Xシリーズに新ラインナップBMWといえば、誰もが思い浮かべるのがスポーティーという言葉だろう。しかし、そんなイメージが定着したのは1916年の創業からだいぶ経ってからのこと。1961年のフランクフルトショーで登場した中型FRセダン、1500の成功は、その後、2002、3シリーズへと受け継がれ、メルセデスよりスポーティーなモデルをつくるプレミアムメーカーという現在のBMWの基礎となった。改めて振り返ってみれば、BMWの歩みとは、常に高性能エンジンとスポーティーな身のこなしによって巨人メルセデスに戦いを挑んできた歴史そのものであり、その戦いの課程が強固なブランドイメージを創りあげたのだ。 そんなBMWがSUVを初めて送り出してからもうすぐ15年。2000年に登場した初代X5は、その3年前にデビューしたメルセデス・ベンツMクラスよりも明らかにスポーティーなテイストを備え、SUVにもBMWらしい「駆け抜ける歓び」を与えることができることを見事に証明してみせた。その後、BMWはX3、X6、X1を次々に送り出し、XシリーズはいまやBMW全体の3分の1を占めるに至った。 そんななか、Xシリーズのさらなるラインナップ強化を図るべく投入されたのが「X4」だ。X3と多くのメカニカルコンポーネントを共有しつつ、よりスポーティーに仕上げたX4は、前述したBMWらしさ=スポーティーさをよりストレートに表現したモデルとなる。 スポーティーなフォルムを大胆に追求X4の全長と全幅はX3とほぼ同じ。大きく異なるのは50mm低めた全高だ。X3はドライバーの頭上付近で頂点を迎えたルーフラインをそのまま後方へと直線的に引っ張り、リアエンドでストンと落としている。それに対し、X4のルーフラインは緩やかな弧を描きながらリヤエンドへと滑らかにつながっていく。真横から撮った写真でボディの下半分を隠してみれば、まるでクーペのようなたたずまいであることに気付くはずだ。 上半身と下半身で分けた場合、上半身が小さくなればなるほど低重心でスポーティーに見えるのはカーデザインの基本。いまやマーケットには多くのSUVがあるけれど、スポーティーなフォルムをこれほど大胆に追求しているのは兄貴分のX6とこのX4だけ。ポルシェ・マカンもレンジローバー・イヴォークもかなわない。X6は累計25万台という素晴らしい販売成績をひっさげ間もなく新型へと切り替わる。X6よりも手頃なサイズと価格をもつX4がヒット作となる確率はかなり高いとみていい。 ただし、気になる点もある。X6と比べると下半身のドッシリ感が控えめな点だ。とくにリアフェンダー周りの造形に物足りなさがある。フェンダー上部に深いエグりを入れて立体感を強調しているものの、X6のような「ドーン!」とした張り出し感はない。初期のデザインスケッチから想像するに、デザイナーとしてはサイドウィンドウをもっと内側に倒してキャビンの台形絞りを強めたかったはずだ。しかし、キャビンスペースを考慮し現在の造形に落ち着いたのだろう。僕としては、室内は狭くなってもいいからもっと大胆なデザインを採用して欲しかったと感じる。 後席は充分だが、荷室に割り切りとはいえ、実際にこのクルマを購入するユーザーの視点にたてば、BMWの判断は概ね歓迎できるものになるだろう。なぜなら、X4の室内は外観から想像する以上に広々しているからだ。 外から見るといかにも小さそうに思える後席ヘッドクリアランス。X3比でマイナス44mmという数字を見るとますます心配になるが、実は3シリーズセダンとほぼ同じ数値を確保している。加えて、前述したようにサイドウィンドウの倒れ込みも小さいため、よほど長身の人でもないかぎり窮屈な印象をおぼえることはないし、ましてや頭がつっかえることもない。後席の座面はやや薄めだが、これもとりたてて指摘するほどの大問題ではない。X4には、大人4人が無理なく長距離ドライブできるフル4シーターとしての機能がきちんと備わっていると報告できる。 むしろX3に対して割り切っているのが荷室高だ。トノカバーまでの容量はX3の550Lに対して500L。わずか50Lの違いしかないが、大型スーツケースやたくさんのキャンプ用品などを積み込む場合は、ルーフラインの違い=荷室高の違いがはっきりと出てくる。 エンジンは2L直4ターボ(xDrive28i)と3L直6ターボ(xDrive35i)の2種類で、それぞれにノーマルと、Mスポーツを用意する。スポーツ性の高さを標榜するモデルだけに、X3ではオプション設定となっているパフォーマンス・コントロールと、バリアブル・スポーツ・ステアリングを標準装備するのが特徴。装備差を差し引くと、同スペックのエンジンを積むX3との価格差は約15万円まで縮まる。 ただしX3に用意されたxDrive20i(579万円)の設定がないためエントリー価格には100万円近い差がある。また、ディーゼルエンジンを積むxDrive20Dの設定もない。 極上のエンジンフィールはさすがBMWまずはxDrive28i Mスポーツに試乗した。2Lで245ps/350Nmという3.5L級のパワースペックを引き出していること自体は、いまどきのダウンサイジングターボとしては珍しくない。むしろこのエンジンで特筆すべきなのは、回転フィールという感覚的な部分においてもそんじょそこらの6気筒エンジンに負けていない点だ。回転のザラつきは皆無。極上のスムースさと爽快なサウンドを保ったままトップエンドまで回りきる様は、さすがBMWである。 ウェイトは1870kgと決して軽くはないが、上り勾配でも常にスロットルペダルの踏み込み具合に応じた加速をもたらす。高速道路をクルージングしているだけなら、軽くアクセルペダルに足を載せておくだけ、というイメージ。そして深く踏み込めば鋭いダッシュを見せてくれる。よほどのスピード狂でない限り、xDrive28iでも動力性能に不満を感じることはないだろう。 とはいえ、である。xDrive35iに乗り換えてみると、「うーん、やっぱりBMWのストレート6はいいなぁ」と思ってしまうのも事実。フル加速時のとんでもない加速力もさることながら、芳醇なトルク感や、ピッと芯の通ったスムースさには、スペックでは表現できない贅沢感がぎっしり詰まっている。 悩ましい選択。僕ならどうするか?一方、フットワークの軽快感はノーズの軽いxDrive28iに軍配があがる。急カーブが連続するようなセクションでの活き活きとした動きはSUVであることを忘れてしまうほどに気持ちがいい。バリアブル・スポーツ・ステアリングの効果で、小さな舵角でグイグイ曲がっていくのもそんな印象を強めている理由のひとつだ。そうそう、見た目だけでなく、ボディの剛性感やコーナーでの安定感といった走りの質でX3を凌ぐのもX4の魅力だ。 X4に限らず、最近のBMWを買うとき、悩まずにいられないのが4気筒にするか6気筒にするかだ。Mスポーツ同士で比べたとき、28iと35iの価格差は85万円。加えて、エンジンを重視すれば35i、フットワークの軽快感を重視すれば28iという判断基準も入ってくる。 僕ならどうするか? 小一時間ほど迷った末に、思い切って35iに行くだろう。X3だったらディーゼルを選びたいし、4シリーズや4シリーズグランクーペだったら4気筒で軽快感を味わいたい。けれどX4はダイナミックなデザインに身を纏った世界でもっともスポーティーなSUVだ。そんなキャラクターをより明確に引き出すのは、パワフルで艶やかなストレート6を積む35iだと思う。 主要スペック【 X4 xDrive28i M Sport 】 【 X4 xDrive35i M Sport 】 |
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