北米でマツダ3に設定されたのと同じ2.5Lターボを搭載2020年のアメリカにおけるマツダの年間総販売台数は27万9076台で、コロナ禍にも関わらず2019年と比べて0.2%の増加となった。この牽引役となったのはクロスオーバーSUVで、「CX-3」「CX-30」「CX-5」「CX-9」の合計で前年比11%増の22万0457台が販売され、内訳ではCX-5(14万6420台)に次いでCX-30(3万8064台)が続いている。 元々北米で販売されているコンパクトクロスオーバーSUVにはCX-30のようにスタイリッシュでプレミアムなクルマは少なく、マツダは良いところを突いたと言えよう。ただし、マツダは他の日本メーカー、例えば約61万台を販売したスバルと比べてみると販売台数は半分にも届かない。一方、ヨーロッパ、特にドイツではマツダは2020年に4万4346台を販売、スバルは5407台と立場は逆転する。アメリカでも大人気の「マツダ ロードスター」の存在がありながら、そのブランド力が販売台数に結びつかないのはなぜだろうか? そんな疑問を感じながら今回のインプレッションが始まった。 CX-30の全長は4395mmと、コンパクトSUVの中ではやや長いが、高さは1540mmと低く、シルエットはスポーティな印象を受ける。プレスラインやメッキなど加飾を抑えた外装デザインは高品質かつヨーロッパ調で、数なくとも私は好感を持った。 「CX-30 2.5 ターボ」に搭載されるエンジンは「マツダ3 2.5ターボ」にも搭載される2.5L直列4気筒で、93オクタン以上で最高出力250PSと最大トルク434Nm、87オクタンでは227PSと420Nmを発生する。これはアメリカのカントリーサイドの給油所では必ずしもハイオクが用意されているとは限らないことに起因する処置、あるいは、最初からレギュラーしか給油しないオーナーの存在も考慮しているのかもしれない。トランスミッションは6速ATで4輪を駆動、最高速度は約203km/hでリミッターが介入する。 試乗車は最高グレードの「プレミアム プラス パッケージ」で、渋滞アシストや360度モニターなどのドライバーアシストが装備されている。 ホールド感も掛け心地も良好なシートに腰を下ろし、周囲を見回すがわずかに高くなった良好なドライビングポジション以外に、マツダ3とキャビン周りの大きな変化はない。駐車場を出て、狭いドライブウェイを通過する時には360度のサラウンドビューは非常に便利だった。ただ、リバースギアからDレンジを選択して前進する時に、自動的にフロントカメラに切り替わらなかったのはちょっと意外だった。北米マツダのエンジニアは「勝手に切り替わってしまうのはまぎわらしい! と言う意見があったから変更した」と説明があったが、他のメーカー(特にドイツ系)のほとんどが自動的に切り替わるシステムを採用しているのだから、ここは追従してほしいところだ。 パワフルなコンパクトSUV。価格とブランド力に課題2.5リッターターボは以前テストしたマツダ3と同じ印象で、2000rpm以下ではややトルク不足だが、3000rpmを超えたあたりからパワーを感じ、6000rpm近くまでスムーズに力強い加速を持続する。CX-30は空車重量1590kgとおよそ150kg増加しているが、スロットルに対する加速感の差はあまり感じない。 法定最高70mph(112km/h)のハイウェイでは十分なパワーを堪能する。この速度での乗り心地はフラットで快適、追い越し時のパワーも十分で、車線変更の挙動も安定しており、キャビンも静かで、コンパクトながら快適な移動空間が提供される。追い越し車線に飛び出してくる遅い車に出くわしたとしても、高速からのブレーキ性能も問題はない。 ハイウェイを降りて一般道路に入ると、路面の悪い道路で35マイル(50~60km/h)でのダンパーの応答性がやや不足気味で、スムーズさに欠けるのが気になった。ステアフィールはコラム式のEPSで、切りはじめのラバー感覚以外は問題なく、クリアな操舵性と路面インフォメーションが確保されている。コーナーではロールも少なく、ターンインもターンアウトも手首のわずかな動きでスポーティなドライブを気持ちよく楽しめた。 3ヶ月ほど前にマツダ3 2.5ターボを試乗した時に、“ターボ”というキーワードにスポーツ性を期待しすぎて、ちょっと肩透かしを食らった。しかし今回、CX-30で400kmほど走った印象は、意のままに取り回しができるパワフルなコンパクトSUVとして十分に魅力のあるというものだった。ただし北米市場でおよそ6000ドル(約65万円)の追加料金は、エクストラ装備を考えるとやや高い価格設定のような気がする。※北米での価格は2万9900ドル~3万3900ドル(約324~367万円)。 さて、冒頭に述べたマツダの北米市場での不振の要因だが、このテスト期間では十分な答えを引き出すことができなかった。しいて言えばリモコンキーの側面にある小さすぎるスイッチのデザインに象徴されるように、全体的に日常使い倒す道具としてのロバスト性(外乱に影響されにくい性能)が欠けているような気がする。 また、私の住む中西部ではマツダ専売の販売網がないことも問題かもしれない。というのはオハイオ州のコロンバスではスバル、ヒュンダイ、マツダを同じディーラーが扱っており、TVコマーシャルも同じ人が登場してスバルとマツダを勧めている。販売台数を考えると仕方がないと思うが、ここにもブランディングの問題があるかと思う。とくにスバルとまったく異なるヨーロピアン路線を走るマツダにとっては辛い現状である。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 |
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