サイドパネルの「エアバンプ」って何?ここのところDSラインばかりが目立っていたシトロエンにとって、久々のCラインの新作となるのが、その名もC4カクタスである。カクタスとはサボテンのことだが果たしてこのクルマ、SUV風に仕立てられたボディのサイドパネルには、確かに棘こそ無いものの見慣れない板チョコのような凸凹の板が付いている。さて、これは一体何なのか。 指で押すと少し凹む、エアバンプと名付けられたこのクッションは、しなやかなサーモプラスチック・ポリウレタンにエアクッションを内蔵したもので、軽微な衝撃に対してクッションの役割を果たし、ボディに傷がつくのを防ぐ。ギチギチに路上駐車を行なうフランスのみならず、スーパーマーケットの狭い駐車場で場所の取り合いになる日本でだって大いに役立つに違いない。単なるデザインではなく、ちゃんとした機能の裏付けがある新アイテムなのだ。 インテリアもチープシックないい感じインテリアもまた違った意味で斬新な仕立てである。計器類はドライバーの目の前のモニターに、そしてオーディオやエアコンなどの操作はセンターのタッチスクリーンモニターに集約されていてボタン類が非常に少なく、プラスチック丸出しのドアパネルの意匠なども素っ気ないほどシンプルなのだ。とは言え簡素一辺倒というわけではなく、ラバーバンドのドアハンドルを使ったり、ツートーンの色の組み合わせに凝るなどして、チープシックというか、何だかいい感じを演出している辺りはさすがと言える。 シンプルなのは見た目だけじゃない。C3などと共通のプラットフォーム1(PF1)を使い、アルミ製のボンネット、サスペンション部品を採用したことや、後席の分割可倒機構の廃止など装備の集約、簡素化などによって、C4カクタスは1.2Lのマニュアルギアボックス車で実に900kg台という軽さを実現している。これは当然、燃費にも走りにも効いてくる。 これぞフランス車のシートクッション室内に入りシートに腰を下ろすと、クッションがクタッと沈み込んで思わず頬が緩んだ。単純だが、これぞフランス車という気分が盛り上がる。 居住空間は十分な広さを確保している。前席は、特に助手席の広さが際立つ。実はC4カクタス、世界で初めて助手席エアバッグを天井に埋め込むことで、前方スペースを大幅に拡大しているのである。後席も、サイドウインドウの立ったフォルムのおかげで左右方向にも余裕たっぷり。但し、ベンチ形状のこちらのクッションは掛け心地も平板だ。 しなやかなサスペンションパワートレインを問わず乗り心地は上々。ソフトなサスペンションがしなやかに動き、しかも適度にコシも感じさせる。姿勢の落ち着き、鋭い入力の丸め具合は絶妙。うねった路面を敢えて選んで走りたくなるぐらい気持ちが良い。こうした乗り味に軽量化の弊害はまったく無く、遮音、制振といった面でも、むしろ静かなクルマと感じるほどだったのは、軽い上にレーザー溶接を採用するなどボディ剛性もしっかり高めているおかげでもあるのだろう。 唯一、ステアリングフィールはお世辞にも良いとは言えなかった。登場初期のEPS(電動パワステ)のようなフリクション感は、要改善である。 1.2Lターボ×5速ETG仕様を導入か?今回、試乗できたのは新世代の3気筒1.2Lユニットのターボ版+5速MT、そして直列4気筒1.6Lディーゼルユニット+2ペダルギアボックスの6速ETGという2種類のパワートレイン。 実は日本導入検討中なのは、1.2Lターボエンジンと5速のETGという組み合わせなのだが、1500rpmという低回転域から205Nmという余裕のトルクを発生し、なおかつ上まですっきり回る爽快なエンジンと、シングルクラッチながらギクシャク感の抑えられたギアボックスのマッチングは悪くなさそうに感じられた。 敢えてゆっくり走りたくなるこの乗り心地にしてもパワートレインにしても、いやそもそも外観や内装からして速く走れと急かされることがまるでなく、むしろ敢えてゆっくり行きたくなるのがC4カクタスというクルマである。誰かと競うとか、一分一秒も無駄にしないとか、そういうのはもういいんじゃない? と言われている感じ。むしろ移動の時間をもっと楽しもうよというメッセージがクルマ全体から発せられているようにすら思わせる。 恥ずかしながら2014年3月のジュネーヴ・モーターショーで発表された時には、最近流行りのSUV風に仕立てたボディに、ちょっと奇抜な意匠を被せて…と勝手に思っていた。けれども実際には、そのパッケージングはコンパクトなサイズで最大限の室内容量を得るためのものだし、余計な装飾を削ったことは軽さに繋がり、更には使い勝手を新鮮なものにもしている。特徴的なエアバンプだって、単なる装飾ではなくれっきとした機能部品なのだというのは最初に記した通りだ。 久しぶりの正統派シトロエン思えばシトロエン2CVだってずいぶん奇抜な姿をしていたが、実は単なるデザインではなく、機能性を追求した結果があのカタチだった。その意味ではC4カクタスは、まさにシトロエンらしさを正当に継承していると言うことができそう。存在感に安っぽさが無いのは、ヘンにしようとしてそうなっているんじゃないからに違いない。 2015年春の日本導入を目指しているこのC4カクタスだが、実はまだ完全決定には至っていないという。本国側の供給体制などいろいろな問題があるようなのだが、いやいやDSばかりでなく、こういうモデルこそ入ってこなければ日本のシトロエンに未来はないだろう。ゼヒ導入が実現するよう願うばかりだ。 ピュアテック 110 S&S 主要スペック全長×全幅×全高=4157mm×1729mm×1480mm |
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