そもそも、CESって何?「CESの主役は、今や自動車だ!」、テレビでそんな報道を耳にした人も多いだろう。正直なところ、「CESって何?」という人も少なくないはずだ。CESとは毎年、年明け早々にラスベガスで開催される世界最大級の家電ショーで、「Consumer Electronics Show」を略して「CES」なのだ。1967年にCESの第一回が開催された当時は、テレビやAVが主役だった。80年代にはパソコン、90年代には携帯電話、2000年代に入るとマイクロソフトに代表されるソフトウェア産業が主役になり、家電のトレンドを生み出してきた。 もちろん、今も、メイン会場ではパナソニック、ソニー、LG、サムソンといった家電メーカーが幅をきかせている。しかし、ITべンチャーが独自の会見を行うようになり、ぽかっと穴が空いたところに、自動車のIT化が加速して、ここ5年ほどで自動車メーカーが続々と乗り込んできたのだ。 地元アメリカ車メーカーはもちろん、ここ数年でドイツ車メーカーも出揃った。特に、2011年に初めてCESに乗り込んだアウディが自動駐車や自動運転などのデモンストレーションを行って、CESにおける自動車の存在を高めた感がある。オーディオや家電メーカーのブースにも、以前はカーオーディオやカーナビが展示される程度だったが、アウディの参加以降、各社がこぞって自動車のソリューションを全面に押し出すようになった印象すらある。 また、この数年で自動車の電動化が急速に進んでいるのも事実だ。走行中も安定した通信回線を確保できる時代になり、クラウドやインターネットにクルマもつながり、IT化の波も押し寄せてきている。アメリカで「ジェネレーションY」と呼ばれる世代が消費を担う年齢になり、スマホで使い慣れた便利な機能をクルマの中でも使いたいという要求も高まっている。そうした市場側の要求と、技術的な背景とが共に整いはじめ、“CESの主役がクルマ”になりつつあるのだ。 BMWは「新たなつながり」を提案2014年にCESに初参加するにあたって“自動ドリフト”を披露して大きな話題を生んだBMWは、今年はIoT(モノのインターネット)をキーワードに家や家電や社会とクルマのつながりを見せた。最大の目玉は、「i8カブリオレ」をベースに、最新のHMIを搭載した「iビジョン・フューチャー・インタラクション」だ。 スイッチで自動運転モードに切り替えるとステアリングが沈み込み、助手席側の21インチ大型ディスプレイをジェスチャーで操作できる。ダッシュボードに向かって手をかざすと、その動きを読み取って機能が表示される。選択後にステアリングに埋め込まれたボタンを押せば、クリック感とともに操作が完了する。未来感の演出かとおもいきや、ディスプレイなら、タッチパネルやコントローラより離れたところに設置できるので、自動運転に切り替えたときにリラックスできる空間が作れるという。 BMWらしくてお洒落だなあ、と思ったのが、玄関のミラーにすべての情報を統合して表示し、操作までできるコンセプト。どう使うかというと、例えば、i3で帰宅したら、玄関先でクルマを降りて、家の中に入ってしまう。玄関のミラーを操作して自動で車庫入れをして、非接触型充電器で充電までできる。同時に、スマホのスケジュールも表示されて、友人と会う時間までにフル充電できるかなんてことまでわかる。 「ミラーレス」の実用化も着々いやいや、クルマだけではなく、バイクまでがつながる「コネクテッド・ライド」のシミュレータも体験した。乗用車で導入済みの「コネクテッド・ドライブ」のバイク版だが、ライダー向けに情報を精査し、ヘルメットに備えた光学装置で投影するなど、バイクの運転を邪魔しない工夫が施されている。 一見すると、グーグルグラスのようだが、実際に体験してみると、似て非なるものだった。ライダーの視界を妨げずに車両情報や交通情報が投影され、視線がやや遠目の中央におけるなど、運転に集中できる工夫がされている。情報についても、最高速などの車両情報に加えて、工事や渋滞などの重要な交通情報に絞って提供する。 会場での展示とは別に、「i8ミラーレス」の公道試乗をする好機にも恵まれた。死角が減って安全性が高まるほか、空力向上によって1%の低燃費化ができるなど、いいこと尽くめのように思える。 左右とリアに傷になりにくいゴリラガラス2を採用し、カメラは通常の2倍のフレーム数でカラー表示が可能なスペイン・フィコサ製。カメラの画像を合成して、ルームミラーの形をしたディスプレイに表示するのだが、左右に首を振って見る物理ミラーに慣れているので、多少の違和感は感じる。日本でも法制化の動きが進んでおり、BMWでは2018年ごろの実用化を目指して、鋭意開発中だ。 「電化」に舵を切ったVWグループCES開幕前夜に開催される基調講演を担当したのは、フォルクスワーゲン・ブランドを率いるヘルベルト・ディース氏だ。就任後間もなく、アメリカにおけるディーゼル車排ガス問題が起こり、その対応に奔走した人物であり、彼がアメリカを代表する家電ショーという大舞台に登壇すると決めたのは大英断だ。 異例の謝罪から始まったものの、その後は電化の方向に大きく舵を切ったことと、IT戦略を見せる前向きなものだった。去年発表した「ゴルフR タッチ」のベース車をPHVとし、「ゴルフe タッチ」へと進化させたことからも、電化の方向付けが強調されているのがわかるだろう。 目玉は、バスこと、タイプ2を電気駆動で復活させた「BUDD-e(バディ)」だ。音声コマンドやジェスチャーでドアを開閉できたり、自宅のドアフォンと連動して来客と話せるなど、頼れるバディ(親友)のようなクルマという意味だ。 30分の急速充電に対応し、約370kmの走行ができる…といった車両情報にはそう目新しいものはないが、ここで注目すべきは、異業種との協業だ。BUDD-eの開発にあたってLGのクラウド部門やベルリンのITベンチャーと協業したことに加えて、自動運転の分野でイスラエルのモービルアイと組んだり、ドイツ車メーカーの三社合同でノキアの地図事業であるHEREを買収するなど、自動運転とコネクテッド・カーの分野で着々と包囲網を作りつつあることだ。 アウディは最大500kmのEV走行を実現同じグループに属するアウディも、電化に舵を切る姿勢をアピールした。4輪を電気モーターで駆動する「e-tron クワトロ・コンセプト」は、前に1基、後ろに2基の電気モーターを搭載し、トータル出力は370kW/500Nmを生んでパワフルな走りに対応する。アウディ自慢のクワトロの電動版だ。最大500kmのEV走行が可能と聞いて驚いたが、これらの技術を搭載したEVが2018年に発売される予定だというので、かなり現実味のある数字なのだろう。 自動運転に関しては、NVIDIA製半導体を搭載する自動運転モジュール「zFAS」の第三世代が小型化された点が新しい。 新型Eクラスは公道での自動走行へメルセデス・ベンツは、2015年に自動運転のコンセプトカー「F-015」を引っさげて、ラスベガスのメインストリートでデモ走行して話題を呼んだ。それと比べると、今年はいくぶん地味だったが、自動運転の普及に向かって重要な発表をしていた。新型「Eクラス」にて、市販車としては初の、公道で自動走行が許可されるナンバープレートを取得したのだ。 また、デトロイト・ショーに先んじて新型「Eクラス」のコックピットを公開した。12.3インチのワイドスクリーン・ディスプレイがインストゥルメントパネルの中央に備わり、新たに発表されたステアリングホイール上の「タッチ・コントロール」ですべての操作が可能になるのがセリングポイントだ。 ドイツ車メーカーだけを俯瞰してみても、いかに、CESの主役がクルマになっているかがわかるだろう。近日お届けする【後編】では、トヨタのAI新会社をはじめ、地元アメリカ車メーカーや、サプライヤーまでを含めて、自動車産業のIT化の動向をリポートしていく。 ■中編に続く |
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