ドイツのプレミアムブランドはテスラを甘く見ていたここに来てドイツの自動車メーカーが電気自動車の開発と販売を急いでいる。それはテスラを甘く見ていて、高額電気自動車の開発を怠けていたからだ。彼らは電気自動車はシティ・コミューターだと軽んじていたのだ。 さらにもう一つは、2021年から強化される二酸化炭素排出量規制に際して、せっかくCO2排出量の少ないディーゼルを持っていたにも関わらず、不正ソフト問題を起こし、そのイメージを悪化させ、自分の首を絞めた結果でもある。 ローカルエミッション・ゼロのBEV(電気自動車) は技術的にもハイブリッドほど複雑ではなく、現状打破の最有力手段だ。そこで昨年末から今年にかけて登場したのがアウディ「e-tron 55 クワトロ」、そして、今回試乗したメルセデス・ベンツ「EQC400 4マチック」である。「EQ」は「エレクトリック・インテリジェンス」を意味し、「C」はセグメントを表す。EQCの後にはEQA、EQBそして、さらにはEQEやEQSが控えているとも言える。それに続く数字は、これまでの排気量に代わる性能の目安であり、EQC300、あるいはEQC500が登場する可能性がある。 さて、このEQC400の試乗会会場に選ばれたノルウェーは、電気自動車の登録が3台に1台、首都オスロでは40%を占め、例えばテスラはカリフォルニアよりも頻繁に見かけるほどだ。この国では電気自動車の補助金が豊富で、例えば自動車税も払う必要がない。BEVの方が内燃機関のクルマよりも安かったりする。つまりEQブランドにとって非常に都合がいい市場なのだ。 電気自動車ということを強調していないルックス周辺事情はそれくらいにして、EQCの概要に移ろう。まずサイズだが全長×全幅×全高はそれぞれ約4.76×1.88×1.62mで「GLC」と「GLE」の中間くらい。エクステリアはGLCに非常によく似ており、電気自動車であることをことさら強調していない。 インテリアも同様で、最新の「Aクラス」と同じ10.25インチ(26cm)のディスプレイが2つ並んでいる。解像度は1920×720ピクセル (200dpi) で、自然言語による高度な音声入力が可能。固定SIMカードが内蔵されており、AIを搭載した「MBUX(メルセデス・ベンツ ユーザー エクスペリエンス)」を「ヘイ、メルセデス!」と起動させ、さまざまな操作や情報を得ることができる。 ADAS (アドバンスド・ドライバー・アシスタンス・システム) は、車線維持、追従、自動ブレーキなど、自動運転レベル2のアシストを装備している。ちなみにメルセデス・ベンツはアウディのように「渋滞アシスト(レベル3)」などという言葉は使わず、「高度自動運転」という呼び方をしている。 パワートレーンは前後に電気モーターを搭載し、システム出力は300kW (408馬力)で、最大トルクは760Nmを発生。空車重量2495kg(内バッテリーが650kg)のボディを0-100km/hまで5.1秒で加速させ、最高速度は180km/hでリミッターによって制御される。モーターはフロントが回生重視、リアがパワー重視の特性を持っている。 リチウムイオンバッテリーのセルはパウチタイプで、合計384個のセルからなっており、48個のセルが入ったモジュールが2基、72個入りのモジュール4基で構成されている。このレイアウトはスペース、冷却暖房効率、耐クラッシュ特性などから考慮されたものだ。またエネルギーは80kWh、そして最大電圧は405V、キャパシティは230Aである。 次世代型急速充電にも対応。課題は充電インフラ軽自動車の2.5倍の重量にも関わらず、立ち上がりから最大トルクを発生する電気モーターの特性のおかげで、周囲の交通の流れに乗ることは問題ない。エアサスはフラットで上質な乗り心地を実現しているが、オプションの21インチタイヤでは流石に路面からのショックを吸収しきれず、特に低速ではゴツゴツする。 一方で、床下にレイアウトされた重いバッテリーの恩恵でロールは少なく、森の中を走る峠道でドライブペダルを深く踏み込んでも、eATS (エレクトリック・ドライブ・トレーン・システム)が4輪に確かなトラクションとロードホールディングを約束してくれる。この日は週末とあって、時折バードウォッチングを楽しむ人たちに出会ったが、彼らに後ろめたさを感じることなく通過できるのもローカルエミッション・ゼロのBEVならではの仕業である。 さて、電気自動車の問題点の一つが充電である。EQC400は110kWの直流充電ステーション(IONITYと呼ばれる欧州の急速充電ステーション)で10%から80%までの充電時間は40分で済む。この性能を確認するために、空港からスタートした時、私のテスト車はあえて半分以下の充電率にされていた。そして20分ほど走った場所にあるIONITYで急速充電のデモンストレーションをおこなった。 しかし、一般的なCCS (コンバインドチャージングシステム、GMやフォルクスワーゲンなどが提案する急速充電規格)は50kWなので、同じような充電率だと2倍以上の時間が掛かってしまう。このあたりがまだ残る大きな問題だ。 次の問題は航続距離。このEQC400はNEDC(EUで使われている燃費計測方法)で約450kmを謳っているが、もっと現実的なWLTC(国際的な燃費計測方法)では350kmとなる。そこで、メルセデスは充電をいかに効率よく行うかという様々な対策を講じている。例えば出発前にナビゲーションに目的地をセットすると、最適な充電ステーションの位置と到着予想時間、予約はできないが、ステーションが空いているかどうかを知ることができる。 価格はオプション次第で1000万円越えに運転席に座ると、ステアリングホイール背後両側からパドルが伸びている。右側がプラス、左側がマイナスとなっていて、これにより回生の強弱コントロールをシフト感覚で行うことができる。 Dポジションはデフォルト、右パドルを引くと「D+(プラス)」となり、回生が弱まり下り坂や低負荷走行時に電力を使わずに走行できる。一方左側を引くと「D-(マイナス)」、そしてもう一回引くと「D--(マイナスマイナス)」となって、こちらは反対に回生率が高くなり、「D--」では、最大で0.3Gの減速加速度が発生する。このモードではブレーキペダルを使用することなく、ワンペダル走行が可能になる。さらにもう一つ、道路状況や地形などから最大の航続距離を自動的に算出するポジションも用意されている。 ドイツでのベース価格は19%の付加価値税込みで7万1281ユーロ(約870万円)となっているが、これは戦略的な価格設定で、付加価値税を抜いた車両価格が6万ユーロ以下のBEVには補助金が出るためだ。まあ、これでオプションを注文すれば、ゆうに1000万円は超えるはずであるが、カタログ価格としては事実だ。 保証は8年間、もしくは走行16万kmの早い方で、メルセデス・ベンツによればこの時点でも電池は80%のキャパシティが残されているという。ちなみにドイツではすでに受注が始まっていて、日本への上陸も年内の予定だ。もちろん32A単相プラグ、そして500V 、200A(あるいは400Aまで)のCHAdeMO(チャデモ)が用意される。現時点では日本価格は発表されていない。 ところでこのEQCのデリバリーは遅れるようだ。なぜなら生産する北ドイツのブレーメン工場ではCクラスとの混成ラインとなっていて、EQCは一日わずか100台しか生産できないのだ。それ故に現在注文を受けても年内にユーザーの手に渡るかどうかわからない。 試乗を終えたその日、ダイムラーは2039年までには世界中で販売するすべてのモデルが二酸化炭素フリーになることを明言した。その技術内容について明確な説明はなかったが、おそらく今回試乗したBEVだけでなくP-HEVも含まれているようだ。ただし、その内燃機関には合成燃料が使用されるだろう。さらにダイムラーはフューエルセルP-HEVと言う凝った構造のCO2フリーモデルもほぼ完成している。 ダイムラー社はあと2年で現在の132g/kmを102g/kmまで、さらに2030年までには、そこからさらに37.5パーセントの低減が要求されている。そのため早期の方針決定が望まれていたのだ。 スペック【 EQC400 4マチック 】 |
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