新開発CVTにより燃費が向上軽貨物車(4ナンバー)のダイハツ「ハイゼット」シリーズが17年ぶりにフルモデルチェンジした。カーゴ(バン)とトラック、4人乗りトラックのデッキバン、それにさまざまな特装車のすべてが刷新された。また従来ハイゼットを豪華に仕立てて乗用車化(5ナンバー)したモデルだった「アトレー」は、今回から商用車として販売されることになった。 モデルチェンジの主眼はCVTの採用だ。ほとんどの軽自動車が燃費に優れるCVTを採用するが、ハイゼットは旧来の4ATを使い続けてきた。ハイゼットはエンジンを縦に置く後輪駆動、もしくは後輪駆動ベースの4WDのため、構造上、タントやタフトといったメジャーな車種が用いるエンジン横置き用CVTを流用することができないからだ。その4ATとてその前の世代の改良型のはずだから、実質的には20年以上にわたって4ATを使い続けてきたことになる。 じゃさっさと縦置き用CVTを開発すればよかったではないかと思うかもしれないが、そう簡単にはいかない。軽乗用車用のCVTは多くの車種が使うため、どんどん減価償却でき、改良も重ねられる。しかしハイゼットシリーズだけのために、エンジンに次いで多額の開発費が必要なCVTを新開発するという決断を簡単にはできない。 しかも今度も同じくらい長期間販売できる見通しは立たない。遠くない将来、軽貨物車の主流がCVTの要らない電気自動車になる可能性が高いからだ。積載重量確保の問題はあるものの、行動範囲や走行ルートがおおむね決まっている軽貨物車のほうが、乗用車よりもよりもEV化に踏み切りやすいとも言える。 同じ悩みをライバルのスズキも抱えている。エンジン縦置き用のCVTをもっておらず、軽貨物車の「キャリイ」や「エブリイ」には4ATか、彼らが「AGS」と呼ぶ5MTベースの簡易ATを使う。AGSは効率は高いが、変速ショックが大きくギクシャクしがち。人気モデルのジムニーが今でも5MTか4ATしか選べないのはエンジン縦置きだからだ。 ホンダ「N-VAN」は軽貨物車としては異例のエンジン横置きの前輪駆動(および前輪駆動ベースの4WD)のため、軽乗用車のNシリーズ用のCVTを搭載することができる。その代わり軽貨物車にとって重要な荷室長が短いというデメリットを甘受している。エンジンの後ろに乗員が乗る分、エンジンの真上に乗員が乗るハイゼットやエブリイよりも荷室が短くなるのだ。 ただしこのタイミングでどうしてもCVTを新開発し、ハイゼットシリーズの燃費を向上させる必要があった。今年4月1日までに小型貨物自動車の2022年燃費基準をダイハツとしてクリアしなければならないからだ。そのかいあって、ハイゼットシリーズの燃費はカーゴで最高15.6km/L、トラックで同16.5km/Lとなり、従来に比べ約10%向上。ライバルのエブリイ5AGS車の15.8km/L、キャリイ5AGS車の16.1km/Lと肩を並べた。 ダイハツ アトレーのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットカーゴのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットトラックのカタログページを見る ダイハツアトレーの買取相場 ダイハツハイゼットカーゴの買取相場 ダイハツハイゼットトラックの買取相場 ACCやレーンキープ、アウトドア用途も考慮した便利機能も装備先代と同じ自然吸気エンジンを搭載するハイゼットカーゴから試乗した。まず絶対的に静かになった。特に60km/h以上の巡航時に顕著。従来の4AT車に比べ、エンジンの回転数が低く抑えられているからだろう。ダイハツのCVTはローだけギアをもつタイプのため、発進加速性能も十分だ。同じエンジンとCVTを搭載するトラックについても同様の印象。 軽貨物車は、最大積載量は350kgながら実態としてはそれ以上の重量を積載して使われるケースが珍しくない。350kg以上積載した状態でも十分に走り、止まる性能をもっていないとユーザーに認められないのだ。ことの是非は別として。したがって100kgのバラストを搭載した試乗車の動力性能は十分と感じたのは当然といえば当然なのかもしれない。続いてアトレーに乗り換える。自然吸気エンジンのハイゼットに試乗した時点では動力性能に関してこれで十分だと感じていたが、アトレーのターボエンジンに乗ると、やっぱりこっちがいい。加速時に唸るように音を立てる自然吸気エンジンに対し、こちらは同じ加速をしても平和なままだ。 ハイゼット、アトレーともに荷室容量は広大なだけでなく、ボディ上部の絞り込みがほとんどなくなったため、上の方までデッドスペースが少ない。例えば目いっぱいダンボール箱を積むような場合に有利だ。さらに床面、側面の凸部分を可能な限り減らすことで荷物を床で滑らせるように移動させるのも容易になった。 予防安全装備の「スマートアシスト」が軽乗用車のタフトやタントと同じ最新版へとアップデートされた。対歩行者及び車両に対応した衝突警報機能、衝突回避支援ブレーキ機能が備わるほか、前後誤発進抑制機能、車線逸脱警報機能、車線逸脱抑制制御機能、ふらつき警報、標識認識機能、アダプティブヘッドライト、オートハイビームなどが盛り込まれた。さらにアトレーには全車速追従機能付きACCや車線中央維持をアシストしてくれるLKC(60km/L以上でACC作動時のみ)まで備わる。就業者の高齢化は年々進んでいる。安全性能の向上は軽貨物車ユーザーやその家族にとって安心材料となる。 キーを取り出さなくてもロック/アンロックができ、シリンダーに差し込んで回さなくてもエンジンスタートができるキーフリーシステム&プッシュボタンスタートも備わった。9インチもしくは6.8インチのディスプレイオーディオが設定され、「CarPlay」、「Android Auto」によってスマホのナビアプリなどを使えるようになった。リアカメラ映像を常時映し出すスマートインナーミラーも設定された。いずれも乗用車では珍しくない機能だが、軽貨物車ユーザーが待ち望んでいた機能だ。今や軽貨物車は配達などで決まった行動範囲内しか走行しないビジネス用途のみならず、車中泊をはじめとしたアウトドア用途も考慮しなければならない。このためナビ機能をはじめとする便利機能も求められるのだ。 ダイハツ アトレーのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットカーゴのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットトラックのカタログページを見る ダイハツアトレーの買取相場 ダイハツハイゼットカーゴの買取相場 ダイハツハイゼットトラックの買取相場 商用車ならではの広い荷室は商売や趣味に可能性を秘めているアトレーがハイゼットをベースとし、ターボエンジンを設定し、豪華に仕立てたバージョンという位置づけは、1981年発売の初代から変わらない。ここ2世代(1999-2005の4代目と2005-2021の5代目)は乗用車として開発されてきたが、今回は商用車に戻した。軽ワンボックスの商用車と乗用車の決定的な違いは後席だ。後席前のスペースを自由に定め、スライドやリクライニングが可能な後席を装着するには乗用車であることが必要。いっぽうで商用車として販売するなら、リクライニング不可の簡素なシートを(荷室空間が確保されるよう)前のほうに設置しなければならない。その代わり商用車のほうが税制面で有利なのだ。 アトレーが乗用車を中心となった2000年代のはじめには、今ほど軽ハイトワゴンのラインアップが充実していなかったが、現在では「ムーヴ」、「ムーヴキャンバス」、「タント」、「ウェイク」などよりどりみどり、そのためダイハツはアトレーの乗用車としての使命は終わったと判断。新型を再び商用車に戻し、ターボエンジン専用の豪華なハイゼットとして存立させた。乗用車のハイトワゴンよりも広大な荷室を商売にも趣味にも自由に使ってほしいというわけだ。 CVT採用によって燃費が向上し、4AT時代の変速ショックからも解放されたハイゼットとアトレー。簡易的な後席を格納することで生まれる軽乗用車では得られない広大な荷室は、商売にも趣味にも大いなる可能性を秘めている。エンジンで動く軽貨物車の集大成と言える。あとせっかくエンジン縦置きパワートレーンを開発したのなら、最後に一発徒花覚悟でFRの軽スポーツカーを開発してほしい! ダイハツ アトレーのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットカーゴのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットトラックのカタログページを見る ダイハツアトレーの買取相場 ダイハツハイゼットカーゴの買取相場 ダイハツハイゼットトラックの買取相場 スペック例【 アトレー RS 2WD 】 ダイハツ アトレーのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットカーゴのカタログページを見る ダイハツ ハイゼットトラックのカタログページを見る ダイハツアトレーの買取相場 ダイハツハイゼットカーゴの買取相場 ダイハツハイゼットトラックの買取相場 |
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