遂にパナメーラと真っ向勝負するAMGシュトゥットガルトの郊外にあるポルシェの本拠地、ツッフェンハウゼンから車でおよそ30分の田園地帯の真ん中ある村アファルターバッハにAMGの本社開発センターがある。知る人ぞ知るメルセデス・ベンツのエモーションの震源地である。 2009年の「SLS AMG」は自前の開発とはいえ台数の限られるハイエンド・スポーツカーで、まだポルシェも垣根越しに「ようやっとるわい!」程度で済んでいたが、2016年には本格的な量産スポーツカー「AMG GT」が登場。しかも発表当時から社長のトビアス・メアースが「イタリアにはモデナ(フェラーリ)とサンタアガタ(ランボルギーニ)とお互いにそう遠くない町に2つのスポーツカー・メーカーが存在する。自動車先進国のドイツにもそんな状況があってもちっとも不思議ではない!」とライバル宣言したのである。 それゆえ今年、「パナメーラ」と真っ向からぶつかる4ドアGTを市場に送り出すのも当然の成り行きである。正確なモデル名は「メルセデスAMG GT 4ドアクーペ」である。 クーペとはフランス語で「ちょん切られた」という意味、すなわち4シーターの馬車を短くして2人乗りにしたわけだ。ゆえにGTクーペのボディを50cmも延長した4シーター4ドアクーペには、変てこりんなネーミングである。しかし言葉は時代と共に変化して行くものだ。特にマーケティングの要請というヤツは絶対で、地球の自転を反対に回しかねないほどの力がある。 ともあれ、この4ドアクーペに試乗するためにテキサスのオースチンへ出向いた。なんでテキサス州なのかと言えば、想像するにこの州はアメリカ合衆国の中で法定速度がもっとも高い時速85マイル(約137km/h)を認可している(もっともオースチンとセギーン間のハイウェイの話だが)。だがもちろんAMGの狙いはそこではなく、この4ドアクーペのダイナミック性能を唯一のF1開催コース、サーキット・オブ・アメリカで検証させたいという意図であった。 その前に、このGT 4ドアクーペ 4マチックプラスのスペックから検証してみよう。全長5054×全幅1871×全高1447mm、ホイルベース2951mmと2ドアクーペよりも全長は508mm長く、ホイルベースで321mm長い。空車重量は2045kgと約400kg重い。 GT 53でも911カレラSより強力当日試乗した車種は「GT 63 S」と「GT 53」である。 まずはトップモデルのGT 63 Sでサーキットへ、持病の椎間板ヘルニアをダマしながら5.5kmのサーキットは辛かった。ステアリングの中央に並んだドライブモードをまずはスポーツ+でコースイン、特に2番目のきつい右ターンは全くのブラインドで踏み込めない、同時に支えの左足に痛みが走るのがきつい。とにかく3周を終えたところで、AMGのブランドアンバサダー、レーシングドライバーのベルント・シュナイダーが心配そうにやってきて「じゃあ、ドライバー交代だ!」と救いの手を差し伸べてくれた。 そんなわけでプロの操縦でGT4の挙動を観察する。さすがに2ドアよりも重く長いためにコーナーではちょっとアンダー気味で手こずるが、それでも639馬力のパワーと900Nmの大トルクを利用して一瞬のパワーオーバーステア、そして軽くカウンターを当てながらコーナーを脱出する。おそらく外からみると手こずっているようだろうが、クルマはベルントが狙った方向へ間違いなく進んでいる。まさに神業である。 ちょっと休憩して、今度はおとなしいAMG GT 53 4マチックプラスにチェンジ、一般道へ乗り出す。63と比べると204馬力もの差があるが、この辺りですれ違うスポーツカーの「911カレラS」などよりもずっとパワフルで、注意していないと一般道路の法定速度(45マイル=72km/h)はもちろん、周辺ハイウエイ(65マイル=105km/h)でもあっという間に制限速度に到達してしまう。絶対的な性能でもハイエンド・スポーツカーと呼ばれるのに十分である。 一方、ドライブ・プログラムをエコ・モード、そしてシャーシをコンフォートにセットすると確かに快適で、フル装備のADAS を使い、ブルメスター製のサウンドシステムを楽しみながら渋滞でさえも楽しむことができる。加えて48Vのオンボードネットワークがアイドリング・ストップからスタートするときのスムースさや、22馬力のEブースターによるターボへの滞りのない加速の繋がりを可能にしている。 パナメーラよりスポーツカー寄りの世界を作ったさて、冒頭に述べたようにAMG GT 4ドアクーペはパナメーラに対してどのようなコンセプトで出来上がった車だろうか? パナメーラはスポーツカー・ブランド、ポルシェの作った4ドア・グランドツーリング、いやサルーンであり、911との差別化のために絶対的な快適性を追求せざるを得ない。 一方、AMG GT 4ドアクーペはあくまでもGTの4ドア・バージョン、究極の快適性を求めるのであればSクラスのAMGにそれを見いだすことができる。ゆえにダイナミックなスタイルも含め、あくまでもスポーツカーだという思い切りの良さがある。 そこがパナメーラとGT 4ドアクーペの違いであり、どちらを選択するかの判断基準となる。 ちなみに筆者は場所と経済事情でガレージに1台だけの余裕しかないのであればGT 4ドアクーペを選択するだろう。 最後に我々を現実的に引き戻す車両価格だがトップモデルのGT 63 S 4マチックプラスが16万7016ユーロ(約2200万円)、AMG GT 53 4マチックプラスは10万9182ユーロ(約1400万円 ※いずれもドイツ基準価格で19%の付加価値税込み)と発表されている。 参考スペック【 メルセデスAMG GT 63 S 4マチックプラス 】 【 メルセデスAMG GT 63 4マチックプラス 】 【 メルセデスAMG GT 53 4マチックプラス 】 |
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