派な原点回帰を予想していたが現実はそれを遙かに凌駕。まさしく昭和54年の「アルト47万円」の衝撃の再現でもあったのであーる。 アシスタントチーフの津幡さん曰く「我々の提案であり、挑戦です」という割り切りの物作り=自動車ダイエットは、いわゆるヨガ好きのOLがやるような可愛いソレじゃない。肉の代わりに鉄を喰らい、真冬に寒中水泳するような激しい原点回帰である。順を追ってみていこう。 全くのゼロから生まれたまずビックリするのは超軽量化ボディ。最低装備の商用バンの5MTで610kg。これは軽トラを超えた驚異の軽さであり、普及版「L」のCVTですら650kg。ボディ設計の板倉章さん曰く、「これはちょっとずつの改良じゃできません。今あるベースの考えから捨て、全くのゼロから生まれました」とかで根本たるフレームワークから素材、ディテールまで見直されている。 具体的には前後で分かれていた衝突吸収構造をシンプル化し、高張力鋼板の使用率を40%から46%、超高張力鋼板を5%から16%にアップ。結果、軽くした上でねじり&曲げ剛性は30%も上がり、スズキ初の樹脂フェンダーや樹脂ロアクロスメンバーの採用も実現した。 さらに凄いのが、考え方自体は今後のワゴンRやスペーシアだけでなく、白ナンバーのスイフトにも採用されることで、まさに「スズキ始まって以来の大改革」(板倉さん)なのだ。 徹底したダイエットで燃費向上軽量化はそれだけじゃない。ボディが全体の35%、さらにドア、内外装、シート、足回り、エンジンと全パーツで数%づつ軽量化。全体で60kgも軽くなっている。 中でも大きいのはサスペンションで、前後ともに新設計。今まではマフラーの通り道のために避けていた部分を真っ直ぐにするような理想主義的設計が行われ、大幅に剛性がアップ。その上でフロントは形式こそストラットのままで6.5kg軽くなり、FF車のリアはI.T.L式からトーションビーム式になって剛性を上げた上で11.2kg軽量化。これまた大改良だ。 その恩恵は、燃費と走りに如実に現れている。燃費は既に発表されている様に、スズキ独自のプチエネルギー回生システム「エネチャージ」搭載の「L」「S」「X」グレードのFF&CVT仕様が37.0km/L(JC08モード)! これまでの軽チャンプ、ダイハツ・ミライースの35.2km/Lを超え、ハイブリッドのアクアと並ぶ驚異のレベルだ。 出足はまさに段違いだが、問題は燃費が良くなった分、走りが悪くなるケースがあることで、アルトも密かにそこを気にしていたが乗ってビックリ! 逆に良くなっているじゃないですか。 エンジン骨格は従来通りの660cc直3のR06A型。ただ、エキマニ一体型シリンダーや触媒ケースの簡素化で全体サイズを小さくした上、ピストン形状の改良や高タンブル吸気ポートの採用で圧縮比を11.2から11.5にアップ。高効率EGRシステムの導入もあって、熱効率は0.6%良くなっている。 が、肝心のピークパワー&トルクは52ps&63Nmで旧型アルトエコと全く同一。CVTもギア比の幅は広くなっているが変わってない。でも軽量化って凄いよね。出足はまさに段違いで、スッと出る。しかもそれはエンジンパワーアップによる速さ増しとは違い、やっぱりスッキリ気持がいいのだ。 割り切りをハッキリ感じる走りただし、ここからが言わば新型アルトの最大の特徴で、あえて未完成な部分も残しているのだ。さっき言ったCVTは、ある程度燃費を稼ぐためか低回転域を多用しがちで、低速でスッと踏んでもトルクが立ち上がらない時がある。かなり軽さで補えてはいるが、あえて気持ち良くし過ぎてない面がある。 乗り心地もそうだ。ボディは軽くなれば軽くなるほど乗り心地を良くするのは至難のワザで、決して口当たりは良すぎない。 遮音性も同様で、エンジンの吹け上がり音はそれなりに入るし、軽は軽だし、「これで十分じゃないか!」という割り切りをハッキリ感じるのだ。 ホンダ、ダイハツの豪華路線と完全に決別それはクオリティしかりである。インテリアの樹脂素材は悪くないが、決して豪華じゃない。厳密にはダイハツ・ミライースの方がいいかもしれない。だが、直線基調の白と黒のツートーンのインパネはシンプルでありつつオシャレだし、圧倒的に簡素なのはドアの内張りだ。 ここは後でも語るが、極端に平面でフロントはドアグリップとドアポケット、リアはドアポケットすらない。リアシートもクッション性は決して悪くないが、まさしく平板で徹底的に無駄を省いている。 そこはひたすら白ナンバーを追い、高級化する最近のホンダ、ダイハツの二大勢力に明らかに反旗を翻していて、ここ数年、シンプルか豪華路線かで多少迷っていたスズキが、初心に返り、「軽らしさ」を追求する姿勢を明確に打ち出したようにも見える。 前出の津幡さんは言うのだ。「最近“軽を超えた軽”とか“気付いたら軽だった”という様なことが良く言われるじゃないですか。それっておかしくないですか」と。 ドイツ的な骨太デザイン!?同時に新アルトの凄さは、ストイックさや昭和的ガンコさだけじゃない。“軽の美しさ”を小手先ではなく、今まで以上にピュアに魅せようとしている点だ。 それが一番うかがえるのはエクステリア。フロントマスクのニラみ顔のインパクトは既に言った通りだが、それ以上に味が良く出てるのはサイドパネルとプロポーション。 とにかく真横から見て欲しい。一瞬、初代フィアット・パンダのようなボクシーさとバランスの良さを感じないだろうか。ホイールベースを60mmも伸ばして間延びしがちな2460mmとしながら、全高を全幅と全く同じ1475mmに落とし、見事なバランスで描かれている。 さらにそれぞれのエッジのキレだ。ショルダーは今までの軽じゃあり得ない張り出し具合で、ドア下のエグレ具合ったらない。リアピラーの窓枠の掘りと合わさって、まるでプチVW車のような迫力もある。 VWと仲違いしているスズキだが、期せずしてあちらの力を使わずに、ドイツ的な骨太デザインが導入できちゃった気がする。 身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれほかにもシンプルな軽らしさの追求は随所に感じる。例えばアルト初のMTベースの2ペダルAT=AGS仕様はあえて制御を丁寧にしすぎず、1速は吹けが早すぎたり、シフトプログラムも完璧じゃない。 だが、MT仕様プラス10kgの最軽量620kgの車重がもたらす軽快さと面白さはCVT車以上だし、唯一の欠点たるステアリングフィールの甘さは、そうは言ってもノーズの軽さで補ってるし、同時にそのヘンの過剰な豪華さを省いた分、ハイテク安全に気を配っているのもいい。 横滑り防止のESPはバンを除き全車標準装備だし、自動ブレーキのレーダーブレーキサポートや誤発進抑制機能も一部バンを除いてすべてのグレードで選べる。 必要なところは充実させ、不必要と思うところは思い切って省く。この姿勢はたとえ国内でウケけなくても、新興国を中心に海外で評価されるはず。身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ…ふとそんな名文句を思い出した不肖オザワなのであーる。 主要スペック【 アルト L(FF仕様) 】 |
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