iPhone6というより、ガラケーだが……ひょうたんから駒というべきか、トンビが鷹を生んだ!? とでもいうべきか。意外なところから侮れないクルマが登場した。2代目プロボックス&サクシード。トヨタが生んだ営業・商用専用の4ナンバーバンである。 全長×全幅×全高が4245×1690×1525mmの日本最適取り回しサイズで、エンジンは1.3リッターと1.5リッターの直4ガソリン、ギアボックスは高効率のCVT。ハイブリッド仕様はもちろんアイドルストップもフルオートエアコンも設定すらない。見た目も素っ気なく、本革仕様などはひっくり返っても出てこない。 大雑把に分類すると最新型iPhone6ではなくガラケー、タイマーのない炊飯器、温感センサーのないエアコンであり、もっというと軍手と一緒に買う作業ツナギのようなもの。実際、このクルマの実体は2002年にそれまであった4ナンバーカローラの変わりに生まれた、無駄をよりそぎ落としたセールスマン仕様である。 それが新プラットフォームになってもなぜかマイナーチェンジ扱いだが、12年ぶりに一新! この出来が予想外に素晴らしいのだ。それは余計なモノがない魅力というか、中に入るだけでも本人確認に一苦労のハイテクビルに対する、鍵1つの昭和初期の団地のような魅力でもある。しかもそれでいてベースとなるテクノロジーは最新カローラレベル。実はありそうでないクルマなのだ。 現状、ユーザーの8割は法人リースで個人ユースはないと聞く。だが、この2代目から私用も結構増えるのでは? という出来でもある。 今どきあり得ない合理主義基本、素っ気ないプロボックス&サクシード。しかし、侮れないのは前より存在感の増したデザインだ。アッパーボディはAピラーより後ろは変わっておらず、フロントマスクやライト類の変更のみ。よって「前より顔をオシャレにしたんですか?」とデザイナーに聞いたところ「逆です。前より一貫したデザインにしました」とか。 初代はあえて乗用車っぽいマスクにしたのに対し、新型は「角が取れた四角」のコンセプトで前後統一。すると期せずしてフランス車っぽいムードになったという。ついでに薄いグリーンのニューカラーも意外と映える。 しかしなぜにプラットフォーム一新で、アッパーボディは変えなかったかというと「広さは前ので十分。変えないでくれというリクエストで」とチーフエンジニアの下村修之さん。これですよこれ。この今どきあり得ない合理主義がある種の潔さと130万円台スタートというリーズナブルな価格を生んだのだ。 実際、ラゲッジは通常状態で容量581L。ラゲッジをリアシートより長くしなくてはいけない4ナンバー車ルールのおかげで、全長が長い現行カローラフィールダー(容量407L)より広い。その分、リアシートは身長176cmの小沢のヒザが若干前に当たりそうだが、この手の車は通常1人か2人しか乗らないし、しかもホイールハウスは極力出っ張りがないように設計され、真四角に荷物が積めて便利。 さらなるポイントは、大人がリアゲート端に座って頭が当たらない高さのルーフで、「後ろに座ってご飯が食べられるし、荷物も積みやすい」とか。確かにそういうことって作業現場やセールスの現場では大切なのだ。 感動レベルのインパネ物置きレイアウト乗り込んで不肖小沢が「これはいい!」と実感したのが、感動レベルのモノの置きやすさだ。小沢自身、試乗会になると1日何10回も荷物を持ってクルマに乗り降りするので、その手の使い勝手にはうるさいが、シビレたのが運転席と助手席の間のカバン置き。 ホントになにげない部分だが、毎日クルマに乗る時に気を使うポイントで助手席に置くだけでカバンが重いとかったるいし、ついついカメラを置いたりしたら大変。最悪、急ブレーキを踏んでカメラが床に転がり、壊れたことが何度もある。 それからインパネだ。まず素晴らしいのは、今回「コンビニ弁当が置けるサイズ」まで広げた収納式テーブルでこれが便利。食べ物はもちろん、ノート、時には愛用のMacBook Air 11インチが置ける。 そしてビックリなのは、内側に抉られるように配された巨大カップホルダー。これまたペットボトルではなく1リッターの紙パックがスッポリ入るのがミソで、新型プロボックス&サクシードは、使い手である街のセールスマンや工事現場の現場監督を徹底的に研究した結果の道具性に満ち溢れているのだ。 これがなぜ実現できたかというと下村さんの英断。「まずインパネをデザイナーではなく、エンジニアにレイアウトさせたんです。その結果、美しくはないですけど機能美はあるでしょ(笑)」確かに。さらにこう続ける。「彼らはね、仕事中はほとんどクルマの中で走るだけじゃなくて、寝るし食べるし休憩するんです。ドリンクも高いペットボトルじゃなくて紙パックを買うんです」。 そのほかシガレット型ではない家庭用の100Vコンセントや蓋のついてないグローブボックス、逆に鍵付き蓋のついたETCホルダー、ケーブル使用を考えたスマホホルダーなど、働くオジサンが泣いて喜ばんばかりの配慮。マジメな話、小沢もいよいよ欲しくなってきたっ! ソフトになった乗り心地と数々の工夫さらに侮れないのが走りである。最新レベルにアップデートされた2種類の直4エンジンは1.3リッターが95ps&121Nm、1.5リッターが109ps&136Nmとビックリするほど速くはない。モード燃費もFFモデルでそれぞれ17.6km/L、18.2km/Lとハイブリッドに比べるとまだまだ。しかし、実燃費では高速単独では20km/L弱は行くのと、なによりも乗り心地がいい! 特に初代モデルと比べると突き上げが段違いにソフトになったし、電動ステアリングも軽い。まさに仕事として1日中クルマに乗る、市井の営業マンやセールスマンのことを考え抜いたセッティングなのだ。 しかし、サスペンションは初代同様フロントがストラット式、リアがトレーリングリンク車軸式で変わっていない。最大積載量も400kgは死守したいので、徐々に硬くなる非線形スプリングを柔らかくするにも限界がある。 だが、それこそがガワを変えずに床下のプラットフォームを変えた一番の理由だ。というのも荷室が来るリア部は旧型のまま、フロント部を新エンジンとCVTが載る新型にし、フロントサスペンションのストロークがより長く取れるようになった。結果、全体の乗り心地も良く出来たというわけ。 そのほかクルマで寝やすいようにシートリクライニング角度を増やしたり、座面を上下アジャストできるようにしたりと工夫は限りない。そしてこれは「営業現場じゃまず使わないでしょう」というアイドルストップ機能より遙かに大切なことなのだ。 カタチばかりのエコや世間体を気にした優しさでなく、リアルな働くお父さんのことを考えまくったクルマ、プロボックス&サクシード。マジでカローラより全然欲しいと思ってしまいましたぜ。 詳細スペック【 プロボックス F 】 |
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