日産と共有の車台で大きく広くパワフルになった三菱自動車が得意とする電動化技術と四輪制御技術を一台に凝縮したフラッグシップの「アウトランダーPHEV」がモデルチェンジし、12月16日に発売される。発売を前に最終プロトタイプに試乗した。力強く、よく曲がり、快適な力作で、“欲しくなるPHV”に仕上がっていた。 2016年、日産自動車が三菱自動車の株式の34%を取得し、ルノー日産三菱グループが誕生した。グループが立てた戦略にのっとって、三菱「アウトランダー」と日産「エクストレイル」は車台を共有することになった。つまり来年出てくるエクストレイルはアウトランダーPHEVの兄弟車だ。ただしあちらは得意のe-POWERを採用してくるはず。 フロントマスクは三菱が「ダイナミックシールド」と呼ぶ例のデザインだ。「X」の文字を縦に割って間にグリルを挟み、両脇に独立したヘッドランプを配置する大胆な顔つきは、これまでにもデリカD:5、eKシリーズ、エクプリスクロスなどに採用されてきた。当初ギョッとさせられたこの顔も、時間がたって見慣れてきた。デザイナーもよりうまく使いこなせるようになってきたのだろう。これまででもっともしっくりきている。 全長4710mm、全幅1860mm、全高1745mm、ホイールベース2705mmと、現行型に比べ大きくなった。フロント、サイド、リアを通して水平基調のデザインが貫かれているせいか、実際以上に長く、ワイドに見え、安定感がある。サイズ拡大は室内空間拡大に活かされていて、乗り込んですぐに、あ、広いと実感する。具体的には前席左右の間隔が25mm、2列目席膝前が28mm、それぞれ拡大しているほか、トランク容量も増えた。 インパネデザインも水平基調だ。センターディスプレイをダッシュボードに埋め込むのではなく、独立したタブレットを立てかけるように配置する最近多いパターンが採用された。シート素材はグレードによって、レザー(2種類)、人工皮革、ファブリックから選べる。運転席の視界は良好で、ドライビングポジションも自然。前席シートやステアリングホイールの前後、上下の調整代が広がったため、体格を問わずだれでも好みのポジションを得られるはずだ。 2.4リッター直4エンジンをフロントに横置きし、駆動用バッテリーをアンダーフロアに敷き詰め、前後それぞれの車軸にモーターを配置するレイアウトは現行型と同じ。だが各部の性能が向上した。バッテリー容量は13.8kWhから20kWhに増大。これによりEV走行可能距離が65kmから83~87km(装着タイヤによる)に伸びた。燃費は16.4km/Lから16.2~16.6km/L(同)と横ばいだが、ガソリンタンク容量が45Lから56Lに拡大したため、クルマ全体としての航続距離は伸びた。 ただバッテリー容量拡大は、EV走行距離および燃費向上のためというよりも、電圧を300Vから350Vに高めたことと合わせて、モーター出力の向上に対応すべくバッテリー自体の出力を高めるのが狙いだ。新型はフロントモーターの最高出力が60kWから85kWへ、リアモーターのそれが70kWから100 kWへと向上した。 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 クリープが残念だがAYCの4WDは不自然なほどよく曲がるこれによって現行型とは段違いの加速力を味わうことができるようになった。発進加速から中間加速まで、どんな速度域からでもアクセルペダルを踏めば背中を押されるような加速が手に入る。モーター駆動車特有の変速による途切れのない加速が心地よい。バッテリーの容量が拡大したことで、これまでよりさらにエンジン始動の頻度と時間が減った。電力残量に余裕があれば、アクセルを全開にするといった高負荷をかけない限りエンジンは始動しない。 アウトランダーPHEVにはイノベーティブペダルオペレーションモードが備わる。いわゆるワンペダルドライビングが可能となるモードで、アクセルペダルを戻すだけで強い減速が得られる。微妙な加減速を繰り返す場面で、右足をアクセルとブレーキの間で行ったり来たりさせる頻度を減らすことができる。これが実にコントローラブルで、運転が楽になる。サーキットで、タイヤのグリップ力の限界を右足で探りながらコーナリングする際に、実に頼もしい装備となった。雪道でも重宝するはずだ。ただ通常のAT車と同じ挙動とするため、アクセルペダルを完全に戻しても車両は完全停止せず、クリープ状態に移行する。これは残念。完全に止まってくれたほうがコントロールしやすいと思うのだが……。 三菱自動車には歴代のランサーエボリューションで培った4WD技術の蓄積があり、それらは電動車用に最適化されたうえで新型アウトランダーPHEVにも惜しみなく投入された。状況に応じて前後の駆動力配分を最適化するのはもちろん、ブレーキ制御によってコーナーを曲がりやすくするAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)も備わる。現行型のAYCが前輪のブレーキ制御だったのに対し、新型では後輪も制御するようになり、より大きな効果を発揮するようになった。試乗コースはサーキットだったため、ハイスピードでコーナーを曲がってみたが、アンダーステアを感じさせず、ステアリングを切れば切っただけグイグイとクルマが内側を向いてくれるのはAYCあればこそ。不自然なほどよく曲がる。速く曲がるためだけのものではなく、滑りやすい路面でタイヤのグリップ力の範囲内で最大限の曲がりやすさを発揮し、ドライバーの不安を低減してくれるはずだ。 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 アウトランダーはPHEV2.0へとアップデートされた20kWhの大容量バッテリーを搭載するアウトランダーPHEVは走行していない時にも役に立つ。電化製品のコンセントを直接挿し込んで最大1500Wの電力を使うことができるほか、車両と建物をV2H機器で繋ぎ、建物全体に給電することもできる。ガソリン満タンの状態からだと一般家庭の約12日分(現行型は約10日分)の電力を取り出すことができる。キャンピングトレーラーでひと晩過ごす程度の電力なら、エンジンをかけなくても駆動用バッテリーの電力だけで十分事足りる。現行型同様、走行充電によって目的地(キャンプ場など)に着いた時点で満充電にできるチャージモードも備わる。 最近の三菱車は日産の運転支援システム「プロパイロット」を「マイパイロット」と名付けて採用する。当然新型アウトランダーPHEVにも設定される。アダプティブ・クルーズ・コントロールとレーン・キープ・アシストを統合制御し、先行車との車間距離の調整と車線中央維持をクルマがアシストしてくれる。先行車や車線の認識能力が高く、不安なく使うことができる。先行車の停止に合わせて自車が停止しても、30秒以内に先行車が再び発進すれば自車も自動的に再発進する。渋滞時の神装備。 長いEV走行可能距離と航続距離、パワフルな走行性能、有用な給電機能、最先端のADAS……。いち早くPHEVを市販した三菱自動車が、各社のPHEVが出そろいつつあるこのタイミングで満を持してアウトランダーPHEVを刷新し、PHEV2.0へとアップデートした。現行型には設定のない3列7人乗り仕様が新たに設定されたことも、大家族には朗報だろう。価格は462万1100~532万700 円。令和3年度のクリーンエネルギー自動車導入事業費補助金(19万1000円<P、Gグレード>、20万1000円<Mグレード>)が適用される。 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 スペック例【 三菱 アウトランダー PHEV P 】 >>三菱 アウトランダーPHEVのカタログページを見る >>三菱アウトランダーPHEVの買取相場 |
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