ようやく登場したBMWのハイエンドSUVSUVセグメントの増殖ぶりは今や量産メーカーの販売するサブコンパクト~フルサイズはもちろん、ベントレーやロールス・ロイスなどのハイエンドブランド、ポルシェやランボルギーニなどのスポーツカーメーカーまで巻き込んだ広大な範囲になっている。 ドイツのプレミアム御三家を見てもSUVラインナップの充実ぶりは半端ではなく、とりわけメルセデス・ベンツでは7機種を数え昨年だけで80万5000台も販売されている。 BMWは「メルセデス・ベンツ Mクラス」に遅れること2年、乗用車ベースのSUV「X5」をSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)として1999年に、さらに2008年には初のクーペバージョンの「X6」をSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)の名称でスタートするなどSUV市場に対して積極的な姿勢を見せて来た。 しかし、不思議なことに前述したようなハイエンドSUVに関しては「アウディ Q7」(2005年)や「メルセデス・ベンツ GL/GLS」(2006年)に対して何ら対抗モデルを持たないという状態が長く続いていた。 そして、これらのライバルが2世代目を迎えた現在、BMWはようやくSAVのトップモデル「X7」を公開した。 私はLAでのワールド・プレミアに先立ってミュンヘンの某スタジオで事前取材のチャンスを得たので、そこから肌で感じた印象をお届けする。 5mオーバーの巨体でキャビンは3列目も余裕まず、X7のサイズだが全長×全幅×全高はそれぞれ5151×2000×1805mm、ホイールベースは3105mmとアウディ Q7よりもひと回り大きく、メルセデス・ベンツのトップSUVである「GLS」に近い。 初対面の印象は不思議なことにGLSのようにデカく感じないし、威圧的でもなかった。それはおそらくキドニーグリルやブルー&ホワイトのエンブレムがBMWモデルの中ではもっとも大きくなり、同時に横長で細いヘッドライトユニットが比較的に高い位置に、水平に伸びているなど、全体的な調和がとれているためと思われる。 キドニーグリルはついに左右が繋がり「モノキドニー」と改名された。ちなみにこのキドニーグリルの由来は今から30年ほど前、まだラジエターが剥き出しの頃に、高性能エンジンを搭載したBMWは冷却面積を大きく取らねばならなかった。ところがそうなると空当然気抵抗が大きくなる。そこで中央を折って左右に分けたのだが、その形が腎臓に似ていたのでのキドニー(kidney)と命名されたのだ。 話を戻そう。左右の切れ長のリアコンビネーションライトを一本の水平なクロームラインで繋いだ結果、リアビューもスッキリしており、背の高さもあまり気にならない。リアゲートはX5のように上下分割だが、共に電動で開く。また下方の扉は200kgまでの重量に耐えるので私が乗ってももちろん問題がない。 サイドビューも22インチ(※事前取材モデルの場合)という巨大なホイールの採用のおかげでバランスのとれたプロポーションになっている。 反対にキャビンの広さは圧倒的で3列シートの最後列でもヘッドルームやレッグルームは十分。エアコンも専用の調整が可能である。加えてオプションのグラスルーフは3列目のパッセンジャーの頭上にまで届き開放感を演出する。 一方、カーゴルームのサイズは3列目まで起こした通常の状態で326リッター、3列目と2列目のバックレストまでを倒すと2120リッターと商用バン並の広さが確保される。このシートの折りたたみ作業もスイッチ一つで行うことができる。 豊富な先進装備&ボイスコントロールも採用シャーシは自動車高調整装置のエアサスペンションで時速130km、あるいはスポーツ・モードで標準より20mm低くなる。一方、オフロード・モードでは、スイッチ一つで車高は40mm高くなる。 コクピットはBMWの最新デジタルHMI「オペレーティングシステム7.0」が採用されている。いわゆるスイッチの数は極力減らされ、代わりに音声入力とジェスチャーコントロールが導入された。前者はメルセデス・ベンツですでに採用されているのと同じように「ヘイBMW」で起動、バーチャルのパートナーが「何かご用ですか」と返事をする。 X7はハイエンドSUVとしては当然のことながらADAS(先進運転支援システム)も充実しており、歩行者および自転車も感知可能な市街地緊急ブレーキはもちろん、渋滞アシスト付きクルーズコントロールではストップ&ゴー状態で30秒間も停止することが可能。加えてクルーズコントロール中は法定速度や追い越し禁止標識の検知も行なう。 利便性の面ではX7のオーナーはキーを探す必要がなくなる。NFC(ニア・フィールド・コミュニケーション)を内蔵したアンドロイド8.0以上のスマートフォンを鍵代わりに利用可能になったのだ。この他、この紙面では書き尽くせないほどのハイテクが満載されている。 後発だけにライバルを凌駕する完成度と装備発売当初のラインアップは、ガソリンが3.0L直6ターボ(340ps/450Nm、0-100km/h加速=6.1秒)の40i、4.4L V8直噴ツインターボ(462ps/650Nm、0-100km/h加速=5.4秒)の50i。ディーゼルが3.0L直6(265ps/620Nm、0-100km/h加速=7.0秒)の30d、3.0L直6(400ps/760Nm、0-100km/h加速=5.4秒)のM50d。 BMW X7は最後に登場したハイエンド・フルサイズSUVだけあって、その完成度や装備の充実度はライバルを凌駕しており、ダイナミック性能を検証できる本格的な試乗が楽しみである。 X7はこれまでの Xシリーズのようにアメリカ、サウスカロライナ州のスパータンバーグ工場で生産され、来年の3月から世界市場に向けて出荷される。もちろんここから中国へも輸出されるわけだが、トランプ政権のおかげで中国向けでは高関税が掛けられるので、前途は多難である。 SUVブームはこの先まだまだ続き、X7のバリエーションとしてBMWは当然のことながらSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)の「X8」を、その対抗馬としてポルシェは長年温めていた「カイエンクーペ」を、ベントレーは「ベンテイガクーペ」をそれぞれ計画している。ただし発売は早くても2020年になりそうである。 スペック例【 X7 xDrive 40i 】 |
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