確かな存在感を示した日本メーカー時代はスポーツカーを求めているのか?……と思えてしまうほど、ニューヨーク国際オートショーでは多数のスポーツモデルの登場が印象的だった。 アメリカのメーカーでいえば、フォードの「シェルビー GT-H」やシボレーの「カマロ ZL1」、トヨタの若者向けブランドの「サイオン tC RS 10.0」が注目され、欧州メーカーからは「アウディ R8スパイダー」や「メルセデス-AMG E43 4マチック」が登場した。 そして、日本メーカーからはホンダの高級車ブランド「アキュラ NSX GT3」を筆頭として、「トヨタ 86」、「日産 GT-R」、「マツダ MX-5 RF(日本名:ロードスター RF)」といった具合でワールドプレミアが目白押しだった。 だから、このショーだけ見ていると、ひと昔前の景気がよかった時代のモーターショーのようにすら思えた。そのくらい、勢いを感じるショーだったという印象だ。 そうしたショーの中にあって、日本の自動車メーカーの存在感は大きい、と感じたのも事実。実際に日本メーカーの多くはNYオートショーに合わせて重要な新型モデルを送り込んでおり、やはり日本メーカーにとっても、日本市場ではなくアメリカが最も重要な市場だと痛感させられる。 トヨタは「プリウス PHV」をアメリカ名の「プリウス プライム」という車名で送り出してきたし、スバルも「インプレッサ」の新型をワールドプレミアした。噂されていたマイナーチェンジ版のGT-R、ロードスターのリトラクタブルハードトップ「RF」も、この地を発表の場として選んだ。 “有力モデル”がどこで登場するかは、世界の市場の中で、どこが大切であるかを静かに物語っているということだ。 史上最大の進化を遂げたという日産GT-R今回、河口まなぶがとくに注目したのは次の3台。日産GT-R、マツダ ロードスターRF、スバル インプレッサである。 日産GT-Rは、約9年のモデル史上において“最大の進化”を果たしたと自ら謳う。実際エクステリアでは前後バンパーをマイチェン前のNISMOから受け継ぐ造形となったことをはじめ、なんとA・B・Cすべてのピラーの構造やデザインまで変更してボディ剛性を高めた。さらに新たなホイールやマフラーなどまで細かく変更を行った。 室内では基本骨格はそのままながら、ダッシュボードが30mm下げられたほか、センターコンソールからシフト周りまでを再デザイン・再レイアウトしたこだわりっぷり。ステアリングやナビ周りのデザインも変わった。 ハイライトはエンジンパワーで、20hpアップの565hpを達成。ps表示でいえば570psに達したわけだ。足回りも当然ブラッシュアップが図られている。 今回のGT-Rはモデル年数を考えても“最後のモデル”と言われる。ならばなぜ、このような大規模改革ができたのだろう。その内容はトヨタ86の主査である多田哲哉氏に「トヨタだったらモデル末期にこれだけの変更はできないと思う」と言わしめたほどだ。 GT-Rの開発を取りまとめる田村宏志氏は、「日本で言う15年モデルでは、従来のイヤーモデルを出さなかった。そこで我慢した分、今回のモデルで様々に手を入れた」とコメントしている。 日産は今回、プレスデーの展示はGT-R一色で、歴代モデルをすべて展示するこだわりようを見せた。最も顧客が多いと言われるこの地で発表された今回のモデルは果たして、最後のモデルなのか否かは不明だが、再びインパクトを与えたことは間違いなかった。そして新モデルが溢れるNYオートショーの中でも確実に存在感を放っていた。 これまでの概念を覆したロードスターRFGT-Rの次に印象的だったのが、マツダのロードスターRF(リトラクタブル・ファストバック)だ。いつかは登場するだろうと言われていたロードスターのハードトップは、なんとオープン時にピラーが残る形状で登場したことで、強いインパクトを与えた。 NYオートショーで発表されたワールド・カー・アワードにおいて、ソフトトップのロードスターが大賞とデザイン賞をダブルで獲得したが、それにも相応しいデザインの力を感じさせる1台だったわけだ。 RFはなんといっても、ルーフ構造を一部残したオープン機構を採用したことで、見た目のインパクトの強さを手にしたばかりではなく、リトラクタブル・ファストバックという新たなボディ形状名称を作ってしまったところにもインパクトがあった。 これによってこれまでのロードスターの概念を覆すとともに、新たな価値を創造したといえる。その意味では、とても意義深いクルマだといえるだろう。 今後のスバルを示唆する新型インプレッサそして最後に、スバルの新型インプレッサ。スバルはこの地で、セダンとハッチバックの2タイプを同時に公開した。理由はもちろん、アメリカがスバルの最大市場であり、ここでの売れ行きこそがスバルを支えているからである。 新型インプレッサはスバルの次世代のクルマをすべて受け持つ、スバル・グローバル・プラットフォームを採用した最初のモデルであり、このプラットフォームをベースに今後はレガシィやその他の車種も生まれてくる重要な技術を盛り込んでいた。 またデザインに関しても、以前から謳っている“ダイナミック×ソリッド”を具現化したものとなっており、エクステリアは確実にスポーティになりつつも、スバルの従来価値である運転しやすい視界作りから来るウインドーグラフィックなどの伝統は守られる。 重要なのは今回、インテリアに相当に手が入れられており、高い質感を手にいれたこと。大きな変化があったレヴォーグよりも、さらに良いものを期待していい。このクラスとしては珍しく、ダッシュボードなどにもレザーとステッチが展開されるほどだ。 見逃せないのが、新型インプレッサで展開されたスイッチやその他の細かなパーツだ。実はこれらも共用化を図って考えられたもので、今後の様々なモデルに使っていくものである。そう考えるとなるほど、新型インプレッサのクラスを超えた質感の高さは、様々なモデルに展開するがゆえのスケールメリットの上に考えられたコストパフォーマンスの高いパーツ、ということにもなるわけだ。 このようにNYオートショーでは、我々にとっても重要なモデルが数多く登場した。日本の自動車メーカーが送り出す、日本人にとっても重要なモデルがアメリカで発表される、というのは複雑な想いを抱かずにはいられないが、これもまた現実なのだろう。とはいえこの3台が我々にとって興味深いモデルであることに変わりはなく、日本で試乗する日が楽しみなことにも変わりはない。 【こちらもオススメ】 |
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