平面パネルはアメリカでは問題にならないが…日本でも実車が公開された「テスラ サイバートラック」はアメリカでは昨年11月から一般オーナーへのデリバリーが始まっている。しかしアメリカのテスラ社および販売店はメディアへの試乗車貸し出しなど行っていないので、こちらでも試乗するチャンスは滅多にない。 >>サイバートラックのカタログ情報はこちら そこでレンタカーを調べてみるとTUROなどの個人レンタル、一種のカーシェアが多く見つかった。しかし料金は平均で一日1000ドル(約15万円)と法外で中々手が出せなかった。ところが今回、このクルマのために渡米してきたドイツ人ジャーナリストの助けで、既にサイバートラックを入手しているオーナーを紹介してもらい、彼の厚意で短時間ではあるがドライブすることができた。 日本の発表会でも話題になった全長5682×幅2200×高さ1790mmのボディは確かに大きいが、アメリカのフルサイズピックアップとしては特に取り立てて言うほどの大きさではない。 ただしドライバーの頭の位置をトップにして平面パネルを張り合わせたような非常にユニークなデザインのせいで他に類を見ない圧倒的な存在感をもっている。気になったのは頑丈さを売りにしているステンレスパネルの鋭角的な合わせ目で、このままでは不用意に手で触れると怪我をする恐れがある他、ドアやトランクなど合わせ目を閉じるときには注意が必要かもしれない。 >>フォトギャラリーをチェックする アメリカのメディアでは人参を削ったり、挟んで切ったりしている場面を紹介しているが、こうした点は当然ながら歩行者保護問題につながる。しかしアメリカではクルマ対歩行者の保護に関する規定がないのでサイバートラックはこの問題を素通りしているのだ。 内装の仕上げはチープだが荷台の使い勝手は実用的運転席に乗り込むとステアバイワイヤーを象徴するヨークタイプのステアリングホイールや、ダッシュボード中央に配置された18.5インチの大型タッチスクリーンが目に入ってくる。 >>フォトギャラリーをチェックする キャビン内は他のテスラモデル同様に材質も仕上げも1000万円を超える価格のクルマとは思えない。アメリカは別として、クルマのインテリアの仕上げに厳しい目を持っているドイツをはじめ欧州各国の市場でも「テスラだから!」と受け入れられているのは不思議な現象である。おそらくテスラオーナーの殆どは豊富なインフォテイメントなど他の部分に価値を置いているのだろう。 リアシートを含め車内の空間は通常のダブルキャブ型ピックアップと同等の広さを提供している。すなわち日本でのミドルサイズセダン並みで、大人4人でも十分快適なドライブが可能だ。またピックアップの重要なポイントであるトノカバー下の荷台の容量は67キュービックフィート(約2000リッター)で、一見デザイン優先の荷台(カーゴベッド)は通常のピックアップがそうであるようにトノカバーやライナー(保護カバー)を追加購入したり、床に傷防止の塗装を施したりする必要はない。(筆者のF150を参照 ※写真25枚目) その結果、家庭菜園用の泥運びなどでの使い易さも意外なことに全く問題がなく、さらに頑丈な作りの電動トノカバーは上に大人が二人乗っても大丈夫なほどしっかりした造りで積み荷を保護、セキュリティの面でも安心である。 >>サイバートラックのカタログ情報はこちら 意外なほど軽快で快適。普通免許では乗れない可能性も試乗車のグレードは2基のモーターを搭載するデュアルモーターの「AWD」で最高出力600馬力とおよそ1000Nm(推定値)のトルクを発生する。ダイナミック性能は0-100km/hは4.3秒、最高速度は180km/hでリミッター制御される。また積載量は1134kg、牽引能力は4990kg、航続距離は547kmと発表されている。 自重3トン近く、さらに5メートルを大きく超える長さにも関わらず動きは軽やかで、4輪ステアのお陰で意外にも取り回しは良く、街中はもちろん狭い充電ステーションでも上手く駐車できた。問題は長く伸びたAピラーの根元によって斜め前方の視界が大きく妨げられることで、交差点などでは注意が必要だ。 広々としたアメリカンハイウェイでは長いホイールベースやエアサスのお陰もあって快適なクルージングが楽しめた。今回は本格的なオフロード走行はできなかったが、グラベルで285/65R20サイズの グッドイヤー プレミアム・オールテレイン・タイヤのグリップ力が見せたトラクションは素晴らしく、トレールドライブを楽しむことも可能だろう。 もっともサイバートラックのオーナーの殆どは繁華街の大通りを流すに違いない。と言うのもアメリカでは当たり前のように見かけるピックアップとは明らかに一線を画しており、エキゾチックスポーツカーに負けない存在感をもっているのだ。 >>サイバートラックのカタログ情報はこちら それ故に現在アメリカ中西部で2.7リッターV6の「フォードF150」を所有しており、いずれは電動化を考えている私には大きな疑問が湧いた。 「果たしてイーロン・マスクはこのサイバートラックで温室効果ガスを垂れ流しているアメリカの巨大ピックアップ市場を本気で変えようとしているのだろうか、それとも、米国を筆頭に世界中の金持ちの所有欲を掻き立てるためにこんな奇抜な製品を送り出したのだろうか?」という点である。 仮にもし前者であれば、こんなユニークなデザインは不要で、テスラの他の乗用車モデルのようにコンベンショナルで使い易いデザインでも良かったのではないだろうか? アメリカでの参考価格はこのカリフォルニア在住のオーナーによれば、デュアルモーターのベース価格は8万2335ドル(約1250万円)、オプションを付けては10万1985ドル(約1550万円)だった。イーロン・マスクは2025年からは年間12万5000台のサイバートラックが販売されるだろうと豪語している。 果たして日本市場に投入されるかどうかは不明だが、車両重量は2995kg(AWDの場合、北米参考値)、積載重量は1134kgとなっているため(北米参考値)、日本では普通自動車免許より上位の、準中型以上の免許が必要になる可能性が高い。興味のある方は資金集めと並行して、免許の下調べや全長5m超えの車両感覚に慣れておいたほうがいいかもしれない。 (終わり) |
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