オフローダーとして完璧なフォルムを持つGクラスという存在何もかもが移り変わりの激しい世の中にあって、長い間変わらないカタチで好まれ、生き続けているモノがある。クルマではポルシェ911やミニ、その他の商品ではコンバースのバスケットシューズやコカコーラの瓶などがあげられている。もちろん日本でもキッコーマンの醤油差し瓶が有名だが、ここではメルセデス・ベンツGクラスを取り上げてみよう。 Gクラスは1979年から2018年までほとんど、そのデザインを変える事なく30万台以上を出荷した。すなわち年間およそ7700台、少々酷な言い方をすればモデルチェンジをするどころか、普通の車であれば生産を止めてもおかしくないほどの微妙な台数である。果たしてメルセデス・ベンツ自社内での生産であれば、消え去ったかもしれないが、このGクラスはオーストリアのマグナ・シュタイヤーで生産されていたこともあって、なんとか生きながらえる事ができた。しかし、長期生存できた一番の理由はGクラスが道具として最も無駄のない完璧なクルマのカタチをしていたからだ。すなわちエンジンルームとキャビンの二つの箱からなるシンプルなデザインは、洗練された空力特性など要求されないオフローダーとして完成されており、手の付けようがないのだ。それがコカコーラの瓶やバスケットシューズに繋がるアイコニックな存在となったのである。 このGクラスをさらに独自のポジションに押し上げた要因の一つがAMG仕様の存在である。最強で630馬力のV12エンジンを搭載したハイエンドGクラスは各界のセレブが渇望する存在となったのだ。 ちょうど一年前にデトロイトショーでアーノルド・シュヴァルツネッガーとともに登場したニューGクラスにもAMG仕様は存在しており、昨年のジュネーブオートショーで「AMG G63」として世界初公開されている。そして今回、その市販タイプがアフリカ市場で販売されることが決定。この地で行われる適合テストに、我々数人のジャーナリストの参加が許されたのであった。 Gクラスに500馬力超のスポーツエンジンを積む必然性とはAMG G63に搭載されるエンジンは4リッターV8ビターボで最高出力585馬力、最大トルクは850Nmとなっている。また9速スピードシフト(オートマチック)との組み合わせで、0-100km/hは4.5秒、最高速度は220km/hでリミッター制御される。ただし、この数字に満足できないオーナーはAMGでのハイスピード・ドライバートレーニング参加と引き換えに240km/hまでリミッターが引き上げられる。 ヨハネスブルグ郊外で初めて対面したAMG G63はまずAMGモデル専用の立て格子の「パナメリカーナ・グリル」が、そして22インチタイヤを装備した全長4.8m、全高1.97m、そして自重2.7トンの堂々たる風格を漂わせている。さらに、40年以上も変わらないドアハンドルを引っ張って乗り込んだキャビン内に広がるインテリアは豪華なナッパ・フルレザー・トリムで仕上げられている。 無骨なエクステリアからは想像できない、この豪華、かつフルデジタル表示のハイテックなインテリアは都会のジャングルをクルージングするには最適である。 とりわけ最初のデリバー時に設定されている限定バージョンの「エディション1」はエクステリアそしてインテリアに赤いアクセントが施されエクスクルーシブな雰囲気で包まれている。 正直言って最初は500馬力超えのパワーを持ったスポーツエンジンを搭載したGクラスの存在意義を疑ったが、こうして過酷な荒野を走り回っていると、確かにパワーは必要であり、それをしっかりとコントロールできるデバイスがあれば、オフロードのスーパーカーとして十分な存在意義があると実感することができた。さらに帰路のオンロードでのダイナミックな挙動は圧巻で、ドライブモードでスポーツプラスを選択すると、わずかなスロットルペダルの動きも逃さず2.5トンの巨体が物理の法則を裏切るような俊敏なダッシュ力を示す。9速ATのスムースさや足回りのしなやかさにも舌を巻くほどだ。 昨今のハイエンドSUVブームではあるが、こうした両極端な二面性を発揮できるSUVは少ない。メルセデス・ベンツ AMG G63には新参モノを寄せ付けない百獣の王のような貫禄が漂っていたのであった。 スペック【 メルセデスAMG G63 】 |
GMT+9, 2025-6-21 15:23 , Processed in 0.128162 second(s), 18 queries .
Powered by Discuz! X3.5
© 2001-2025 BiteMe.jp .