70年の祭典から消えたピエヒとヴィーデキング「世に中には自分の欲しい車が存在しなかったから自分で、自分の要求に見合う車を作ってしまった」と言うのは天才エンジニアで自らの名を冠したスポーツカーを完成させたフェルディナンド・ポルシェの有名な言葉である。その第1号車「356ロードスター」は1948年オーストリアの片田舎グミュンドで誕生、今年は70年という節目にあたる。 ポルシェは様々なイベントを企画しているが、まずは6月8日にシュツットガルト郊外のツッフェンハウゼンにあるミュージアムでキックオフ・レセプションを祝った。そこにはCEOのオリビエ・ブルーメをはじめ、ヴォルフガング・ポルシェや州知事、市長が集まったが、ポルシェの再建を果たしたヴェンドリン・ヴィーデキング(元CEO)やフェルディナンド・ピエヒ(ポルシェSEの元監査役)の姿はなかった。要するに過去のマイナス要因は抜きにしてシャン・シャン・シャンと締めたかったのだろう。 この生誕70周年セレモニーで2つのワールドプレミアが発表された。1つは、これまで「ミッションE」の名前で呼ばれていたBEVコンセプトの、発売に備えてのモデル名の発表である。その名は「Taycan(タイカン)」。私は「体感」だと思ったが、それは早合点で中国語(らしい?)で「若い駿馬」を意味するそうだ。マカンの半分を中国で売っているメーカーが今さら日本語の名前を付けるなんて、あろうはずがない。それでも私はブルーメ社長に、日本語で「体感」は悪い名前ではない事を一応伝えておいた(笑)。 2019年に販売予定の「タイカン」には観音開きドアは採用されず、コンベンショナルな4枚ドアに決まった。パナメーラよりも若干小さく、ベース価格は7万ユーロ前後などとウワサされている。 駆動系は前後アクスルに2基の電気モーターをフランジし、システム出力600馬力を発生、0-100km/hを3.5秒、200km/hには12秒未満で到達するが、最高速度はリミッターの介入で250km/hに留まる。興味深いのは800Vアーキテクチャーを有しており、その結果、充電時間が圧倒的に短い。例えばスーパーチャージャーでは4分で100km分の電力を供給できると言われる。20分では400kmに、さらにフル充電では500kmに達する(ただしNEDC)。 ポルシェはこのタイカンを始めとする、「911」のP-HEVなど、来るべき電動化モデルをツッフェンハウゼンで生産する予定で、およそ1200名の新規採用を始め、2022年までに60億ユーロ(約8000億円)の投資を行うと発表している。 限定モデルの911スピードスターは億超えかもう一つのワールドプレミアは911のバリエーション「スピードスターコンセプト」である。まだコンセプトの段階であるが、販売は確実で、過去を振り返ってもカブリオレとタルガに続くオープン限定モデルとして最早定番だ。911系としては「930」「964」「997」に続く4番目の登場となる。ただしいずれも限定モデルであった。 スピードスターの最も大きな特徴といえる低められたウィンドシールドとそれに呼応したサイドウィンドウ、小さな2人用のキャビンを最小限覆うだけのシンプルなキャンバストップ、そしてパッセンジャー後方のロールバーを覆うように後方に伸びたカーボン製のカウリングが広がっている。 インテリアはクロームを廃した真っ黒なステアリングホイール、カーボン製のスポーティなバケットシート、そしてダッシュボードにはオーディオやナビゲーション、さらにはエアコンも見当たらない。 ボディはフェンダー、フロントボンネット、リアのカウリングなどがカーボン製で、クラシックなドアミラーとフロントリッドの中央に給油口、そしてクラシックなタルボ・ドアミラーが1950年代の「550スパイダー」を彷彿させる。さらにヘッドライト・カバーにはXのぼかしが入っているが、これは昔、跳ね石などでガラスの飛散を防止するために貼ったテーピングを表現したものだ。 開発は「GT2 RS」や「GT3 RS」を手がけたポルシェ・モータースポーツ部門で、フラット6エンジンはおそらく500馬力以上のチューニングがなされているはずである。またシャーシもGT3をベースに21インチ・タイヤが装着される。ホイールは昔のフックス(FUCHS)製に似たデザインでセンターロックである。 発売時期はおそらく992(次期911)の発表後、2019年の秋頃になると思うが、その限定数は過去の例から言って1948年に引っ掛けた台数になる可能性が大きい。 |
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