0-100は3.4秒の俊足、航続距離は420km、最高速度は160km/h専用プラットフォーム「MEB(モジュラー エレクトリック ツールキット)」をベースにしたフォルクスワーゲンの本格的な電気自動車「ID.3」がようやく一般ユーザーに向けてデリバリーされる。昨年秋に開催されたフランクフルトモーターショーで量産タイプが発表されてから9ヶ月が過ぎたが、最終段階でソフトウエアの不具合から出荷が4週間ほど遅れていたのだ。 そして今回、先行予約を入れたユーザーの元に届けられるファーストエディションと名付けられたモデルに、限られたジャーナリストが試乗できたのである。しかし、まだ公道ではなくフォルクスワーゲン社内のテストコースでの試乗となった。 このファーストエディションと呼ばれるモデルは「ファースト」「ファースト プラス」「ファースト マックス」の3グレードがあり、価格は3万9995ユーロ(約485万円)、4万5995ユーロ(約557万円)、4万99995ユーロ(約605万円)と公表されている。ドイツではこれに4000ユーロ(約48万円)の購入補助金が支給されるので、最終的にはおよそ同レベルのゴルフ8(ただし1.5リッター、150PS)に匹敵する価格となる。 ファーストエディションは3台ともに58kWhの電池を搭載、リアアクスルにマウントされた150kW/210PS、310Nmを発生する電気モーターで後輪を駆動する。そしておよそ1.6トンのボディを0-60km/hまでを3.4秒、最高速度は160km/hに到達、航続距離は420kmと発表されている。 ところでこの3台の違いは、ナビを始めとするインフォテインメント性能や、LEDマトリックスヘッドライト、バックアップカメラなどADAS(先進運転支援システム)といった装備の差である。わかりやすいのがタイヤで、18インチ、19インチ、そして20インチと順番に大きくなっていく。ただし後でも述べるが、20インチはノイズなどの面でお勧めできない。 量産モデルとはいってもエクステリアデザインはもう半年以上前のフランクフルトモーターショーから見慣れているので新鮮さはない。ただし、すっきりしたワンモーションデザインはシンプルで古さを感じさせない時代を超えたものだ。インテリアはテスラのようにUIをタブレット一枚に割り切っておらず、スイッチは残され、クラシックとモダンの中間という印象だ。 一方、内装には叩くとポコポコと安っぽい音がするハードプラスチックが多用されており、テスラを買うような人はともかく、伝統的なVWのお客さんは失望するだろう。サテライトスイッチなど新しい操作系はタブレット一枚のテスラよりはわかりやすい。 専用プラットフォームならではの広々としたキャビンが〇走行フィールは60km/hくらいまでのキビキビした感じを除いて、電気自動車というよりも普通の内燃機関搭載車に近い。例えば「BMW i3」などで経験したワンペダルドライブ、すなわちブレーキぺダルを使わない走り方はID.3では期待できない。回生力が強いBモードでも強い減速は起こらない。 逆に通常のドライビングモードではアクセルペダルを離すと、抵抗なくどこまでも転がって行く感じだ。一方、操縦性は床下に収納されたバッテリーのおかげで低重心となり、ロールの少ない安定したロードホールディングを示す。コーナリングでは一般的な弱アンダーを示すが、リアモーター×リア駆動のおかげでトルクステアから解放されたステアリングフィールがすっきりと路面感覚を伝えてくれる。気になったのは20インチタイヤを装着したテスト車で、ゴツゴツ感とノイズがキャビンに侵入する。 「アウディ e-tron」や「メルセデス・ベンツ EQC」のように、既存のプラットフォームを使った、これまでの電気自動車(BEV)と比べて好ましいのは、広々としたキャビンである。四隅に車輪を配置して床に電池を収納するID.3の専用プラットフォーム=MEBはこの点で理にかなっている。専用プラットフォームをもっているにも関わらず、賢い空間利用を考えていないテスラは、やはりアメリカ的な考え方なのかもしれない。 ID.3の販売はまず、このファーストエディションのデリバリーから始まって、順次一般ユーザーへと広がっていくはずだ。まだアップデートが必要な状態で、設計されたソフトウエアが計画通りにインストールされるのに9月までかかるそうである。すなわちファーストエディションを現時点で購入したオーナーに対しては、OTA(オーバー・ジ・エアー:オンラインのこと)でアップデートが行われる予定である。 ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります。 スペック【 ID.3 】 |
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