販売不振にあえぐ「売れないEQC」の汚名返上できるか?「電動化に乗り遅れまい!」「エレクトリックファースト!」とのスローガンで2018年に発表、その年の暮れから販売が予定されていたメルセデス・ベンツの本格的BEV(電池電気自動車)の「EQC」だが、その売れ行きは芳しくない。理由は生産の遅れで、2019年9月にドイツ市場でようやく発売、しかし11月の登録台数はわずか19台だった。同じ月にテスラは280台、ほぼ同じ時期に販売スタートしたジャーマンプレミアム、アウディ「e-tron」は192台だった。 結局2019年のトータル販売台数は397台、さらにドイツ運輸省の数字によれば2020年に入っても5ヶ月(正確には5月28日まで)で276台しか登録されていない。 さて、ここまでが前置き。 メルセデス・ベンツはこの問題児「EQC」に続いて「EQA」を発表した。「EQA 250」はモデル名が示すようにAセグメントのBEVバージョンだが、そのスタイルはセダンではなくクロスオーバーSUVである。フロントデザインはEQCのようにLEDライトがグリルを取り囲むEQファミリーだが、プロポーションはEQCのような中途半端なものではなく、GLAに近い。 サイズは全長4463×全幅1834×全高1620mm、ホイールベース2729mmでGLAよりは一回り大きく、同じカテゴリーでは「VW ID.4」に近い。 メルセデス・ベンツのデザイナーはこのEQAで空力特性の向上に特に力を注いだ。もちろん空気抵抗を減らして航続距離を伸ばすのが最も大きな狙いである。その結果、前面投影面積は2.47平方メートル、Cd値は0.28となった。これはほぼ完全に塞がれたフロント、そしてアンダーフロア、さらにエアロデザインの専用ホイールなどが挙げられる。 一方、インテリアはAIサポートによる音声操作で先陣を切ったMB UX(メルセデス・ベンツ ユーザーエクスペリエンス)を搭載、インターフェースは7インチ(17.78cm)のディスプレイが2枚、あるいは10.25インチ(26cm)が2枚の2種類が用意される。 駆動システムはフロントに搭載された140kW(190ps)と375Nmの出力を持った電気モーターで前輪を駆動する。ダイナミック性能は0-100km/hは8.9秒、最高速度はリミッターで160km/hにとどまる。この性能をもたらす電池エネルギー容量はネットで66.5kWh、NEDCによる電費(コンバイン)は15.7kWh/100km、航続距離は486kmと発表されている。また充電時間はウォールボックスあるいは公共充電器では5時間45分、DC充電では30分で80%まで充電が可能である。 ドイツでは補助金が狙える価格で登場。EQBやEQSもスタンバイここまでが1月20日のワークショップで発表されたEQAのスペックだが、メルセデス・ベンツはさらに我々にプロトタイプを試乗するチャンスを与えてくれた。 すでに量産モデルの詳細は発表されているのだが、メルセデス・ベンツ博物館前で待っていた我々のところへやってきたEQAは実際に発表前から公道テストに使用されていたモデルで、前後に軽いカムフラージュが与えられていた。20cmのロードクリアランスをもったEQAは高いドライビングポジション、しかも全長が短く街中での取り回しは非常に楽だ。さらに素早い加速とクイックなステアリングでスイスイと機敏に動き回れる。 ドライブモードは「エコ」「ノーマル」「スポーツ」でドライブペダルに対して相応の反応をするが、スポーツでも加速はジェントルである。またステアリングホイール背後のパドルで回生力を5段階に調整することができ、最強ではほぼワンペダル・ドライブが可能だった。また最弱では低速でのコースティングを可能にしている。 やや気になったのはシャーシ・セッティングが快適志向で、しかも装備重量で2トンを超えているのでやや大きめな凸凹のある路面を通過するとボディが揺すられることがあった。ただしシャーシの最終セッティングは終わっていないので量産車では解決されるだろう。 EQAの製造はドイツのラシュタット工場で行われ、間も無くデリバリーが開始される。今回紹介したEQA 250のベースモデルは4万7540.5ユーロ(19%の付加価値税込:約600万円)と非常に政治的な価格である。と言うのは税引きで3万995ユーロ(約500万円)と、ドイツ政府のインセンティブ(補助金)の6000ユーロ(約75万円)、製造者のメルセデス・ベンツから支給される3000ユーロ(約38万円)を取得できるギリギリの4万ユーロ(約500万円)を下回っているのだ。この結果、EQA250は3万8540.5ユーロ(約487万円)で購入可能となる。 ところでメルセデス・ベンツが計画している第二次BEV攻勢はまだ始まったばかりで、EQAには電気モーターをリアに搭載した4WDバージョンが追加され、続いて「EQB」が、そしてハイエンドの「EQS」が間も無く登場する予定である。日本での発売時時期はまだ発表されていない。 レポート:Alex Ostern (アレックス・オーステルン)/Kimura Office ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 参考スペック【 EQA 250 】 |
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