定評あるガリットに突然変異メーカーに失礼かもしれないが、突然変異…、そう表現したいほど大きく性能を向上させてきたのがトーヨータイヤの新スタッドレスタイヤ「オブザーブ・ガリットギズ(GIZ)」だ。 そもそもトーヨータイヤには、ガリットG5という乗用車用のスタッドレスタイヤがある。アイス路面の性能も低くはないし、お薦めできるタイヤだ。その性能を突き詰めたプレミアムタイヤというポジショニングがギズにあたる。とは言え、この性能の差は大きい。 今回は北海道のテストコースだけでなく、アイス路面環境が安定してつくり出せるアイススケートリンクでの試乗もできた。しかも一度ではなく、通常のアイス路面や水が浮いている様なアイス路面、さらにはブラックアイスバーンとも呼ばれる極寒の磨かれたアイス路面を想定した路面でも走ることができた。それら様々な環境で試乗して、G5との性能の違いを含めて、凄い! と感じたわけだ。念のため何度も言うが、決してG5が悪い訳ではない。いや、むしろその性能は高いとも言える。しかし、その実力を持ってしても、格の違いを見せつけたのがギズなわけだ。 最も異なる要素は、漠然とした表現だが、走っている際に得られる安心感。実際の冬期路面走行では安全の確保、走り易さ、ストレス軽減など様々な効果をもたらす最も大事な要素だ。では、どうやってその安心感を演出しているのか…突き詰めれば、全ての操作に対する反応の良さ、特にハンドル操作に対する反応に遅れが無いことだが、その特性を生み出している技術背景に触れて行こう。 ハンドルからの手応えがわかりやすい“ハンドルを切ったときの反応や手応え”。スタッドレスタイヤに限らずどのタイヤでもこの特性が安心感を左右している。冬期路面はグリップレベルが低くタイヤが滑り易い環境にあるので特に重要だ。 ドライ路面であればそのグリップレベルは目で見た情報と大差はなく、予測を裏切られることは少ない。しかし冬期路面では、目で見た情報だけでは実際の路面環境を読み違え易い。例えば圧雪路面に見えても、その下はアイスバーンだったとか、濡れているように見えたが、実は磨かれたアイスバーンだったといった具合だ。冬期路面の怖さや難しさとは、グリップレベルの低さに加えて、目で見て判断した通りの路面状況ではないケースが存在することにある。 冬期路面を走り慣れているドライバーは、少し強めにブレーキを踏んで路面状況を確認したりするが、後続車がいたらできない。そう考えると、やはり最も有効なのは、ハンドルを少しだけ左右に振るなどしたときのハンドルの手応え、具体的には重さの変化から実際の路面状況を読み取る。例えばグリップしていれば、相応にズシッと重いし、グリップが低ければスカッと軽い操作感になる。 ギズは、ハンドルからの手応えがとてもわかりやすい。しかも手応えにズシッとした重みがある。これが冬期路面での安心感を飛躍的に向上させるのだ。もちろんそれは実際にグリップ力が高くなければ得られないが、それだけでは得られない。では、ギズがどうやってそれを得ているのか、核心に触れて行こう。 低温性能とサイプの剛性シンプルに考えれば、スタッドレスタイヤに大事なのは大きく3つ。1つ目は路面にタイヤ表面が密着する為のコンパウンド(ゴム)自体の柔らかさ。2つ目はブロックが倒れ込んでブロックの角が路面にグイッと引っ掛かるエッジ効果。そして最後の3つ目はブロックが倒れて接地面積が減ってしまうことを抑制する倒れ込み防止構造。 そもそも雪道は気温も路面温度も低く、タイヤのゴムが硬化しやすい。だからこそ路面への密着率が下がりグリップ力が低下する。ギズでは、ナノゲルを使いマイナス7度付近までは硬化を極力抑えることに成功。まずは、高い密着率が環境を問わず優れた基本特性を生み出す。 そしてギズの最大の魅力であるハンドルを切ったときのズシッとした手応えなど、操作に対する初期応答の良さは、2つ目のエッジ効果と3つ目のブロックの倒れ込み抑制により確立されている。そもそもスタッドレスタイヤに刻まれた細かな溝(サイプ)は、ブロックの角を増やしてエッジ効果を高めるもの。しかし、その構造からブロックが倒れ込みやすくなり、結果として接地面積が減ってグリップ力が低下するという相反関係にある。 このエッジ効果と接地面積確保をバランス良く両立するために、ギズではサイプデザインの工夫は当然として、センター部には新吸着3Dサイプを採用し、加えて溝底に補強ブロックを入れた。これにより、様々な路面にグイッと噛み込むエッジ効果と、ブロック剛性を確保して接地面積を維持し続けることによる基本グリップの良さを確立。このような構造が手応えを生み出し、安心を提供する。 G5の上を行くハンドルの効きこうした構造は初期応答の良さや安心感に加えて、冬期路面で重要なハンドルの有効舵角を増やす効果も発揮している。 冬期路面を走ったことの無い方はイメージしにくいかもしれないが、ハンドルを切れば切っただけ曲がると言う常識は、冬期路面では通用しない。走行条件や環境に程度の違いはあるが、ハンドルを切りタイヤが滑りハンドルからの手応えが軽くなってからは、ハンドルを切れば切っただけクルマは曲がらなくなる。言うなれば、ハンドルを切って曲がらない状況が起きたら、ハンドルはむしろ戻した方が良いわけだ。 そういう状況でタイヤに求められるのは、そもそものハンドルの有効舵角が高いタイヤ。別の表現をすれば、ハンドルを切ったら切っただけ曲がる領域が大きいタイヤ。まさにギズはそのように設計されている。 ブロックの倒れ込みを抑えて剛性を確保し、大きなハンドル操作でも接地面積が減らずグリップが確保できるという設計もあるが、もちろんタイヤの内部構造も関係する。結果として、ギズとG5乗り比べた際に、ギズと同じ感覚でG5で走ってみたら、カーブでハンドルを切り足していった途中からクルマが曲がらなくなり雪壁にヒットした。まさにハンドルの効きが違ったのだ。 また多くの方が不安に感じるアイス路面での性能にも注目だ。ギズはG5に採用されていた吸水素材の20倍の天然繊維素材を使うことで吸水力が飛躍的に向上。これによりアイス路面でタイヤが滑る主たる原因のタイヤと氷面との間に発生する水膜を瞬間的に除去する。そのグリップ力は、磨かれたアイス路面でも予想以上で、環境さえ整えばキュキュキュというアイス路面では珍しいタイヤの滑り音(スキール音)を聞くこともできるし、ブラックアイスバーンでハンドルをフルロックまで切るUターンをしても、フロントタイヤが外に逃げることなく曲がれたのだ。 【ガリットGIZ】 |
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