スピードという20世紀的な価値観が見直される時代先週、驚くようなニュースが舞い込んだ。ボルボが最高速度を180km/hに限定すると発表したのだ。 日本車は国内で市販するクルマに180km/hリミッターを採用しているが、ボルボはこれを全世界で行う。具体的にはフラッグシップモデルである「XC90」の2021年モデル(2020年第二四半期に市販予定)から180km/hリミッターが採用され、速度無制限のドイツも例外ではないというのだ。 確かに、クルマのイノベーションの中心となる「自動運転と電動化」の流れを考えると、最高速度を考え直すいいチャンスかもしれない。モビリティ社会はそう遠くない将来、AIが自動運転し、クルマが所有から利用に、化石燃料(ガソリンや軽油)から再生可能なエネルギーにシフトしそうだ。そうなればクルマの価値は大きく変わるだろう。パワーとスピードでヒエラルキーを作ってきた“20世紀のクルマ社会の常識”が見直される時がきているのだ。 ボルボのホーカン・サムエルソンCEOは「ボルボが(安全面で最高速度を規制するための)リーダーシップを取り、先駆者になるべきだと信じている」と語っている。速さやパフォーマンスよりも安全性を重視するメーカーになろうというボルボの英断は尊敬に値すると思う。 ボルボはさらに、マップのジオフェンス(通信や位置情報などを用いてバーチャルなエリアを設定する技術)と組み合わせ、もっと細かく速度を規制することが可能だと考えている。例えば学校や病院の周りで行われているゾーン30(欧州などで一般的な歩行者や自転車の安全確保を目的としたクルマの30km/h規制)では、速度を自動的に規制することを検討中だ。 詳しいアイディアは、3月20日にスウェーデンのイェーテボリで開催されるイベントで発表されることになっている。 日本のクルマは140km/hリミッターでもいいかもしれない今から60年前にボルボが三点式シートベルトを実用化したとき、「運転手の自由を奪う」という批判を受けたことがあった。今回もネット上では「スピードはドライバーが決めること」という反対意見が見られる。 しかし、ドイツでさえも自動運転になったら130km/h程度が限界と言われていて(センサー性能とコスト)、無鉄砲にスピードを出すことは時代錯誤になってきた。“スピードの出しすぎは自己責任だから”という理屈は、これからの社会では通用しなくなるだろう。 参考までに、速度無制限のドイツのアウトバーンを除くと、最高速度はだいたい110~130km/hに規制する国が多い。アメリカは70マイル(約113km/h)だ。 ひるがえって日本はどうだろうか? 日本では警察庁が規制速度を決めているが、これまではスムーズに移動することよりも“事故をなくす”という考え方が中心だった。ただ、多くのドライバーは最高速度を高めてほしいと感じていて、実勢速度と規制速度の乖離が世界でもっとも大きくなってしまっていた。こうした状況を改善するため、一昨年から一部の区間が社会実験的に110km/hで運用され、今年の3月1日には第二東名高速(新東名)の一部区間で120km/hの運用も始まっている。 私は高速道路の最高速だけを引き上げるのではなく、一般道も40→50、60→70、80→90km/hと、実情にあった規制速度をきめ細かく設定すべきと考えている。また逆に、学校などがある生活道路は30→20km/hへと規制速度をもっと下げる必要があるだろう。 この視点で言えば、日本の高速道路で140km/hはとんでもなく速いので、今まで当たり前のように踏襲されてきた日本メーカーの(国内モデルの)180km/hリミッターを見直す時が来ているかもしれない。トヨタが動けば残りのメーカーは同調しそうだが、「日本国内では140km/hリミッターを採用する」と発表するメーカーは存在するだろうか? |
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