本気で攻めてきたレクサス「レクサス、本気で攻めてきたな…」 今年4月の北京モーターショーで発表されたレクサスの新しいコンパクトSUVであるNXに試乗しての、それが第一印象であった。実際にはステアリングを握るより前、実車を目の前にした段階でも、それはひしひしと感じられたのだった。 ショー会場ではドギツくすらも見えたエクステリアデザインは、しかしそれ故に試乗の舞台となったカナダ ウィスラーの大自然の中でも小さくまとまってしまうことなく、むしろ明快な主張とともに力強ささえ感じさせた。遠目には、4630mmという全長がにわかには信じられないほどである。ちなみに全幅は1845mm。これは日本の道での取り回し性に配慮した結果である。 ディテールにこだわった精緻なインテリアセンターコンソールを囲む金属調のフレームを一体成形としたインテリアも同様で、実際にドライビングポジションに収まってみると、むしろ精緻な印象が強まる。全体のデザインは大胆だが、各部に入れられたステッチ、繊細なデザインのメーターなどディテールに細部まで配慮されているおかげだろう。 そもそもプレミアムSUVというカテゴリーで、レクサスは先駆者だった。RXのデビューは1998年まで遡る。しかしながらコンパクトクラスではレクサスは挑戦者である。並みいる強豪の中で存在感をアピールするべくデザインには大いにこだわったという。その甲斐は十分にあったと言って良さそうである。 トルクフルな新型2L直噴ターボ走りの完成度はレクサスの現ラインナップ中、一番と言っていいかもしれない。これまでのレクサス各車に使われてきた新技術は当然すべて使われ、その上で各領域に於いて新しいチャレンジも行われている。 とりわけ注目されそうなのが、NX200tに搭載される直列4気筒2L直噴ターボエンジンである。水冷式エギゾーストマニホールド一体シリンダーヘッド、ツインスクロールターボチャージャーなどを採用して新開発されたこのエンジンは、チーフエンジニア曰く、これ無くしてNXは成立しなかったというほどの重要なパートを演じるものだ。 実際のフィーリングは、やはり全域で力強さが漲る。V型6気筒3.5Lでも難しいであろう、1650rpmという低回転域から350Nmものトルクを発生する特性は、発進と同時に余裕すら感じさせ、また小さなスロットル開度にもリニアに反応する頼もしさをもたらしている。6速ATとのコンビネーションの問題か、素早い加速を欲した時に一瞬の躊躇いがあったりということもあったが、この辺りは解決可能な問題のはず。総じての印象は上々と言える。 2.5Lハイブリッドには別の魅力がISやGSでお馴染みの2.5Lエンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを積むNX300hも、動力性能は十分以上。滑らかな走行感覚は、NX200tとはまた別の魅力を感じさせる。要するに、いずれにも存在意義アリというわけだ。 駆動方式は、いずれもFFと4WDの両方が用意される。4WDには旋回時に狙ったラインのトレースを容易にするべくリアの駆動力を増減させるダイナミックトルクコントロールが採用されている。またハイブリッドではモータートルクの出し入れによって乗り心地を改善する、ばね上制振制御も行なわれる。 強靭なボディと感動のフットワークそして感動すらさせられたのがフットワークの良さである。ステアリング操作に対する応答はとにかく正確だし、何よりそうやって切り込んでいった先のコーナリング中の姿勢が抜群なのだ。ロールは無理やり抑え込まれているわけではないが、フロントが浮き上がることなく、リアは素直な動きで旋回を助ける。視線の高さ故の不安感とは無縁で、左右に切り返すようなコーナーでもとても走りやすい。 このナチュラルで気持ちのいいフットワークに貢献しているのが、まずはそのボディだ。ISから使われているレーザースクリュー溶接、構造用接着剤に加えて、実は非常に効果的だというウインドシールドガラスの高剛性接着も行なわれて、強靭な骨格をつくりあげている。その上でダンパーは、ベースモデルでは微低速域の動きを改善したという新タイプが採用され、更にAVSと呼ばれる減衰力可変式ダンパーは、従来の9段階から30段階にまで制御の幅を広げたものが使われるなど、走りの質を徹底的に追い込んでいる。 F SPORTはクラストップの快適性を実現か実際のところを言えば、試乗車はまだ最終段階の量産試作車ということで乗り味には若干のバラつきがあった。その中で印象の良かったもので評価するならば、AVS無しでも快適性は上々。更にAVS付きでは、よりしなやかに路面からの入力をいなす一方、ドライブモードセレクトでS+を選ぶことで無駄な動きの更に抑えられた一体感の高いハンドリングを味わうことができた。 ちなみにF SPORTではAVSが標準装備になる上に、前後にパフォーマンスダンパーも装着される。後者の恩恵も相当大きいようで、微小な振動がすっきり収められた乗り味は、クラストップレベルの快適性を実現していると言っても過言ではないように思えた。 レクサスの起爆剤になる予感このNX、日本国内に於けるレクサスの大きな起爆剤になるかもしれない。サイズはこの国の道路事情の中で持て余すことなく、それでいて室内は十分な広さを実現しているし、快適性も走りっぷりも目を見張るものがある。デザインだって市場を席巻しているドイツ勢に負けない存在感を発揮しているし、更に言えばレクサスならでは、あるいは日本車ならではの“おもてなし”も心をくすぐる。 こだわりのイルミネーションも面白いのだが、それは実車を見ていただくとして、たとえばカップホルダーは底面にラバーが敷かれており、ペットボトルのキャップを片手で外すのをラクにしている。リモートタッチには新たに振動フィードバック式のタッチパッドを採用した。また、後席にはパワーリクライニングシートを設定。大きな荷物を載せる時などワンタッチで折り畳むこともできる。この場合の荷室長は実に950mmとなり、横方向の余裕も相まって46インチのゴルフバッグ3つを横に並べて積めるというから、随分使いでのある空間になっている。 安全デバイスも抜かりなく設定ドライバーアシストも充実しており、完全停止まで行なう全車速対応のレーダークルーズコントロールや、ドアミラーの死角に居る車両の存在を検知して知らせるブラインドスポットモニターなどは当然設定。レーンデパーチャーアラートには、従来の警告音と表示に加えて、ステアリングに引き戻し方向のトルクを与える制御も加えられている。カメラ画像を合成して車両の周囲360°を見渡すことを可能とするパノラミックビューモニターはレクサス初の装備だ。 こんな風に、どの観点から見ても高い満足度を実現してくれそうなNX、あと気になるのは価格だけだが、この円安で輸入車勢が軒並み値上げした後だけに、国産のメリットを期待したいところだ。 正式な発表は間もなく。今年後半、大いに期待したい日本車の1台であることは間違いない。 |
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