ワゴンの積載力とオフロード走破性をもつ初のクロスオーバー2018年のジュネーブモーターショーにコンセプトカーとして登場したポルシェの電気自動車クロスオーバーワゴン「ミッションE クロスツーリスモ」の市販車が、いよいよ3月4日(欧州現地時間、日本時間の3月5日の深夜0:30)に発表される。正式名称は「タイカン クロスツーリスモ」で、「タイカン」の派生モデルである。 このニューモデルはタイカンのセダンボディ後半を「パナメーラ スポーツツーリスモ」のハッチバックボディと置き換えたシューティングブレーク風のスタイルをもち、ワゴンのような積載能力と、高めの地上高によるある程度のオフロード走行を可能にしている。これまでポルシェのカタログには登場しなかった、文字通りのクロスオーバーモデルなのだ。 3月4日の正式発表を前に、ポルシェはプロトタイプに試乗するチャンスを与えてくれた。わたしの試乗するクルマは電気エネルギー消費量チェックのためのテスト車で、R&Dがプレス向けに用意してくれたものだ。 プラットフォームやドライブトレーン、EVアーキテクチャーはタイカンと共通。フロントはセダンボディのタイカンとまったく同じで、正確にBはピラーから後半が変わっていて、ルーフ(ガラスルーフはオプション)が後方まで水平に延び、リアドアは同じだが、ガラス面積はルーフに合わせてやや高く広がっている。リアのオーバーフェンダーは大きく張り出しながらテールゲートへと続いている。 同行したエンジニアによれば、大きな開口部をもつワゴンボディの剛性が失われないように、Cピラー~ルーフ~トランクフロアを一周する環状の補強材が入っているそうだ。 良好な乗り心地。GTとクロスオーバーの魅力を併せもつ乗り込む直前に気付いたのだが、クロスツーリスモに標準装着されているエアサスペンションはタイカンよりもデフォルトで20mm高く設定されているのに、トレッドが広げられているせいか、視覚的には安定感が増して見える。(クロスオーバーではあるが)オフローダーっぽさを強調するためにホイルアーチエクステンション、ルーフバーが備わり、オプションでは21インチのホイールも用意される。トレッド拡大に対応してホイールベアリングも強化されているそうだ。 オプションのオフロードパッケージでは車高をさらに10mm高めたシャシーも用意される。ここまで背が高くなっても空力特性は一般的なワゴンより低いCd=0.26を維持しているという。 運転席からの景色はタイカンと同じで、ドライビングポジションも思ったほど高くは感じず、足を伸ばせるフラットな床と、ほぼ垂直なステアリングホイールの位置関係で、スポーツカーらしい感覚がある。一方、後席は高くなったドア開口部のお陰で乗降性がタイカンよりも優れ、ヘッドルームもセダン比で+36mmが確保され、居住性が向上している。トランクルーム容量の正確な数字は語られなかったが、タイカンの366Lよりは大きいはずだ。フロントの81Lのトランクに変化はない。 原稿執筆時点ではポルシェは細かなスペックやラインアップを発表していないが、日本向けにはまず「4S」、「ターボ」、「ターボS」という基本グレードを提供するに違いない。ドライブトレーンは前述したようにタイカンと共通で、前後に備わるモーターに2速ギアを組み合わせた4WDとなり、水冷式リチウムイオン電池がフロア下に配置される。 テスト車は「ターボS」で、オーバーブースト時には最大560kW(760PS)と1050Nmを発生。2.3トンを超える空車重量にも関わらず、静けさの中から無限のようなパワーで加速してみせた。正確な数字ではないが、0-100km/h加速はセダンのターボよりも0.2秒速い3.0秒と予想されている(セダンのターボSは2.8秒)。直線ならハイパーカーとも互角に張り合えるだろう。ステアリングホイール背後から突き出たパドルは2段階でエネルギー回生を調整する。 走行時は最初、電気モーターの笛のような高い音、その直後にタイヤノイズがキャビンに充満する。そこでサウンドシンセサイザーをオンにすると、不思議な静けさに包まれる。新体験のポルシェの世界だ。 まだ正確に発表されていないが、航続距離はタイカン(383~452km)と大きくは変わらないと同行のエンジニアは語った。また、欧州ではセダン同様に800V、270kWの超高圧充電システムを使って23分未満で充電が可能だという。 セダンボディのタイカンと比較すると乗り心地が良くなっているのは、高めのサスペンションによって不正路面からの吸収に対してコンプライアンスが取れているからであると説明された。一方で、起伏のあるカントリーロードでスピードを上げても締め上げられたシャシーはしっかりと路面をつかんでいた。 およそ3時間弱のテストでは、「タイカン クロスツーリスモ」を知るには到底足りないが、ターボSグレードの印象から単なるライフスタイル狙いのマーケッティングの産物でないことは確信できた。タイカンのもつ優れたGT性能に、クロスツーリスモがもつスポーツワゴンの実用性とオフロードサスペンションの走破性という魅力が加わった存在になっているのだ。 レポート:グレッグ ケーブル(Greg Kable/Kimura Office) ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 |
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