ドイツ勢に勝るとも劣らないボディ剛性走り出してタイヤが転がり出した瞬間に感じられる圧倒的なボディ剛性に驚かされる。ドイツのプレミアムブランド御三家と比べて、遜色ないばかりか勝っているかも…そう評価したいレベルに仕上がっていたからだ。後に詳しく述べるが、ボディの剛性とは、家作りでいえば基礎に相当する。クルマのすべての性能を根底で支え、運動性能の向上や乗り味を洗練させる役割を果たすのだ。 今回紹介するのはレクサス初の本格スポーツクーペ「RC」と「RC F」だ。本格“ラグジュアリー”スポーツクーペと表現したほうが、その乗り味を正確に表わせるかもしれない。こんな陳腐な表現は使いたくないが、乗ったら自然と浮かんでしまった言葉だから仕方が無い。そもそも、エクステリアの雰囲気からして妖艶なのだ。 スピンドルグリルの個性をくどいと感じるかもしれないが、不思議とハマるので何度も見るのは危険だ(笑)。見慣れてしまうと、他のクルマの顔つきでは物足りなく感じてしまうかもしれない。ボディ全体も、マスクに負けない躍動感を生み出す、抑揚のある曲面で構成されている。 インテリアにも独自の世界観そんなフォルムに、中塗り工程で手作業による磨きを入れて鏡面仕上げとする、レクサス独自の艶やかな塗装が施される。塗装というより“塗装コーティング”と言うべき質感だ。見る角度や光線の入り方によって、色合いや表情が大きく変わり、特に新色のレッドは印象的だ。まるでその奥深くに、圧倒的なボディ剛性が隠されていることを暗示するように。 室内にもレクサス独自の世界観が広がる。色合い、肌や身体に触れる触感、全てにやさしさがあり、座るとホッと心が和む、落ち着いた空間だ。特に運転席は包まれるようなデザインでコクピット感が高く、クッションと表皮を一体成形するシートもあって、身体への密着感が高く、守られているような気分になる。 大人の雰囲気を漂わせるハイブリッド実はここまでは、RCとそのハイパフォーマンスモデルでもあるRC Fは、見た目などの違いはあっても、雰囲気は似ている。しかし、エンジンスタートボタンを押した瞬間からすべてのベクトルが異なるのだ。 まず、RCには3.5L V型6気筒エンジンを搭載する「RC350」と、ハイブリッドモデルである「RC300h」があるので、全部で3つの異なる世界観を味わえる。そのなかで、最も上品でエレガントな大人の雰囲気を漂わせるのがハイブリッドだ。 絨毯の上を走るような乗り心地冒頭で述べたように、RC&RC Fの最大のトピックは強固なボディにある。ボディの無駄な動きが抑えられると、路面からの入力が足回りに集約されるから、ショックアブソーバーが効果的に振動を吸収&減衰できる。その結果、豪快なスポーツドライブから、乗り心地に優れる高級セダンのような上質さまで、持ち合わせることができた。レクサスが得意とする構造用接着剤の使用も、ボディをさらに強固にして、絨毯の上を走るようなしっとり感の実現に繋がっている。 この足回りに、エンジンと滑らかで静かなモーターの力を組み合わせて走るハイブリッドの世界観は実にエレガントだ。もちろんアクセルを踏み込めばRC350にも匹敵する加速力がエンジンとモーターによって生み出される。スポーティではなく、クーペをカッコ良く上品に乗りこなしたい、クルマにエスコートされるような上質な移動を楽しみたい、そんな人にお薦めだ。 豪快な加速&スポーティに走るならRC350一方、クーペにエレガントなだけではなく、スポーティな走りを期待するならRC350、特にRC350 Fスポーツがお薦めだ。 RC350のエンジンは、長年に渡り鍛え上げられ成熟期を迎えた3.5L V型6気筒。普段は回転振動が少なく上品に回るが、アクセルを踏むと性格が豹変して豪快な排気音とタコメーターが跳ね上がる鋭い吹け上がりを見せ、シートに身体が押さえ付けられるような強烈な加速力を味わえる。 この加速力を支えるために足回りも当然強化されるが、RC350のそれは上質さを忘れることはなく、乗り心地やしっとり感も兼ね備えているのが好印象。しかし、このエンジンを存分に使い切れる、より強化された足回りで、豪快に走りたい人もいるはず。それなら迷わず、見た目からしてスポーティなFスポーツを選べばいい。 4つのタイヤすべてで曲がる「LDH」乗り心地のしっとり感は後退するが、操作に遅れること無くシャキッと動くレスポンスやダイレクト感が高まり、一般道では使い切れないほどのスポーツ性が手に入る。しかも、RC350 Fスポーツだけに備わる「LDH(レクサス・ダイナミック・ハンドリングシステム)」は、通常のクルマと異なり、フロントタイヤだけでなくリアタイヤもハンドルに連動して動くことで、4つのタイヤがそれぞれ曲がる力を発生させることができる。 鋭い動きを生み出しつつ、安定感は犠牲にしない。クルマが未知の力で不思議なほど安定して走るような、未経験の走行感覚を提供してくれるのだ。 RCとは別モノの独自モデルがRC FRC350 Fスポーツの運動性能でさえ使い切れない人の方が多いと思うが、それを超えるレベルに、最後に紹介するRC Fがある。そもそも、RCの派生モデルだと思っている人は、イメージを180度、変えた方が良いだろう。 RC Fは名前にこそ“RC”と入っているが、実際には独自モデルだ。レクサスのスポーツシーンを牽引するという、数年前に限定発売されたスーパースポーツの「LFA」が担っていた役割を引き継ぐ、レクサススポーツ「F」の象徴。その特徴はヤマハが手掛けたV8エンジンのサウンド・レスポンス・伸び感を核に、サーキット走行まで視野に入れたスポーツ性を追求しているところだ。 乗り手を限定するようなモデルと思うかもしれないが、そこはレクサス。だれもが気軽に運転できて、走りを楽しめ、走行環境さえ整えば歓喜のスポーツドライブまで堪能できるように造り込んである。 実際、一般道では限界領域の片鱗すら味わえない。ボディ剛性の高さが生む絶対的な安定感の上に、477psの5L V8エンジンが刺激的な排気音と、持てる実力を遺憾なく発揮する。その加速力は暴力的と言ってもいいのに、安定感に包まれているのは驚くばかりだ。 限界域でも4輪を使い切れる「TVD」しかも、オプション設定されている「TVD(トルク ベクタリング ディファレンシャル)」が凄い。ハンドル操作と連動して、リアタイヤの駆動力を左右輪独立に制御するシステムで、4つのタイヤの性能を余すこと無く使うことが可能だ。 RC350 Fスポーツが備えるLDHもフロントタイヤに加えて、リアタイヤを駆使して旋回をアシストするアイテムだが、TVDは限界を超えてタイヤが滑っている最中のコントロール性まで踏まえて煮詰められたもの。具体的には、旋回中の内側リアタイヤを極限まで使い切れるアイテムなのだ。その旋回力は、レーシングドライバーのように身体を鍛えないと耐えられないレベルにあり、しかもその状態でも安定感に包まれているのが驚愕だ。 ちなみにさらに走りや個性を求めるなら、軽量化による走りの鋭さと、カーボン製エンジンフードやルーフ、アクティブリアウイングを備えた2トーンカラーのRC Fカーボンエクステリアパッケージもある。 なにはともあれ、走る環境や速度などを問わず、誰もが自然と笑顔になれる刺激と運動性能を求めてRC Fは開発されたが、まさに走り好きだけでなく触れた人を魅了するハイパフォーマンスモデルに仕上がっていた。 スペック【 RC 350 F スポーツ】 【 RC 300h バージョン L】 【 RC F 】 |
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