富士でGT3とターボSに乗った!待ちに待った新型911GT3。デリバリーが始まった途端にリコール騒ぎが起きたが、ポルシェは問題のエンジンをすぐに対策してユーザーに新しいGT3を届けた。 果たして新型911のプラットフォームで開発されたGT3はどんなパフォーマンスを持っているのだろうか? 一年前の公道を使った国際試乗会でドライブしたことはあるが、サーキットは試していない。新型GT3はニュルブルクリンクを7分25秒で走る実力を持っていると発表されているが、走り慣れた日本のサーキットではどんなパフォーマンスを発揮するのだろうか? 疑問は尽きない。 そしてようやく、秋に開催されたポルシェの公式ドライビングスクールで、スクールカーとして用意された新型GT3を富士スピードウェイで走らせることができた。911GT3より先に日本へ上陸している911ターボSと比較しながら、911シリーズのハイエンド・スーパースポーツ・モデルの世界を掘り下げて行こう。 伝統のGT1クランクケースから決別まずは簡単に新型GT3のスペックをレビューしてみよう。 トピックスは3つある。まず一つ目は6MTが廃止され、GT3専用のPDKになったことだ。シフト時間は世界のスポーツカーの中でも最も短いもので、それだけでもサーキットではタイムを短縮できる。さらにシフトレバーは前側に押すと「ダウンシフト」、手前に引くと「アップシフト」。この方式のほうがレースカーと同じで感覚的に自然だが、他のモデルのPDKとは正反対だ。今回はGT3とターボSに乗り換えつつ走るため、気をつける必要があるだろう。 ニつ目は3.8Lの自然吸気エンジンだ。カレラSのエンジンをチューニングし、最高出力475ps/8250rpm、最大トルク440Nm/6250rpmを絞り出す。コンロッドとピストンピンを軽量なチタン製にしたことで、高回転でも耐えられるエンジンが完成した。許容最高回転数は9000rpmである。今までのGT3のエンジンは空冷エンジン時代から引き継がれたタフな「GT1クランクケース」で作られるという掟があったが、縦に二分割された空冷時代の名残のケースはこの新型では引き継がれない。コンセプト段階から新規開発されている。 三つ目はターボが採用した4WS(後輪ステア)をGT3にも採用したこと。最新のポルシェはGT3とターボだけでなく918にも4WSを使っている。こうした事実から、超高速走行では不可欠な技術だとポルシェは認識しているのであろう。 新旧GT3の走りを比べてみると?富士スピードウェイを走らせてみると、997型GT3よりエンジン音や振動が洗練されている。公道でも新型GT3のほうが走りやすく、その速さは驚くほどだった。9000rpmまで回る自然吸気エンジンの気持ち良さに加え、GT3専用PDKはシフトフィールが小気味良く、ダウンもアップも素晴らしく速い。MTで乗りたいという気持ちもあるが、PDKの素早いシフトもまた愉しい。 富士のストレートエンドでは280km/h近くスピードが出る。ターボSのほうが15km/hほど速いが、加速中の気持ち良さはGT3が勝っている。気になるのは200km/hを超えてからで、ターボSのほうが直進安定性が高く、ステアリングも手応えがしっかりしていて、まさに矢の如く走る。一方、GT3はレーンチェンジするのも遠慮したい感じだ。ステアリングで感じる安定性はAWDと4WSを組み合わせたターボSには敵わなかった。 直線のターボ×カーブのGT3300km/h近いスピードから安心してフルブレーキングできるのはポルシェぐらいのものだ。中でもGT3とターボSのブレーキは圧倒的に頼もしい。もちろん黄色に塗られたキャリパーはカーボンブレーキである。数ラップ連続で走ってもフェードしにくいのでトップスピードが高い富士スピードウェイではありがたい。というか、このブレーキシステムがあるから、安心してアクセルを踏めるのだ。 比較的タイトな第一コーナーをクリアするが、すぐに3速にシフトアップする。8700rpmまで引っ張って4速にシフト、Aコーナー手前までで速度は200km/hに達する。コーナーとコーナーの間のトップスピードはGT3よりもターボSのほうが若干速いが、車両重量とタイヤの違いでコーナーリングスピードはGT3が速い。タイヤはGT3が浅溝のカップタイヤを履くが、ターボは普通の溝を持つスポーツラジアルだ。雨のことを考えるとGT3のタイヤでは飛ばすことができない。 100Rでは旧GT3の限界をはるかに上回るそのまま100Rに向けて加速し、緩く曲がりながら、ブレーキング。997型GT3ではタックインでリヤが流れたのだが、新型GT3はリヤが安定している。ここに4WSを採用した理由があると思った。リヤが流れないので、フロントタイヤをギリギリまで使うことができる。結果的に100Rは驚くほど速いコーナーリングが可能だ。 GT3はとにかくマシンが曲がりたがる! ステアリングがわずかに動くだけで、すぐさまヨーと横Gが発生するのだ。例えば、高速コーナーの100Rでもタイトコーナーのヘアピンコーナーでも、ステアリングを切るとイン側に引き込まれるような感覚で曲がれる。逆に、立ち上がりではバンク角が緩くなるので、いきなりリヤがスライドするのではないかと不安になる。身体が覚えている旧GT3の限界速度をはるかに超えているからだ。 安定性のターボS、正確性のGT3一方、ターボはまっすぐ走るのが得意だ。ステアリングが多少動いても直進力は微動だにしない。そのターボでも、曲がることを少し得意にしたのがターボS。ターボSも100Rは速いが、GT3よりはアンダーステアが大きい。リヤが流れないという点ではGT3と似た挙動を示すが、ステアリングの切れ味が甘く感じられる。リヤの安定性ではターボSが有利だが、ステアリングの正確性ではGT3が有利だ。 ヘアピンカーブを立ち上がり、Bコーナーまではフルスロットルだ。右300Rはドライなら全開で走れるが、タイヤが冷えていたりすると急激にリヤが流れるから、4WSを過信しないほうがいいだろう。その先にあるBコーナーまでにデジタルスピードメーターは220km/hを指していた。 タイムはGT3か、ターボSか?十分にタイヤの温度が上がると、GT3のトラクションとブレーキは非の打ち所がない。上りのタイトコーナーからの立ち上がりも、パワーオーバーステアは少ない。2速ギアを使えるトラクション性能の高さは、新型GT3の速さの秘密の一つだ。 ターボSとGT3では速さの中身が異なるが、ターボSはラップタイムが1分52秒とGT3の1分51秒に肉薄している。だが、タイヤは浅溝のカップタイヤを履くGT3に対して、ターボは普通の深溝を持つスポーツラジアルだ。AWDであることを考えても、改めてターボSのポテンシャルに驚いたというのが実感だった。 GT3が速いのはむしろ当たり前だが、ラップタイムが997型GT3よりも大幅に向上したことは評価できる。MTからPDKの採用は速さでは大きなメリットがあったわけだ。 GT3の開発スピードはさらに加速する最後に歴代のGT3のニュルブルクリンク北コースのラップを記しておこう。 996前期GT33.6L 360ps369Nm7分57秒 まるでパソコンのCPUの速度のようにモデルチェンジのたびにエンジンパワーが向上し、シャシー性能や空力性能も着実に進化を遂げているではないか。空冷の時代では考えられない開発スピードでGT3は進化し続けている。2000万円弱の価格でGTカーに近い速さを手にすることができるなんて、そのポテンシャルは侮れないと思った。 スペック【911 GT3】 【911 ターボ S】 |
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