戸惑いも感じたフルモデルチェンジ2014年に発売され、つい先日まで売られていた先代の「スズキ アルト」が好きだった。車台から一新され、大幅な軽量化を果たした意欲作で、著名な日本人カーデザイナーが関与したと噂されるベースモデルのデザインも秀逸だった。台形が特徴的なヘッドランプや、リアコンビランプをゲートではなくバンパーに埋め込む処理が斬新で、ヨーロッパのベーシックカーのような趣きがあった。ターボエンジンを搭載するスポーティーバージョンの「アルト ワークス」もこの世代で久々に復活した。 2021年12月に発売された9代目となる新型アルトは、ヘッドランプ形状に先代の面影を残すが、全体のフォルムは変わった。やや丸みを帯びた。全高も高くなった。初めて画像を見た時にはボディ全体の輪郭がぼやけたように見え、やや戸惑った。先代を初めて見た時のような衝撃はなく、どこかの何世代目かにこんなのなかったっけ? と感じたが、実際に見るとキュートに見えないこともない。 >>新型アルトのおすすめグレードを見る 乗り込んですぐに感じる広さ車台は先代の8代目と共有する。上位グレードにスズキが「ハイブリッド」と呼ぶマイルドハイブリッド機構が備わったのが特徴。下位グレードには先代に引き続きエネチャージ機構(強化型オルタネーターで減速時に充電し、ライトやメーター、ポンプなど一部の電装品の電力を賄う省エネシステム)を採用する。試乗したのは最上級グレードのハイブリッドX。ただし、生産スケジュールの都合で、新型自慢の全方位モニター付きディスプレイオーデイオ装着車や全方位モニター用カメラパッケージ装着車ではなく、ディスプレイのない仕様。 先代に比べ室内高が45mmも増えているため、乗り込んですぐに広さを感じる。ドア内張りの形状を工夫し、室内幅も25mm拡大した。新たにカーテンエアバッグが全車標準となったため、後席の頭部横のルーフが回り込んだ部分との距離がわずかに縮まった。 インパネは外観同様に丸みを帯びた形状の部分が立体的に連続するデザイン。シート表皮は全グレードを通じ、「あらゆる世代で親しまれるデニム調」(資料より)が採用された。確かにデニム調だが、オカンが買ってくるジーパンの風合いだ。何オンスとかじゃなく、伸び~る的なやつ。でも掛け心地は良好。 >>新型アルトのおすすめグレードを見る 「環状骨格構造が効いているはずです」幕張の街なかを走らせた。歴代アルトは乗用車のなかで最もベーシックな存在であり、新型の発表会でも鈴木俊宏社長は「下駄を極めていきたい」と述べた。なので乗り心地にはさほど期待せず走らせたところ、予想よりもずっとしっかりしていて驚いた。街なかを流すだけで、先代よりもしっかりしていることがわかる。 「環状骨格構造が効いているはずです」と、四輪ボディー設計部第一設計課の河田武志課長代理。左右ドア開口部、バックドア開口部、それに左右センターピラーとルーフとフロアを囲む部分の計4カ所を「環状構造」としてボディを補強する手法で、2代目ハスラーで初めて採り入れられた。 具体的には、段差など路面から入力を受けた際、ガチャンという直接的な衝撃ではなく、ドンという間接的でマイルドな衝撃として乗員に伝える。軽自動車にしては、ではあるが。 >>新型アルトのおすすめグレードを見る “ハイブリッド”の効果は大きい通常のオルタネーターに代えて発電効率に優れたISG(モーター機能付き発電機)を備え、減速エネルギーで発電してバッテリーに貯え、加速時にその電力を使ってモーターアシストするマイルドハイブリッドシステムを、スズキは早くから積極的にいくつかのモデルに採用してきた。一方、エネチャージ機構も減速エネルギーをバッテリーに貯えるが、その電力を加速には用いず、電装品に供給するにとどまる。 ISGを用いたマイルドハイブリッド機構があるとないとでは、同じノンターボエンジンでも、加速時の力強さがかなり異なる。現在ターボエンジンの軽自動車に乗る人でも、これならノンターボエンジンでも構わないと考える人が結構多いのではないか。ただしアシストは一時的なので、連続して負荷がかかる高速道路を多用する人には、アルトではなくターボエンジンを搭載する車種をオススメする。 燃費はマイルドハイブリッド機構のモデルが27.7km/L、エネチャージ機構のモデルが25.2km/L(いずれも2WD車・WLTCモード)。減速エネルギーを電力に変える機構をもたないライバルの「ダイハツ ミライース」(25.0km/L)を上回る。 >>新型アルトのおすすめグレードを見る 時代に合わせたベーシックアルトは日本を代表するクルマだ。1979年に初代が登場し、8代目までの42年間で約526万台が販売された。平均すると国内で42年間、ずーっと月1万台以上売れ続けていることになる。世代ごとに見ると、初代が84万台、84年登場の2代目が93万台、88年登場の3代目が126万台と順調に販売を拡大していく。ところが94年登場の4代目で52万台と一気に減る。 なぜか? 後に大ヒットモデルとなるワゴンRが93年に登場するからだ。ワゴンR登場以降、軽自動車の販売の中心はワゴン系へと移行し、その傾向は現在も続く。 それでも98年登場の5代目が54万台、2004年登場の6代目が35万台、09年登場の7代目が39万台、14年登場の8代目が42万台と、最盛期の3分の1程度で下げ止まっているのは、ベーシックな商用車、営業車としての用途があるからだ。 ベーシックな存在として、歴代アルトはできるだけ装備を標準化せず、オプション設定し、ユーザーに必要な装備だけ選んでもらう姿勢を貫いてきたが、新型では衝突被害軽減ブレーキ(令和7年12月までにすべての国産車が装備しなければならない)や6エアバッグを全車標準装備とするなど、標準装備を充実させた。その分、先代よりは価格がやや上がった。ちょっと広くなって立派になって、よりよく走るようになったのが、新型アルトなのだ。 >>新型アルトのおすすめグレードを見る スペック例【 アルト ハイブリッド X(FF車)】 >>新型アルトのおすすめグレードを見る |
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