燃費競争が過熱する軽自動車ご存じのように、軽自動車が売れている。2013年の販売台数は過去最高の211万2991台で、対前年比プラス6.7%を記録した。新車販売台数に占める軽自動車のシェアは39.3%というから、今や日本で売れる新車の4割が軽自動車ということになる。 当然ながら自動車メーカー各社はこのマーケットで売り上げを伸ばそうとするから、軽自動車市場は熾烈な競争となっている。室内の広さやデザインなどさまざまなパラメーターがある中で、最重要事項のひとつが燃費だろう。資源エネルギー庁は7月16日に全国19都府県でレギュラーガソリンの店頭価格が170円を超えたと発表したけれど、こうした状況が続けば燃費はさらに重視されるはずだ。 小変更でクラストップの低燃費に軽自動車を取り巻くこうした状況のなかで、三菱eKワゴン/eKカスタムが小変更を受けた。最大のトピックは燃費で、FFモデルは全高1550mm以上の軽トールワゴンクラスでトップとなる30km/L(JC08モード燃費)を実現したという。 全国軽自動車協会連合会の資料によれば、三菱eKワゴンはここ数カ月にわたって売り上げ台数で軽自動車中の11位になっている。燃費向上とともに取り組んだというドライバビリティの改善との合わせ技で、トップ10入りができるか。試乗会でチェックしてみた。 試乗会会場で対面した三菱eKワゴン/eKカスタムは、ぱっと見る限り従来型と見分けがつかない。それもそのはずで、外観の変更はNA(自然吸気)エンジン仕様の吸気ダクトの形状が変わった程度だという。おそらく、新旧2モデルを並べて詳細に違いを探さない限り区別はつかないだろう。外観があまり変わらないことを確認してから、試乗に移る。 乗り心地のよさと安心感走り出してまず感じるのは乗り心地のよさだ。これはマイナーチェンジ前からの三菱eKワゴン/eKカスタムが持つ美点で、4本のサスペンションが巧みに伸びたり縮んだりしながら路面からのショックをやわらげてくれる。 ステアリングホイールからの手応えもいい。タイヤがどこを向いているのか、しっかり伝えてくれる。ハンドリングの良し悪しを問うようなモデルではないことは承知しているけれど、それでも自信を持ってステアリングホイールを切ることができるのは、ビギナーからエキスパートまで安心して運転できることにつながるはずだ。 発進時や再加速のレスポンスがいい30km/LというJC08モード燃費を実現できたのは、三菱が「アシストバッテリー」と呼ぶニッケル水素電池の働きによる。まず、減速時の運動エネルギーを利用して発電を行う回生ブレーキが作動する。次に、ここで生まれた電力をアシストバッテリーに蓄える。このバッテリーから電装品に電力を供給することで、エンジンを発電のために使う頻度が下がる。結果として、燃費が向上することになる。 ただし、市街地での短時間の試乗だったので燃費は計測できなかった。燃費よりも印象的だったのは、信号停止からの発進加速や、減速してから再加速するような場面でのレスポンスがよくなったことだ。 三菱のエンジニアたちに確認すると、マイナーチェンジ前のモデルはユーザーから「加速が物足りない」「アクセルペダルの操作に対するレスポンスが緩慢」という指摘を受けていたのだという。特に、真夏のエアコン作動時の加速とレスポンスに不満が多かったという。そこで、CVT(無段変速機)のセッティングを見直すことで加速に対する不満を解消し、しっかりした走りを実現したのだという。 動的な質感が向上上空が薄い雲に覆われた試乗日は、直射日光を浴びずに済んだものの気温、湿度とも高く、エアコンはほぼフル稼働だ。したがって、エアコンを作動させるコンプレッサーはエンジンにかなりの負荷をかけていたはずだ。 それなのに、発進加速でも40km/h程度からの中間加速でも、かったるさを感じる場面はなかった。エンジニアたちは「市街地でのドライバビリティ向上のためにCVTのギア比などを見直した」と語っていたけれど、そうした目的はクリアできていると感じた。CVTなどのセッティング変更によって、三菱eKワゴン/eKカスタムの動的な質感は向上している。 厳しい目によって進化する軽自動車ここで冒頭の「軽自動車が売れている」という話に戻る。新車の4割が軽自動車ということが何を意味するかと言えば、いままでコンパクトカーに乗っていたユーザーたちが、ダウンサイジングで軽自動車に移行しつつあるということだ。つまり、生まれて初めて軽自動車を所有する人が増えている。 小変更前の三菱eKワゴン/eKカスタムの加速性能に不満の声が多かったというのも、こうした理由があるのかもしれない。丁寧に作ったつもりでも、リッターカーなどに比べたらどうしても動力性能で見劣りがする。けれども今回、改良を施したことで不満のない走りを手に入れることができた。乗り心地のよさやシートアレンジの使いやすさ、スペースの余裕、取り回しのよさはそのままに、「燃費」と「走り」が充実した。 発表後に少しずつ車を熟成させていくこのような姿勢は、好ましく感じた。それにしても、ユーザーからの厳しい目で軽自動車はどんどん洗練されている。作る側は大変だろうけれど、ユーザーとしては嬉しい進歩だ。 eKワゴン G 主要スペック全長×全幅×全高=3395mm×1475mm×1620mm |
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