2.5L水平対向4気筒に一本化25年という時間は、いろいろなものを変えたようだ。89年の初代誕生以来、レガシィシリーズの“顔”だったツーリングワゴンが、この6代目では姿を消した。そしてエンジンも、初代から常にラインアップしてきた2.0Lターボ、およびアウトバックに設定されていた水平対向6気筒が、ついに役目を終えている。新型レガシィは、セダンのB4とSUVのアウトバックの2タイプとなり、エンジンはすべて2.5L水平対向4気筒に統一されてのスタートとなった。 その一方で、25年の時を経てなお、変わらないものもある。全天候型のグランドツーリングカーとして、レガシィに乗る人すべてに快適な移動時間を提供したいという、開発に込めた想いだ。この6代目になって、その想いは「ライフ・クオリティ・カー」という言葉で表現されている。快適な移動時間だけでなく、充実した人生までも提供できるクルマ。新型レガシィの見どころは、単なるスペックではなくそうした価値観にあるようだ。 また一歩磨かれたスタイリング実際、外観を眺めてみると先代からそう大きく変わった印象はない。六角形のフロントグリルや切れ長のヘッドライトといった、先代から継承したレガシィらしいフロントマスク。大径タイヤで地面をしっかり踏みしめ、それを強調するようにふくらんだホイールアーチ。B4はルーフラインと連続するように深い傾斜のリヤピラーをもたせ、アウトバックはラゲッジ部分にボリュームを与えて実用志向を印象づける。どれも路線変更はなく、先代からまた一歩磨かれてスペシャリティ感を強めているのが特徴だ。 実はボディサイズがB4で全長50mm、全幅60mmほど拡大しており、メルセデス・ベンツCクラスより大きいくらいになっている。でも先代の時は「なんでこんなに大きくしちゃったんだ」と文句を言われたのに、今回はそういうクレームはほとんどないというから、そう言わせない満足感が何かきっとあるはずだ。 エンジンの約80%のパーツを見直し試乗車として借り出したのはアウトバックの上級グレード、リミテッド。標準グレードとの装備差は本革シートやパワーテールゲート、タイヤが17インチから18インチになること、そして操縦安定性を向上する新開発ダンパー「スタブレックス・ライド」が装着されていることなど。価格差は約27万円だから、内容を考えればお得に思えるが、進化したアイサイトのVer.3や、3つの走行モードが切り替えられるSI-DRIVEなどは全車標準装備となり、標準グレードでも十分な内容だ。 パワートレーンは型式ではキャリーオーバーだが、実にエンジンの約80%のパーツを見直し、吸気系の構造変更で燃焼効率がアップ。出力向上や低燃費化を実現している。ミッションにも内部フリクション低減などの改良を加え、アクセル開度の小さな燃費走行領域では回転変化が少ない滑らかな変速、アクセル開度の大きな攻めの走りでは回転数とスピードアップのリニアな特性と、よりドライバーの感性に近い制御が可能なCVTに進化している。 アイサイトもVer.3へと進化そしてレガシィシリーズ全車に共通するシンメトリカルAWDは、滑りやすい路面での発進性やコーナー進入時の安定性が増し、さらに熟成されたアクティブトルクスプリットAWDを採用。アウトバックにはコントロール性とトラクション性能を高め、デフロック並みの悪路走破性を備える「X-MODE」を搭載している。これには、急な下り坂でも緩やかに速度制御してくれるヒルディセントコントロールもあり、日常のドライブから重宝しそうだ。 また、スバル車に欠かせない装備となっているアイサイトは、ステレオカメラの刷新と画像エンジンの改良により、さらに高い認識性となったほか、ステアリング操作のアシストや誤発進抑制などの新機能を搭載。クルマだけでなく白線、ガードレール、歩行者や自転車も認識する、一歩進んだ運転支援システムとなっている。 こうして見ていくと、外観からはわからない進化が満載の新型レガシィ。小さな積み重ねで、クルマ全体のクオリティを高めようとしているのが伝わってくる。 もう少ししっとり感が欲しいところ大きなウインドウで開放感にあふれ、頭上も身体のまわりもたっぷりのゆとりがあり、気持ちのいい空間が広がるアウトバック。厚みのあるシートの座り心地もよく、意気揚々と試乗をスタートしたものの、あいにく首都高にのった瞬間から大渋滞に巻き込まれた。 こんな時はすぐさま、全車速追従機能付クルーズコントロールをセット。右足を休ませたまま、おおらかな気持ちでノロノロ渋滞に身を任せられる。もう、自分で運転しているよりスムーズなほどのペダルワークに感心してしまう。 ようやく渋滞を抜け出すと、100kmほどの高速クルージングだ。相変わらずの安定感で、最低地上高を200mm確保しているアウトバックでも、まったく不安なく走っていける。ただ、18インチタイヤだったからなのか、乗り心地にはややゴツゴツする場面があり、後席で試してみてももう少ししっとり感が欲しいところ。サスペンションはフロントが新開発のストラット、リヤは改良されたダブルウィッシュボーンとなっており、標準グレードの方が乗り心地に関してはタイヤとの相性がいいのかもしれない。 またこのシートに戻ってきたくなるそして今度はあまり信号のない郊外路と、カーブの続くワインディングに入ってみる。速度があがってくると、やはり左右に身体が沈み込む感覚が少しはあるものの、基本的にはとても快適。対向車とのすれ違いがギリギリのような道でも、視界がいいせいかストレスはなく、これなら市街地でもそれほど苦労することはなさそうだ。 今回は何もラゲッジに積むものがなかったが、横幅と奥行きがしっかりあるフラットなフロアは、先代より約40L増えた559Lの大容量。床下のサブトランクもあり、後席が荷室側からのレバー操作で簡単に倒せてとても便利。アウトドアスポーツやキャンプ、買い物、ベビーカーなど子育て支援と、あらゆるシーンで大活躍するはずだ。 朝から夕方まで、景色を楽しみながらのドライブは終始穏やかに過ぎていった。欲を言えば、インパネのデザインが従来と代わり映えせずコンサバなところや、たまにはグッと昂揚感を煽るような走りが欲しいところなど、注文はあるにはある。けれども、またこのシートに戻ってきたくなるようなホッとする感覚、安心感。そういったものに満たされた気がしたのが、きっと新型レガシィが「ライフ・クオリティ・カー」だという証なのだろう。 アウトバック Limited・主要スペック全長×全幅×全高=4815mm×1840mm×1605mm B4 Limited・主要スペック全長×全幅×全高=4795mm×1840m×1500mm |
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