「ライフ」「スタイル」「Rライン」の3種類今年最後のビッグイベント「新型ゴルフ(ゴルフ8)」の試乗会がポルトガルのポルトで開催された。これまで7世代にわたって3500万台が生産されてきたゴルフは、ニューモデルが発表されるたびに常に世界の自動車メーカーの規範となる存在として君臨してきた。果たして8世代目もその資質は備わっているのか? 歴代のゴルフ発表会と比べるとやや地味な印象を免れない会場に用意された試乗車は全て直列4気筒1.5リッターで、ガソリンが48VマイルドハイブリッドのeTSIとノンハイブリッドのTSI、そしてディーゼルのTDIである。ニューゴルフには装備によって「ライフ」「スタイル」そして「Rライン」と3種のモデルラインが用意される。私が試乗したのはスタイルで、これまでの「ハイライン」に代わる上級モデルだ。 搭載されるエンジンは4気筒1.5リッターガソリンにeTSIと呼ばれる48Vマイルドハイブリッドを組み合わせたもので、最大出力は150馬力、最大トルクは250Nmを発生する。トランスミッションは7速DSG(デュアルクラッチ)のみである。48Vのリチウムイオン電池は助手席の下に置かれている(右ハンドル仕様でも助手席側に設置される)。カタログ上の性能は0-100km/hが8.5秒、最高速度は224km/hに達する。 旧モデルに比べて、佇まいも寸法もほとんど変わらないが、新型のデザインで最も目立つのはヘッドライトだ。22個のLEDライトユニットを内蔵し、ハイテックな顔つきとなった。さらにフロントドア前部からリアクオーター、さらにトランクのリアライト上部にまでボディの4分の3を貫通したプレスラインも目を引く。これまでのゴルフでは、噂によれば社長らトップの嗜好でこうした明確なラインをショルダーに持たなかったが、今世代から許されたと言われる。 他には、ロゴが新しくなったVWエンブレムの真下に「GOLF」と入った。空気抵抗係数のCd値は0.3から0.275へと改善されたが、これは車高がわずかに低くなったことと、延長されたルーフスポイラーなどによって達成されている。 デジタル化にお金をかけた一方で無くなったものもボンネットを開けてみると、これまでのダンパー支持から、支え棒に変わっている。VWのCOO、ラルフ・ブランシュテッターは「さらに厳しくなったユーロNCAP(ヨーロッパで実施されている自動車安全テスト)の歩行者保護をクリアするためにボンネットを柔らかくしなければならず、そのためにダンパーが使えなくなったのです」と説明した。確かにボンネットのプレスラインが先代ゴルフ7の2本に対して、ニューモデルでは補強のために内側に2本追加され、合計4本となった。まあ一応は納得するが、ボンネットの内側にボディカラーと同じ塗装が吹かれておらず、下地塗装のままであるのはどうしてもコストセーブとしか思えない。 一方、お金が掛かっていそうなのがインストルメントパネルである。ドライバー正面には標準装備のデジタルメーター、ダッシュボード中央にはスタンダードでも標準装備される8.25インチ、オプションで10.25インチのデジタルディスプレイがドライバーに向かってレイアウトされている。 操作は非常に直感的で、隠れているインジケーターや望む画面を探すには画面タッチやスワイプだけでなく、下にあるダイレクトアクセスボタンを押すことでドライブモードやエアコン操作などの画面を直接出すことができる。使いこなすには慣れが必要ではあるが、逆に慣れれば使いやすい。この結果、ダッシュボードの下にはもはや操作スイッチなどは存在せず、視線を正面から落とさずに操作できるのも非常に良かった。 後席は3人乗っても空間はたっぷりで、ルーフが3cm低くなったのにもかかわらず、ヘッドルームは十分に残されている。ちなみにこれまで重宝してきたBピラーのジャケットフックが省略されていた。前述のブランシュテッターによると「実はBピラーにコートやジャケットを掛けた際に、ドアに挟まる、あるいはドライバー側に掛かっている場合には斜め後方視界も遮ってしまうという問題があることが指摘されました。そのため省略しました。これもわずかな費用なので、けっしてコストセーブではありません」という回答が返ってきた。私はこの説明に完全には納得していない。結果、ジャケットやコートはリアドア開閉部の真ん中にあるアシストグリップと一体型のフックを使用することになり、パッセンジャーの出入りを妨げるだけでなく、視界も妨げる。昔はこうした「おもてなし精神」があったのに残念だ。 前述のボンネット支持棒、そして下地塗装だけではない。ダッシュボード、エアアウトレットの下部、ドア部分などのハードプラスチックの使用面積もどんどん広がってきている。確かにゴルフ8はデジタル化にお金がかかっているが、それも含めて私はここに一つの時代が終わったのを感じた。 先代より一枚上手の操作感とその結果としての正しい挙動空港の駐車場をグルグル回り、高速道路の進入路から走行車線に合流しただけでその進化の一部を垣間見た気がした。今から7年前、先代ゴルフ7を試乗したときのステアリングの素直さ、フィードバックの正確さ、そして切り込んだ時のゲインの確かさなど、操舵に対する車の動きの正確さに驚いたのを覚えているが、ゴルフ8ではさらに一枚上手の操作感とその結果としての正しい挙動を感じた。旧モデルよりも一層シャープで、狙ったラインに応じて正確にトレース、旋回動作を行う。旧モデルも良かったのだが、ステアリング入力はわずかに軽すぎていたのと、若干アンダーでスポーティさに欠けていたような記憶がある。 シャーシ担当のカーステン・シェブスダートによれば、サブフレームをスチールからアルミ鋳造に変えたことで、剛性の高まったサブフレームをベースに見直し、ソフトウェアのアップデート、アルゴリズムの書き換えなどを行ったそうである。またホイール幅の拡大もその中に入っている。 乗り心地も明らかに進化している。コンフォートをセレクトすると、やわらかすぎず硬すぎずで、車との一体感が失われず快適この上ない。シートも大事な役割を果たしており、芯はしっかりとして外側のクッションが快適で、形状が正しく体をしっかりと支えてくれる。 48Vベルト駆動マイルドハイブリッドは、負荷の低い定速走行ではエンジンをカット、さらに信号停車の前で22km/hになるとエンジンを停止させ、スムースな再スタートを行う。非常にスムースだが、スロットルオフしたときに、エンジンの回転がスパッと落ちずにだらだらとしばらく回転が上がったままなのは気になった。これは回生エネルギーを貯め込んでいるためと説明されたが、あまり良いものではない。 また帰路でテストした新開発の6速MTも規範的で、個人的にはもうちょっと節度が欲しいが、一般的には十分快適なシフトワークを提供していた。 ゴルフと「ID.3」は市場で競合しないのか?ゴルフ8の最も大きな売りの一つは「C2X(カー・トゥ・エックス)」である。半径800メートル以内のクルマ(事故車、緊急車両を含む)や、渋滞最後尾、道路工事などのインフラと交信可能で、ミリ秒(1000分の1秒)のスピードでナビ画面に表示される。 冒頭で紹介した22個のLEDライト使用のヘッドライトシステム「IQライト」だが、夜間のテストではコーナーで必要な方向へ照射を行い、対向車がいる場合には相手を幻惑させることなく進行方向だけに配光することを可能にしていた。「トラベルアシスト」は210km/hまで前方車両に追従が可能なアダプティブクルーズコントロールで、日本ではそのスピードまでは不要だが、非常に重宝なシステムであった。 オプションにはヘッドアップディスプレイやAIボイスコントロールも用意され、将来的にはスマホによる窓の開閉、さらにはこうしたシステムへのアップグレードをOTA(無線通信)で行うことも可能である。 ゴルフ8の価格はベースモデルが1万9990ユーロ(※約240万円)と発表された。しかしこのモデルは全くシンプルな仕様で、リアアクスルはトレーリングアームで搭載されるエンジンは1.0リッター直列3気筒で90馬力のTSI。ボディカラーはおそらくソリッドのグレーか白だ。それなりに必要な装備を加えるとおそらく3万5000(※420万円)から4万ユーロ(※480万円)になるものと想像する。なおドイツでの発売開始日は12月初旬である。日本での発売時期や価格はまだ発表されていない。(※2019年12月現在の1ユーロ120円で換算) 最後に、試乗後フォルクスワーゲン社のCOO(最高執行責任者)のブランドシュテッターにインタビューするチャンスを得たので以下の質問を投げてみた。 Q:ゴルフと「ID.3」は市場で競合しませんか? Q:繰り返しますが、まったく競合はしないと思われますか? Q:どれくらいを考えていますか? ※取材記者が独自に入手した非公式の情報に基づいている場合があります |
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