補助金廃止への不安から欧州ではEVの駆け込み需要が発生中今年、四半期のドイツ自動車市場は新型コロナの影響で前年同期のマイナス20.3%、もっとも深刻だった3月単月では前年のマイナス37.7%であった。その直接の理由はディーラーのほとんどがショールームを閉じ営業活動を行わなかった事、またそれ以上に人々が車を購入する前にやらなければならない事、すなわち感染防止対策への生活防衛に走ったからである。もちろん通勤や通学などの移動を自主規制したことも自動車への関わりを減少させた。 ところが、こうした状況でプラスに転じた車種がある。電気自動車(BEV)だ。その理由は明らかで「まだインセンティブ(政府からの補助金)が使えるうちに買っておこう!」ということである。つまりコロナによって引き起こされるかもしれない不況で、政府が補助金の減額や廃止を行うかもしれないという不安もあって、BEVへ人々が殺到したというわけである。そんなわけで3月のBEV登録台数は1万329台、前年同月のプラス56.1%で、なんと全体の4.4%へと躍進した。中でも比較的廉価な「VW eゴルフ」や「VW e-up!」の躍進が目立った。一方、プレミアムBEVでは相変わらず「テスラ モデル S」が2034台とダントツだが、「アウディ e-tron」も721台と健闘している。 こうした状況下でアウディはe-tronにスポーツバックを追加した。外誌ではこのスポーツバックをSUVクーペと定義しているが、私はこれまでSUVと呼ばれていたボディタイプはワゴンで、現在クーペと呼ばれている「BMW X6」や「メルセデス・ベンツ GLC クーペ」などのモデル群はセダンであると思う。故にアウディが敢えてe-tronのボディを「スポーツバック」と名付けたのは正しいような気がする。 このスポーツバックのサイズは全長約4.9m×全幅約1.94 m×全高約1.62 m、ホイールベース約2.93mとスタンダードボディと同一である。要するにルーフの後端がなだらかに後方へ落ち込んでいるだけで室内空間サイズはこれまでのe-tronと変わらない。つまり後席は大人2人、ないし子供3人が十分にドライブを楽しむことができる。トランクルームもバックレストを起こした状態で615L、倒した時でも1655 Lとスタンダードe-tronよりもそれぞれ45 L、あるいは70 Lの差しかないのでふだんの実用性は問題ないレベルである。 最大の魅力は斜め後ろから見たデザインテストした55クワトロのパワートレーンは前後のアクスルにフランジされる2基の電気モーターで、システム出力が265kW(360ps)、最大トルクが561Nmである。2.5トンの5ドアハッチバックボディを0-100km/h=6.6秒で加速、最高速度はリミッターで200km/hに留まる。また6秒間のブーストモードでは最大で300kW(408ps)と664Nmを発生、0-100km/hは5.7秒に縮まる。 搭載されるリチウムイオン電池の使用エネルギー容量は95kWhで、カタログ上の航続距離はWLTPで436kmと記されている。アウディによればスポーツバックの空力特性はCd=0.25へと低減され、同時に駆動系イナーシャの改善によって同じスペックのe-tron比でプラス37kmのエクストラ航続距離が得られたと言う。また150kWまでの直流高速充電を利用すれば30分で80%の充電が可能である。 運転席に座るとe-tronスタンダードと全く同じバーチャルコックピット、そしてダッシュボード中央にはタッチスクリーンが広がる。インテリア全体はアウディらしい高品質で人間工学に基づいたデザインが好印象だ。コンソールのドライブレバーでDをセレクトし、電気モーター特有の加速感とシンクロしながら、アウディのインゴルデュタット本社から市内を抜け、アウトバーンを目指す。テスト車は未だ255/50R20サイズのウィンタータイヤを履いており、スポーツシャーシにも関わらず乗り心地は特にソフトで快適であった。もちろん、コーナーでプッシュすると前輪はたやすくアンダー傾向を示すが、軽いステリングシステムを通してドライバーの手に伝わる路面からのインフォメーションはダイレクトで、コントロールは簡単である。 スタイルからわかるように後方に落とし込まれたルーフとCピラーによって斜め後方の視界が遮られるが、後方死角ウォーニングやカメラがあれば問題はない。 このe-tronスポーツバック の魅力はなんといってもデザインである。特に斜め後ろからの眺めは非常に美しく、オーナーはこの瞬間をいつも楽しむ事ができるだけでその価値を見出すだろう。このスタイリッシュでありながら実用性は失っていないe-tronスポーツバックのドイツでの価格は、ベース仕様で7万1350ユーロ(約830万円)、6万9900ユーロ(約810万円)のスタンダードボディよりも1450ユーロ(約17万円)高い(いずれも19%の付加価値税込み)。現時点で日本での発売時期や価格はまだ決まっていない。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 スペック全長×全幅×全高=4901×1935×1616mm |
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