若者がふたたびクルマに興味を持ちはじめた?なかなか世界のメディアから相手にされない日本のモーターショー。今年こそはと関係者は期待したが、プレスデイ初日、海外メディアの数は激減していた。取材する我々はゆっくりと取材できるので都合が良いのだが、主催者は心配だろう。 だが、一般公開日になると心配は吹き飛んだ。説明員として会場に立つ知り合いの広報マンは、若い人がたくさん来場して、「クルマの性能やデザインに関する質問が多いんですよ」と嬉しい悲鳴をあげているではないか。そこで東京モーターショーをまだ見ていない人に向けて、今回は私なりの見どころと感想を駆け足で紹介していこう。 まず、9月のフランクフルトモーターショーと今回の東京モーターショーの間に、VWのディーゼル不正問題が起きた。その影響をもろに受けたのがVWブースだ。謝罪から始まった異例のプレス・カンファレンスが印象に残る。VWとアウディは当初計画していたディーゼル車を展示せず、ガソリン車とPHEVなどの電動駆動に特化したモデルをラインアップした。 一方、同じドイツ勢でもメルセデス・ベンツやBMWは高級車ディーゼル車を積極的に展示し、フランスのプジョーや、イギリスのジャガーもディーゼル車を2016年から日本で市販すると発表した。 RX-VISIONのロングノーズに収まるエンジンは?メディアからも一般の来場者からも多くの注目を集めたのは、西館入り口に展開するマツダブースのデザインコンセプト「RX-VISION」だ。RXの名の通りロータリーエンジンの搭載を謳うスポーツカー・コンセプトだが、そのスタリングが驚きだ。ロングノーズ&ショートデッキはまるで往年のアメリカンスポーツカー。知り合いのフランス人ジャーナリストはこの長いノーズを見て「ストレート6か!」と歓喜の声を上げていたが、私は直感的にフェラーリ・F12ベルリネッタを思い出して心臓がドキドキした。でも冷静になってみると、ボンネット中央部の高さから推測してV12は無理かもしれない。 合理的な解釈をしてみると、ロータリーなら4ローターか、2ローターならフロントにラゲッジスペースが確保できるはずだ。個人的には4ローターでル・マンのGTクラスに参戦して欲しいと思う。きっとロードスターの山本修弘・開発主査も同じ意見だと思う。ちなみにヨーロッパ人と話すときはロータリーではなく、ロータリーを発明したバンケル博士に敬意を示し「バンケル・エンジン」と呼ぶべきかもしれない。 日産のHVやプジョーのディーゼルにも注目「やっちゃえNISSAN」な日産は自動運転とEV+電動駆動が展示の主力だ。私が気になったのは往年の240Zをカラーのモチーフにした「GRIPZ CONCEPT(グリップス コンセプト)」が搭載する、シリーズ・ハイブリッド(エンジンで電気を作りモーターを回すハイブリッド)の「Pure Drive e-Power」だ。 シリーズ式なのでPHEVのようにたくさんのバッテリーを積む必要はなく、コスト的にはトヨタやホンダのハイブリッドと勝負できそうだ。トヨタの遊星ギアを使った「THS」、ホンダのデュアルクラッチを使った「i-DCD」に対する、エンジンを発電専用に使う日産のハイブリッドシステムが近日登場する。 西館ではプジョーの2リッター・ディーゼルも気になった。日本の排ガス規制を正攻法で取得し、「508」に搭載して市販するのだ。プジョーのディーゼルは定評があるだけに注目しておこう。 ミニバンを展示しないトヨタブースが新鮮場所を東館に移すと、トヨタのブースが目に飛び込んでくる。いつもと違ってトヨタブースが心地良いのはなぜか? よく見るとミニバンが消えているではないか! ステージの上には「新型プリウス」とヤンチャなイメージの「C-HR コンセプト」。どちらも「TNGA(トヨタ・ニュー・グローバル・アーキテクチャー)」という新しいプラットフォームで開発されている。特徴的なのは低重心。プリウスの場合はヒップポイントが約60mmも下がり、重心も20mm低くなっている。しかもリアサスは四駆を考慮してマルチリンクだ。ということで、AWDもあり、走りもスポーティになる新型プリウスへの期待は大きい。 「C-HR コンセプト」のチーフエンジニアはアマチュアレーサーの古馬さんだ。彼はハンドルを握るとめっぽう速い。レースでは私の五番弟子。古馬さんに「コンセプトは?」と聞くとずばり「カッコと走りです、それ以外考えていません」と謙遜する。よく見ると、このSUVは5ドアで、リヤドアが存在するのだ。来年春のジュネーブショーで発表される市販車も、ほぼコンセプト通りにデザインされるらしい。パワー・プラントはプリウスと同じハイブリッドと1.2リッター・ターボが用意される。ターボにMTがあれば買いではないだろうか。 スズキは2気筒ディーゼルも頑張るらしいホンダは水素燃料電池車「クラリティ フューエルセル」や新型「NSX」を出展したが、オートバイから水素燃料電池車まで、まさにモビリティの多様性がホンダの強みかもしれない。「シビック タイプR」はマッチョなスタイルだが、コイツのセダンが欲しいと私は思った。 三日目にはスズキの鈴木修会長と立ち話をした。自動運転も興味があるし、2気筒ディーゼルも頑張るらしい。展示車で早く乗りたいのは遂に復活する「アルトワークス」の5MTだ。サスもエンジンもMTも塩コショウを加えました、と開発者が説明してくれた。 スバルは「S207」の人気が高いが、5ドアハッチの「インプレッサ 5ドア コンセプト」のデザインを見てほしい。スバルはこのモデルから新規プラットフォームを導入する予定だ。 ダイハツは福祉車両や商用車両に力を入れてきた。コンパニオンは一番人気なのでここで一息つくといいだろう。 東京モーターショーほど多様性に富んだショーは無い!カワサキの馬鹿みたいに速いバイクも面白い。世界には命知らずのライダーがいるんだと感心してしまう。 BMWブースでは「新型7シリーズ」をチェックしたいし、向かいのジャガーブースでは初のSUV「F-PACE」も登場している。 残るブースで気になったのはヤマハだ。2013年の東京モーターショーではカーボンシェルで作ったコンパクトカー「MOTIV」を発表していたが、そのルーフをチョップすると今回の2シータースポーツカー「SPORTS RIDE Concept」の出来上がりだ。基本コンセプトを手がけたのは天才デザイナーのゴードン・マレーだ。 ということで、世界のメディアが後悔するほど、今年の東京の出展車は大当たりだ。世界が作れないようなクルマが多く存在していた。出かけて損はしない! 東京モーターショーほど多様性に富んだモデルが出品されるショーないだろう。 |
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