急成長するコンパクトSUV戦線へすでに好調な販売スタートを切ったレクサスの新モデル「NX」。 世界的に見ても、適度な室内空間の広さと狭い道での走り易さを両立したボディサイズで、車高が高く走る道を選ばず、運転し易い高めのドライビングポジションを得られる、NXのようなコンパクトSUVは注目を集める急成長カテゴリーだ。 レクサスにはすでに兄貴分のRXがSUVとしてラインナップされているが、ドッシリとした重厚な走りは好きだが、あのボディの大きさだと運転に気を遣ってしまう…と買い控えしていた方もいるはず。そのような“扱い易い”高級SUVニーズを満たす為に生まれたのがNXであり、先に結果を言ってしまうとグレード選びに深く悩むだろうが、それぞれの完成度は予想越えを果たしている。 プレミアムには強い自己主張が必要だまず見た目は、最近のレクサスの象徴である大きく口を開けた独創的なスピンドルグリルが備わり、良くも悪くもインパクトが強い。だからこそ様々な意見が出そうだが、個人的には自己主張が強いだけでデザイン性は悪くないと思えるので歓迎だ。しかも、今の時代のデザイン消費スピードは驚くほど早い。登場したときに奇抜に感じていたデザイン…例えば新型クラウンなども、今では普通に思えてしまう。 それを踏まえると、通常のクルマ以上の対価を払って買うプレミアムブランドのクルマとしては、1、2年経っても他とはひと味違う先進的な見た目を提供するにはこの位の自己主張が必要なのだ。 日本ならではの細やかなモノづくり4630×1845×1645mmというボディサイズはSUV市場においてはコンパクトなサイズに相当するが、前、横、後と、どこから見ても鋭いエッジラインがアクセントに入っており、存在感と力強さがみなぎっている。 しかもそのデザインの中には、夜間の乗り降りで足元を照らしてくれる照明や、車高が高くサイドステップにズボンが擦れて汚れる、といったSUVが抱える問題の解消など、日本のプレミアムブランドらしい“おもてなし”が随所に盛り込まれている。 その世界観は室内に入っても続く。皮やアルミなど使っている素材の良さを活かすべく、その製法や加工が素晴らしい。例えばシートの製法にしても、通常では革同士の縫い合わせ部は分厚くなり易いが、その合わせ面の裏をひと手間かけて薄く削り、厚みを抑えている。それにより、見た目や触り心地の滑らかさが上がるというわけだ。 説明されなければ気がつかない製法と加工の積み重ねにより、NXの室内空間にはSUVとは思えない、泥臭さとは無縁の落ち着く空間が広がっている。またコクピット感と表現したら良いだろうか、ダラッと広いのではなく包まれ感が適度に備わっており、クルマに守られている感覚を得られるのも特徴だ。 悩ましい3つの選択ポイントこのように想像以上の完成度を走る前に肌身で感じたが、ひとつだけ残念な要素があった。それが荷室。床面が若干高く、荷物の出し入れが疲れそうな上に、荷室奥の荷物を取る際にバンパーに服が擦れて汚れそうなのだ。通常であれば、ここに書くほどのことではないが、他が良いだけに残念。ちなみに後席は十分な広さではあるが、高級車らしくゆったりと優雅に移動するには若干窮屈感が漂うので、それを望むならRXだろう。 さて、ここからが実際にNXの購入を考えている人が悩むはずのポイントだ。 ポイントは大きく3つ。1つ目はハイブリッドの300hにするか、新規開発された直噴ターボエンジンの200tにするか? 2つ目はフロントタイヤだけを駆動するFFにするか、4WDにするか。3つ目は“Fスポーツ”にするか否かだ。 Fスポーツを選ぶべきか?すでにオーダー済みで納車待ち状態の方は読むと不安になるかも知れないが、ひとりの戯言と軽く捉えてもらうとして、感じたままに書いていこう。 最後のFスポーツに関しては明確で、選ぶべきだ。もちろんスポーツ性を強調する仕様なので、エレガントさや落ち着き感を求める方にはお勧めしない。しかし、乗り味の観点では、NXのFスポーツは見事。 実のところ、NXをハリアーとシャーシを共有する兄弟車という視点から、走りも同じと決めつけた瞬間に判断を誤ることになる。NXはレクサスを製造してきた九州工場で造られ、板金の金型なども専用で起こしている。レクサスISの走りを飛躍的に向上させたレーザー溶接の「レーザースクリューウェルディング」や、剛性と振動収束に優れるボディ構造用接着剤を使うなど、盛り込まれているアイテムが異なり、結果として到達しているレベルが違う。このボディであれば走りに定評のある欧州系のメーカーとも真っ向から戦えるポテンシャルがあるのだ。 Fスポーツはパフォーマンスダンパーも装備Fスポーツはそのボディに、さらにパフォーマンスダンパーと呼ばれるパーツを装着し、余計な走行振動が抑制された適度な硬さの足回りに仕上げられている。結果として、無駄な揺れがなく運転し易くスポーティにも走れるうえに、乗り心地も良い。 NXは若干フロントオーバーハングが大きく、ギャップの乗り越えなどでフロントがユサユサと揺れ易い素性があるが、Fスポーツではその動きが少ないのも好印象。またスピーカーから心地よく感じる加速音などを出すアクティブサウンドコントロールが装備されているが、Fスポーツではそれがより効果的に使われているのもお薦め理由だ。 とは言いながらも、Fスポーツではなくても、揺れを抑えて上質に走れるグレードがある。 上質なNX 300h、気持ちよさのNX 200tそれが2.5Lエンジン+モーターを組み合わせたハイブリッドの300hだ。その名の通り、従来からのガソリンエンジンで例えるなら排気量3L級の走りを生み出すハイブリッドとして造られているが、走り出しから驚くほど上質で滑らか。路面のうねりが無くなった…とまでは言えないが、半減したかのように揺れが収まる。 これには、トヨタのハイブリッドシステムが得意とする、バネ上制振制御という機構が関係している。ドライバーが気がつかない範囲でモーターを瞬間的に動かし、クルマの前後方向の揺れを納める驚きの技術で、Fスポーツレベルの姿勢変化の少ない落ち着いた走りが手に入る。 ちなみに新規開発の直噴ターボの200tとハイブリッドの300hでは、300hが価格やネーミングから上級と判断できるが、加速力や機敏性の絶対性能を求めるなら200tがお薦めだ。このエンジン、最大トルクは350Nmという、従来のガソリンエンジン基準で言えば排気量3.5Lに相当する力を発揮。言うなれば300hよりもストレス無く走るし、気持ちよい。しかしそれは、実際試した限りターボが効果的に働く3000回転以上の領域の話。逆に言えば、力強さと静かさそして滑らかさが絶えずあるのが300hで、上質な走りを求めるなら300hがお薦めとも言える。 燃費と軽快感のFF、落ち着き感の4WD最後にFFと4WDだが、軽快感と燃費を求めるならFFだ。駆動抵抗の少なさや軽量であることが関係して、走りに軽快感がある、しかもハンドル操作に鋭く反応する気持ち良さもある。 ただし、スポーティには鋭さも欲しいが、実は操作した通りに忠実に動く素直さが大事で、車高の高いSUVでは尚更、鋭さはそれほど必要ないはずだ。そんな要素も含めて考えると、実は燃費や加減速の鋭さを重視しないならば、4WDがお薦めだ。ハンドリングに落ち着き感があるし、そもそものクルマの動きにドッシリ感や安定感、無駄な動きを重さで抑制する特性があるからだ。 最後にFスポーツには標準設定だが、AVSという電子制御サスペンションの選択はお薦めだ。滑らかさ、しなやかさ、車両の安定感、どれもがワンランク向上する。 レクサス NX 主要スペック【NX 200t “version L”】全長×全幅×全高=4630mm×1845mm×1645mm 【NX 200t “F SPORT”】車両重量=1740kg(FF)、1800kg(4WD) 【NX 300h “version L”】車両重量=1790kg(FF)、1850kg(4WD) 【NX 300h “F SPORT”】車両重量=1790kg(FF)、1850kg(4WD) 発売日=2014年7月29日 |
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