スポーツカー受難の時代はとうぶん続くだろう過去最多となる33万666人の来場者数を記録して、1月13日に無事閉幕した東京オートサロン2019。 カスタムカーではなく「マジメなほう」の展示会である東京モーターショー2017の来場者数が77万1200人だったので、「それに匹敵」とまではいかないものの、「東京モーターショーに迫る勢い」ぐらいの形容をしてもオーバートークには当たらないはず。事実、会場内の熱気は「……もしかしたらこちらのほうが上か?」とも筆者には感じられた。 さて。そんな東京オートサロン2019を「総括」するほどエラソーな立場にはないが、いちおう「気づいたこと」は挙げてみたい。 気づいたのは「カスタムカルチャー自体は活況だが、スポーツカー受難の時代はまだとうぶん続くだろう」ということだ。 前述のとおり3日間で33万人以上の来場者を集め、特に週末の土曜・日曜はちょっとヤバいほどの混雑っぷりを見せていた東京オートサロン。自動車カスタマイズに対する人々の興味は昭和の時代と比べれば確実に低下しているとはいえ、「ひとつの趣味分野」としては確実に根付いていることを強く感じさせた。 これは言ってみれば「プロ野球」みたいなものだ。 昭和のON砲の時代(←古すぎてすみません)と比べれば人気は確実に低下し、「国民的興味の的」から「数ある娯楽のひとつ」に成り下がったプロ野球。しかし、だからといって各地のスタジアムは閑古鳥が鳴いているわけではない。むしろほぼすべての球場にコアなファンたちが押し寄せ、かなりの活況を呈しているのが実情なのだ。 それと同様に自動車および自動車のカスタマイズを愛でる文化は、今や確実に「国民的興味の的」ではなくなった。だが「数ある娯楽のひとつ」としては依然としてなかなかの一大勢力であり、喧伝されている「自動車カルチャーの死」なんてものはそう簡単には訪れないだろうというのが、現場を見ての率直な印象である。 だがそれも、非スポーツカーに限った話ではある。 スープラでは救えない。奇跡の国産スポーツの登場を夢想するその昔、東京オートサロンで台数的にもイメージ的にも「リーダー」であったのは、直近のスポーツカーないしはスポーティカーをベースとするカスタムカーだった。しかし2019年の東京オートサロンで勢いがあったのはあくまでも新型ジムニーや軽トラック、あるいはアルファード/ヴェルファイアなどの非スポーツカー系ベースのカスタムカーだったのだ。 いやもちろん、スポーツカー/スポーティ系カー勢にも勢いはあり、多くの来場者の熱視線を集めてはいた。だがそれはあくまでも「往年のフェアレディZ」や「ラリーに参戦していたランチア デルタ インテグラーレ」等々の懐メロ系であり、最近のスポーツカー/スポーティカー(日産GT-Rやトヨタ86、あるいは直近の輸入スポーツカー等)では決してなかったのだ。 自動車カスタム文化は死なずとはいえ、新世代スポーツカーにおけるそれは「ほぼ瀕死の状況」とも言えなくはない今。そういった状況を変えるだけの力が、今年春頃に発売されるという新型トヨタ スープラにあるかといえば……まぁ個人的には微妙だろうと予想している。 (特に国産の)新型スポーツカーあるいはスポーティカー市場がもしもこのまま実質的に滅亡するのであれば、それもまた世の流れということで致し方ないことではある。人々からとことん必要とされないモノに、この世での居場所はないからだ。 だが同時に、そんな状況をもズバッと変えてしまう「奇跡の国産スポーツ」の登場も待ちたいとは思っている。例えていうならば初代マツダ ロードスターが登場した際のような衝撃を人々に与える、奇跡的にチャーミングなスポーツカーだ。 なぜならば、SUVやミニバン全盛の世の中に特に文句はないが、そういったスポーツカーの1台や2台も、無いよりはあったほうが、世の中は確実に明るくなると思うからだ。 いつになるかはわからないし、仮に登場するとしても、その頃には「スポーツカー」など今現在以上に時代遅れな存在となっているのだろう。だがそれでも、そんなチャーミングな国産スポーツカーが次回または次々回東京オートサロンの「センター」を張ることを、いちおう夢想したいとは思うのである。 (ジャーナリストコラム 文:伊達軍曹) |
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