デザインだけじゃなくボディサイズが大きくなっている「三菱 エクリプスクロス」が大幅に仕様変更された。2017年秋の発売から約3年。ちょっと早めのテコ入れとなった。サイズアップするとともにデザインが変わったほか、途中で追加されたディーゼルモデルが廃止され、代わってPHEVモデルが追加された。10月15日に予約注文の受付を開始し、11月末時点で月販目標の2倍に相当する約2000台の受注が入っている。PHEVモデルに試乗した。 新型は基本骨格は従来型と同じで、扱いとしてはマイナーチェンジだが、全長は4545mmと、従来型に比べて140mmも伸びた。ホイールベースは2670mmと同じだが、前オーバーハングが35mm、後オーバーハングが105mm伸びている。全幅(1805mm)、全高(1685mm)は変化なし。 デザインが結構変わった。フロントマスクはエクリプスクロスのみならず、ミニバンの「デリカ D:5」や軽自動車の「eK クロス」、「eK クロススペース」にも採用されるおなじみのダイナミックシールド顔を踏襲する。ランプ類のレイアウトがやや変更された。リアは大幅に変わった。従来型はリアウインドウが上下に2分割され、後端がストンと切り落とされたコーダトロンカスタイルだったが、新型は膨らみのあるフォルムとなった。従来型はハンサムだがどこかアンバランスで、僕は親しみを込めて“農道のイヴォーク”と名付けていたが、新型は表参道でも似合いそう。 サイズアップは新設されたPHEVユニットを収めるため。どうせ長くなるんならデザインも変えてやろうということだろう。PHEVユニットはアウトランダーPHEVのコンポーネンツがそのまま移植された。というより、元々両車は同じ骨格で作られているので、同じ車台からアウトランダーPHEVとエクリプスクロスPHEVをつくり分けているというべきだろう。 EVそのものの走行感覚、高度な4WD制御三菱のPHEVは前後車軸にモーターが1基ずつ配置されるツインモーター式で、4輪を駆動する。バッテリーの総電力量は13.8kWhで、満充電からだと57.3kmのEV走行が可能(WLTPモード)。外部から普通充電(200Vで約4.5時間で満充電)および急速充電(約25分で80%)ができるほか、搭載される2.4リッター直4エンジンを稼働することで約46分で約80%まで充電できる(停車中の場合。もちろん走行しながらでも充電可能)。 一定速度での巡航時に限ってエンジンを駆動に用いるが、それ以外の場面ではモーター駆動のため、走行感覚はEVそのものだ。発進から巡航にいたるまで変速なしにスムーズに加速する。始動直後、高負荷時などに必要に応じてエンジンが始動するが、音と振動はよく抑えられており、始動しても不快な印象はほとんどない。モーター駆動の特性上、発進と同時に大きなトルクを発するため、体感的なパワーは十分以上。いつなんどきもアクセル操作にレスポンシブに反応してくれる。 ステアリングホイール奥のパドルを操作することで回生ブレーキの強さをコントロールできる。コーナー手前で左パドルを連続的に引いて減速する操作は、できの良いトランスミッションをギアダウンして減速する感覚に似ていて、それ自体がなかなかのエンタメだ。 三菱自動車といえば、歴代のランエボが凝った4WD技術を駆使してWRCで大暴れしたのを思い出す。現代の三菱はWRCにこそ出ないものの、当時培った4WD技術とツインモーターを組み合わせ、きめ細かい制御によってさまざまな局面でトラクション性能とコーナリング性能を両立している。前後モーターそれぞれが独立して制御されるため、前後トルク配分は自由自在だし、必要に応じてコーナーで内側の車輪のみにブレーキをかけるAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)によって、左右のトルク配分も制御する。今回は街なかでの試乗のみだったので限界性能を試すことができなかったが、同じシステムを採用するアウトランダーPHEVを雪上で走らせたことがある。雪上で最も姿勢をコントロールしやすいクルマだと思う。 アウトドアで使える給電性能、戦略的な価格にも注目大きく気になった点はないが、ヘッドアップディスプレイはフロントウインドウに投影するタイプではなく、その手前に出現する透明のプレートに情報を映すタイプ。できればウインドウに直接投影してくれたほうが見やすいし、見栄えもよい。コストの面でこちらが採用されたのだろうが、ヘッドアップディスプレイは必須の装備ではないので、ガラスが無理ならメーター内の表示を見やすくすることに注力してもよかったのではないか。もう一点、ATのPポジションはレバー操作ではなく、レバーのすぐ近くのスイッチを押して入れるのだが、やや押しにくい。 欧州勢を中心に多くのPHEVモデルが日本で販売されているが、それらに対する三菱のPHEVモデル(というか日本メーカーのPHEV全般)の優位性は給電性能だ。つまりバッテリーに蓄えた電力を車内や車両の近辺で電化製品を動かすのに使える(最大1500W)。アウトランダーPHEVがキャンパー、とりわけキャンピングトレーラーを牽引する人々に人気の理由はそこにある。彼らはこれまでアウトドアでの電力を発電機やポータブルバッテリーに頼ってきたが、13.8kWhの容量があれば十分な電力を取り出すことができる。ホールドモードやチャージモードをうまく使えば、満充電で目的地に到着してキャンプを始められるというわけだ。 また急速充電口にV2H機器を接続することで車両に蓄えた電力を家で使うこともできる。満充電の状態で一般家庭約1日分の電力を取り出せるほか、エンジンをかけて発電すれば満タンで約10日分の電力を取り出すことができる。災害時に有効。割引がある時間帯に車両に充電し、割引のない時間帯に車両の電力で家庭の電気を使うこともできる。使いこなせば相当な節約になりそうだ。欧州メーカーのPHEVは不思議と(EVでさえも)給電機能が備わっていない。これは大きな差だ。 エクリプスクロスのPHEVモデルは384万8900円~。減税や免税を考慮すると目下国内人気ナンバーワンSUVのトヨタRAV4ハイブリッドの4WDモデルと変わらない戦略的な価格設定となっている。HVの価格でPHEVに手が届くとなれば迷うこと必至。 スペック例【 エクリプス クロス PHEV P 】 |
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