トランプ砲が自動車メーカーを狙い撃ちいま、自動車メディアの重大関心はドナルド・トランプの発言だ。「メキシコで作ったクルマは課税する」と強気の発言を繰り返している。デトロイトショーで会った知り合いのアメリカ人からは「トランプ大統領のツイッターをフォローすると面白いよ」と勧められた。(https://twitter.com/realdonaldtrump) メキシコ生産が悪いと言わんばかりの砲撃に、世界中の自動車メーカーのトップは戦々恐々としている。「もっとアメリカ生産のクルマを買って、アメリカ人を雇え」とマフィア並の脅しをかけている。フォードのマーク・フィールズCEOとフィアット・クライスラー(FCA)のマルキオーネCEOはメキシコ工場計画を白紙撤回した。トランプはツイッターで「サンキュー、フォード、クライスラー」とリアルタイムでつぶやいていた。メキシコの次は日本が批判されている。日米貿易摩擦が再び話題になりはじめたのだ。 アメリカ国内の自動車販売の実際の数字を確認してみると、2015年と2016年はほとんど同じで、約1750万台の乗用車とライト・トラックが販売されている(2016年は前年比0.4%の増加)。 2015年の実績で見ると、1750万台中1189万台(68%)がアメリカで生産されているが、輸入されたクルマも563万台(約32%)ある。アメリカは世界一の自動車輸入国となっているのだ。残りの563万台がアメリカで生産されるならもっと雇用が増えるとトランプ大統領は考えている。だが、年産20万台規模の工場を25以上も増やすと、雇用は増えるが、そもそも労働者を確保できるか気になるところだ。 アメリカが輸入する車の半分は日本ブランドなぜ、日本とメキシコが槍玉に挙げられるのか。563万台の輸入車の内、メキシコからは195万台(35%)、日本からは159万台(28%)も輸入しているので、どうしてもメキシコと日本がトランプ砲のターゲットにされてしまう。さらに、日本から輸出されるのはほとんど日本メーカー製の自動車であり、メキシコからアメリカに輸入される台数にしても、アメリカメーカーに次いで多い。JETROの資料では2015年にメキシコで生産される各メーカーのアメリカ・カナダへの輸出はおおよそ次のような数字となる。 ===メキシコ生産でアメリカ・カナダに輸入される台数==== これらの数字はカナダも含まれるが、アメリカの輸入車の多くがメキシコと日本からやってくる。企業の国籍別でみると、アメリカが輸入するクルマの50%は、日本とメキシコで生産される日本メーカーブランドなのだ。それだけ日本メーカーがアメリカのユーザーの好みを熟知し、リーズナブルな価格と品質で人気となっているともいえる。 メキシコ批判の背景にはNAFTA(北米自由貿易協定=アメリカ・カナダ・メキシコ間で非課税貿易できる協定)という制度が存在する。トランプ大統領はこのNAFTAからの離脱も考えている。ただし、その影響はむしろデトロイト3のほうが大きいかもしれない。 というのも自動車産業は様々な技術や部品を使うので、サプライチェーンは複雑に絡み合う。メキシコで組み立てるクルマの部品はアメリカで作られるモノもある。最終的な組み立て工場のことだけを考えてはいけないはずだ。 TPPよりもむしろNAFTA離脱のほうが、日米自動車産業に大きな影響があるのではないだろうか。しばらくはNAFTAの行方に注目しておきたい。 |
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