嫌われても構わない!レクサスが初めて北京モーターショーにてお披露目したNXは、まさに待望の1台と言える。投入されるのはいわゆるコンパクトSUV市場。今もっともホットで、そして今後も爆発的な成長が見込めるセグメントへの遅ればせながらの参入となる。 「常々、上から言われていたのは『これだけ競合が居る中で、埋もれてしまうようなものだったら、やめたら?』ということでした。」 NXの開発を指揮した加藤武明チーフエンジニアの言葉である。すでに競合車がたくさん居る中で、まず振り向いてもらえるクルマに。そこでまず重視されたのはデザインだ。 「嫌いな人は嫌いでいい。でもザワザワと来てほしい。そういうデザインを目指したつもりです。」 嫌われても構わない。これは従来のレクサスからは出てこなかった言葉ではないだろうか。この思い切りには、せっかく何のしがらみもない新しいモデルを創るのだから、中庸にする必要は無いというトップの後押しもあったという。 「振り返るとLEDヘッドライトはLSが一番最初でしたし、プレミアムSUVだってRXが先鞭をつけたものなのに、せっかく切り拓いてきたものを我々はちゃんと次に活かしていなかった。ですからレクサスの強みは何か、負けている所はどこか。改めてしっかり見つめ直しました。特に若い方にはレクサスの、あるいはRXのイメージは強くないので、そこにちゃんと響くように。『ISのようなSUVを創ろう』と言い合って進めてきました。」 そうした説明は、あるいは聞くまでもないところかもしれない。NXのスタイリングは実にアグレッシヴ。そして何にも似ていない独自の存在感を放っている。寝かされたCピラーなどフォルムはRXと共通のイメージだが、ディテールは明らかにエッジが立っていて、よりシャープな印象が強い。少なくとも外観上、これならジャーマンプレミアムと並べても埋もれてしまうことは無いはずだ。 世界初技術も採用する待望の2.0L直噴ターボもちろん、いくらデザインが良くてもそれだけでは勝負権は得られない。どれだけ走るかも同様に非常に重要だ。しかも単に動力性能が高いだけでは足りない。レクサスらしさ、NXらしさがそこには求められる。 「今回はエンジン開発の人間に早い段階でデザインを見せ、またデザイン部門にも早い時期にクルマに乗せてという具合に、皆がクルマに対するイメージを共有できるよう配慮しました。何しろ新しい車種ですから、各部門にどんなクルマを創るんだと理解してもらう必要があったんです。」 テクノロジー面でもっとも目をひくのがNX200tが積む初の直噴ターボエンジンだ。世界初の水冷式エギゾーストマニフォールド一体シリンダーヘッド+ツインスクロールターボチャージャーを採用したこのエンジンは最高出力238ps、最大トルク350Nmを発生する。 「NXにはこのエンジンをどうしても積みたかった。ハイブリッドはもちろん、ガソリンエンジンも絶対必要ですが、RXと同じ3.5Lでは燃費の面でもキャラクターの面でも弱い。世の中がダウンサイジングターボの方向に向いていることもあって、このエンジンを待っていたんです。」 このNX200tにはアイドリングストップシステムも遂に組み合わされた。一方、NX300hには、2.5Lエンジンと組み合わされたハイブリッドシステムが搭載される。いずれも駆動方式はFFと4WDが用意され、特に4WDはいずれにも後輪に積極的に駆動力を配分して走行安定性を高める制御が盛り込まれている。 他にも、ボディには構造用接着剤やレーザースクリューウェルディングなどレクサスが誇る最新の生産技術が投入されて大幅な剛性アップを実現。微小な入力から反応するショックアブソーバー、減衰力を30段階に切り替える減衰力可変システムのAVSなど、最近のレクサス車らしく走りへのこだわりが随所に注入されている。見た目を裏切らない走り、期待していいのではないだろうか。 レクサスが追求するべきはオリジナリティさてレクサスと言えば、実は4月1日付けで体制変更が行なわれ、プレジデントには福市得雄氏が就任した。ここ数年でハードウェアとしての評価を一気に高めてきたレクサスを踏まえて、今後ブランドはどこに向かうつもりなのかをうかがった。 「欧州のプレミアムブランドと同じ方向性では絶対に勝てません。ではどうするか。まず品質は絶対に負けない。その上でこれからは環境と走りの両立がこれまで以上に大事になってくると思います。今、40代くらいで社会の中心となっていて、団塊世代の物欲や浪費を反面教師的に捉えている人達。彼らに共感してもらいたい。」 しかし彼らは、移動の手段としてのクルマにはそれほど感心を抱いていないかもしれない。そこにはどう切り込むのか。 「時計と同じようにクルマを見れば持ち主がどんな人なんだと周囲も何となく想像できますよね。その中で『ああいう人に見られたい』というクルマにしていきたい。そのために特にデザイン部門には『絶対にフォローはするな』と言っています。他社を知ることは大事ですが、追求するのはオリジナリティだと。」 実は福市氏はトヨタ自動車のデザイン本部長も兼任。デザインにはとりわけこだわりがある。 「デザインはスタイルのことではありません。表層ではなく本質。まず骨格をちゃんとさせないと、色々ラインを入れたり面を捻ったりしてもバレるんです。スピンドルグリルにしても単なるカタチではなく機能からの要求が先にありました。だから極端な話、中身が変わったらそのカタチも変わっていってもいいんです。」 レクサスNXの大胆なスタイリングは、まさにそんな新体制レクサスを象徴するものと言える。もちろん走りだって疎かにされることはないはず。まさに福市氏の言葉の通り、そしてNXの開発過程の話にも出てきたように、デザインと走りはもはや分けて考えられるものではないのである。 ますますステアリングを握るのが楽しみになってきたレクサスNX。チャンスが巡ってきたら、その時にはまたここで紹介できるはずだ。 |
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