サーキットや峠をブガッティで飛ばす富豪のためのスポーツ仕様「ヴェイロン」の後継モデルとして2016年に登場したブガッティ「シロン」は同社のコーチビルダー戦略に則って、これまでに「シロン スポーツ」、「ディーヴォ」、「ラ ヴォワチュール ノワール」、「チェントディエチ」などの個性豊かなバリエーションが誕生している。社長のステファン・ヴィンケルマンは公道やサーキットを楽しみたいユーザー向けに「シロン ピュール スポール」を追加、ジュネーブショーでデビューさせる予定だったが、残念ながら新型コロナのパンデミックでワールドプレミアは果たせなかった。 今回、ドイツ中部のプライベートサーキットでの同乗試乗会に少数のジャーナリストを招待、改めてその全容を公開したのである。 一般にはブガッティのリッチなオーナーはプライベートミュージアム用に購入、仕舞い込んで滅多に公道へは出てこないと言う印象がある。しかし社長のヴィンケルマンによれば実際にサーキットや峠道でスポーツドライブを楽しみたいアクティブなドライバーがいるというのだ。そこで開発されたのがこの「ピュール スポール」である。開発コンセプトは究極のコーナリングマシーンである。ダウンフォースを得るためにフロントにはエアスプリッター、リアには1.9m幅の巨大なカーボン製リアウィングが装着されている。ボディは50kg軽量化され、シャーシは低く固められている。 タイヤは新たに開発されたミシュラン スポーツ カップ 2R(前285/30 R20、後355/25 R21)で2.5度のキャスター角で装着、ロードホールディングの向上を狙っている。一方8L W16気筒クアッドターボの1500psの最高出力と1600Nmの最大トルクの変更はない。ただしプログラムの変更でフレキシビリティを向上させ、前後のファイナルギア比変わらないが7速ギアは全て18%落とされている。その結果60-120km/hの中間加速時間は6速で2秒も速くなった。また0-100km/hは2.4秒、200km/hまでは5.9秒と短縮され、代わりに最高速度は420km/hから350km/hへとダウンしている。 生産台数は世界で60台。日本に入ってくる可能性は?さて、冒頭に述べた同乗試乗会の報告に移ろう。このピュール スポールは現在、最終的な開発段階に入っているが、ブガッティはプロトタイプをドイツ中部にあるビルスターベルグサーキット、全長4.2kmのテクニカルコースに運び込んだ。 セーフティレクチャーを受けてコースインする。5点式シートベルトに締め上げられた私は緊張の頂点に達しながらテストドライバーのスヴェン・ボーンホルストに身を任せる。このコースは9か所の右コーナー、10か所の左コーナー、そして40か所以上のアップダウンがあるテクニカルコースである。最初の周回はタイヤのウォームアップ、それでも結構なペースだが、続く本格的なデモンストレーションランでは身体に掛かる前後左右からのGフォースとの戦いであった。特にパワーウエイトレシオ1.18kg/psという加速は圧巻で、まさに一昔前のF1の世界を体験したことになる。わずか5周、時間にしてせいぜい20分だったがブガッティのハイパーパフォーマンスを身体で感じた素晴らしい体験であった。 このピュール スポールは60台が生産されるが、5月8日の時点ではまだ完売してはいない。ベースになったシロンはこれまで260台が販売され、その内およそ10台が日本へ出荷されているので、日本上陸の可能性は大いにある。果たして箱根を疾走するハイパーコーナリングマシンの姿を私たちは見る事ができるだろうか? |
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