インフォテインメントや先進アシスト機能も最新レベルにメルセデス・ベンツのアッパーミドルセグメントを担当する「Eクラス」は、戦後のW114以来同社の屋台骨を支える重要なモデルで、1993年のW124からEクラスと命名されている。現行モデル(W213)は2016年に登場しているが、このモデルからはセダン、ワゴン(Tモデル)、クーペ、カブリオレに加えてオールテレインと呼ばれる「アウディ オールロードクワトロ」のようなクロスオーバーワゴンが加わり、昨年までの4年間に120万台が販売されている。 そして4年目に入った今年、アップグレードが行われた。メルセデス・ベンツはこうしたフェイスリフトのことを社内では「MOP」と呼ぶ。別に掃除用具ではなく、ドイツで「モデルメインテナンス (Model Pflege)」を意味する。 今回のMOPのテーマは、まずデザイン上でCクラスとの差別化を明確にすること、そしてこれまでAクラスから始まったインフォテイメント「MBUX」、さらにADASの最新レベルへのアップグレードなどが挙げられている。もうひとつ、これまで存在していたベース仕様がキャンセルされ、トリムはアバンギャルド、エクスクルーシブ、AMGラインの3種類となった。 前述のようにEクラスにはバリエーションが多く、今回の試乗会には「オールテレイン」が欠席していたが、それでも一日4台を試乗する大忙しのテストデイとなった。 E300eセダンで先進アシスト系インターフェースの進化を実感今回のフェイスリフトにおけるテーマはCクラスとのデザインにおける差別化で、最もはっきりした変化が見られたのがこのセダンである。試乗した「E300e」はアバンギャルド仕様で、まずスリーポインテッドスターを中央に配した底辺が広いAシェイプ状のダイヤモンドグリルはやや大型化され、その左右に位置するヘッドライトはCクラスの胚芽をとった米粒のような形ではなく、細長いアーモンドアイ型になった。またこのモデルからLEDが標準仕様になった。 同時にボンネットには2本のパワーバルジが設けられ、フロントスカートはAMGパフォーマンスモデルのような2本のエアスプリッター風のバーをもつデザインになった。リアコンビネーションライトも横に細長くなり、内側はトランクリッドにまで入り込んでいる。Cクラスとはっきりした区別をつけるのがデザインの意図だが、それは確かに成功している。 搭載されるパワープラントは155kW(211ps)と400Nmの2リッター4気筒ターボ(M654)と90kW(122ps)と440Nmの電気モーターの組み合わせでシステム出力225kW(306ps)と700Nmを発生、標準仕様の9速ATで0-100km/hは5.7秒、最高速度は250km/hでリミッターが入る。またEV航続距離はWLTPで49~53kmとなっている。 インテリアは最新のMBUXが採用され、私の前にはオプションの12.3インチモニターが2枚並んだワイドスクリーンが広がる(標準は10.25インチ2枚)。左右の水平スポークが上下2本に分かれたスーパースポーツステアリングホイール(オプション)は、これまで幅広のスポークに並んだタッチ&スライドパッドが使い難いというサーベイの結果、これを上下に分けることで誤操作を防ぎ、インテュイティブ(直感的)な操作を可能にしている。 最初、見た目ではかえって煩雑になったような印象だったが、確かに操作性は上がっていた。ステアリングリムにはタッチセンサーが内蔵されており、ディストロニック(ACC)作動中の手離しを一層緻密に監視、警告をする。すなわち、これまでのシステムではステアリングホイールのリム部分を握っていなければならなかったが、新型Eクラスは手を添えているだけで自動追従走行が続く。 Eクラスセダンは日本向けには、このE300e PHEVに加えて200のガソリン~220dのディーゼル、そしてE63S AMGまで9種類のパワートレーンが用意されるということだ。 ワゴン、クーペ、カブリオレにも試乗E300de PHEV 4マチックワゴン ワゴンはフロントヘッドライトがセダンと同様に変わっているが、メッシュグリルではその差はあまり目立たない。このグリルが気に入らないオーナーはセダンと同じように差額なしでセンターにスリーポインテッドスターを配した「アバンギャルド」仕様を選択できるようになっている。 一方、リアは現行モデルと同じデザインのテールランプが流用されている。パワートレーンは143kW(194ps)の4気筒ディーゼルと90kW(122ps)の電気モーターによるハイブリッドで、システム出力は225kW(306ps)と700Nmを発生。0-100km/hは6秒、最高速度は230km/h、EV航続距離はWLTPで46~49kmとなる。Tモデルには「E200」から「E63 S AMG」まで7種類のパワープラントが選択可。搭載される電池のためにトランク容量は480~1660リッターと最大で160リッター少ないがそれでも実用には十分の広さだ。 E400 d 4マチック クーペ クーペは「E200」「 E300」「E450 4 マチック」「E53 AMG 4マチック」の4種類が用意されるが、試乗車「E400 d」のエンジンは3リッター直列6気筒ディーゼルで243kW(330ps)と700Nmを発生する。エミッションレベルは最新のEURO 6d-ISC-FCMをクリア。0-100km/hは5.3秒、最高速度は250km/hでリミッター制御される。 E450 4マチック カブリオレ Sクラスカブリオレの生産販売が中止になるので、今後入手可能な4シーターオープンモデルはこのEクラスだけになる貴重な存在。搭載されるエンジンは270kW(370ps)を発生する3リッター直列6気筒、16kW(22ps)のISGによるマイルドハイブリッドで、アイドリングストップからの再スタートやコースティング時のエンジン・オンオフのスムースさなど、ドライバビリティが向上している。豪華なインテリアを包むのはアコースティックキャンバストップ(幌)で、耐候性だけでなく静粛性はクーペよりも上と言われている。日本向けにはクーペと同じ4種類のパワートレーンが搭載されるようだ。 海外仕様のMBUXは音声入力の理解度が高まった今度のEクラスはこのフェイスリフトを機に最新のMBUX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)が搭載された。とりわけ海外仕様では音声入力の理解度が高まったのが嬉しかった。また、マルチパーパスステアリングホイールはスライド機能が加わって確実な操作が可能になっている。パワープラントに関しては48VマイルドハイブリッドやPHEV、EQパワーによる電動化が着々と進められている。 またADAS(先進アシスト機能)はさらに進化しており、前述のタッチセンサー付きのステアリングホイールの他、ディストロニック(ACC)はマップベースの速度制限に対応、死角センサーには降車時にドアを開いた時に後方から迫ってくるクルマを感知、警告する機能が加わるなど様々なアップグレードが行われている。 懸案であったCクラスとのデザイン上の差別化にも成功し、アッパーミドルセグメントとしてのEクラスのステータスも再確立された。4年後のニューモデル登場まで、アッパーミドルクラスにおけるEクラスの魅力は間違いなく守られるだろう。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 |
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