自動運転AIは地図と画像を組み合わせて考えるシリコンバレーではつねに新しいことが起きているが、最近の話題は「NVIDIA(エヌビディア)」がトヨタと提携したというニュースだ。NVIDIAはハイエンドなゲームに欠かせないGPU(グラフィックス・プロセシング・ユニット)を設計製造するメーカーで、最近では孫正義率いるソフトバンクも出資する注目企業だ。NVIDIAのチップは車載用GPUとしても非常に優れている。自動運転の実用化に向けて、グラフィックに特化したプロセッサがキーを握るとは面白い。 最近、地図メーカーの「HERE(ヒア:メルセデス・BMW・アウディがホールディング)」と、画像解析を得意とするイスラエルのテック企業の「モービルアイ」が提携した。ダイナミックマップ(誤差数センチオーダーの高精度な三次元地図で、自動運転のベースデータとして必須といわれている)の地図上に、車載カメラで取得した画像を重ねることで、AIが正しく状況判断できるようにする。いままで地図は地図、カメラはカメラと別個の機能として開発が進められてきたが、地図とカメラ画像を組み合わせることで、動的(秒・分・時・日・月などで時々刻々と変化する)な周辺認識情報が完成する。自動運転の実用化に向けた大きなステップアップになるわけだ。 「インテル=モービルアイ=HERE」連合の動きとNVIDIAはどう関係するのだろうか。インテルの関係者に話を聞くと、モービルアイとHEREの技術で収集された膨大なデータはクラウドを介してデータセンターに送られ、AIによって機械学習(ディープラーニング)される。ビックデータで処理された有益なデータが、車外から車載AIに送り込まれるわけだ。私見になるが、NVIDIAの役割は車載側にあるので、集められた膨大なデータを機械学習する部分をインテルが担当するのではないだろうか。 Waymoはグランド・セフト・オートでAIを鍛えている?グーグルから独立した自動運転のベンチャー企業である「Waymo(ウェイモ)」は人気シミュレーションゲームである「GTA5(グランド・セフト・オート・5)」を使って自動運転のシミュレーションを行い、AIを鍛えていると伝えられる。「TRI(Toyota Research Institute:AIの研究開発を行なうトヨタの新会社で北米に拠点を置く)」のギル・プラットCEOもシミュレーションは実車テストと同じように重要だとコメントしている。 例えば現実の世界で必要な“歩行者をどう認識するのか?”などのテストはリアルワールドではテストしにくい。失敗すると歩行者を轢いてしまうからだ。そこで拡張現実というシミュレーションが利用されるわけだが、何億円もかけて開発するよりも僅か7000円のゲームソフトで用が足りる。しかもWaymoのシステムでは1日で約480万km以上の走行が可能なので、実車テストの数万倍のデータが得られる。 GTA5では1000種類以上に及ぶ歩行者や動物などが出現する。車種は262種類、天候は14パターンも選べるのだ。ハイレゾなモニターでプレイすると、リアリティがある映像はもはや現実の世界と変わらない。拡張現実とはまさにこの世界なのだと思わされる。 AIとクラウドを専門とする名古屋大学客員准教授の野辺継男氏はこう語る。「グランド・セフト・オートは3次元で正確にデータ化されており、雨や雪や夜といった走行上影響の大きな環境変化や、現実世界ではあり得ないことが任意に再現されます。例えば、わざとぶつかったり、ぶつかってくるのを避けたり、道ではない所も、どんな悪天候でも走れます。自動運転車がぶつからない様にするには事故を再現しなければ解決策を講じる事は困難ですが、ゲームの世界ならば可能です」。つまり、危険をコンピューター上で再現するのが最善な手法なのだ。 免許をとって45年の私の、ラリー・レース・取材などを通じた生涯走行距離はおそよ300万km強。だが、AIのシミュレーションは僅か1日で同じ経験ができてしまう。天文学的なデータで鍛えられるAIは素晴らしいドライバーになるのかもしれない。 |
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