一般的な立体駐車場に入れやすい全高1540mm「新時代の国民車」を探す実地調査企画の第27回。今回の調査対象は、2019年9月に登場したマツダのクロスオーバーSUV、「CX-30」である。 以下、決して筆者が望むところではないのだが、どうしても多少辛辣なことを書かせていただくことになる。だがそれは今回の試乗車両である「XD Lパッケージ 4WD」というグレード限定の話であり、決して「CX-30全体の話」ではないことは、あらかじめご承知おき願いたい。 とはいえいちおう、CX-30全体の話も軽くしておこう。 マツダ CX-30は、先にデビューした「マツダ3」(旧型の車名はアクセラ)をベースに作られた、「小型」と「中型」の間ぐらいのサイズ感となるクロスオーバーSUV。日本における超売れ筋SUVであるホンダ「ヴェゼル」やトヨタ「C-HR」と――もちろん微妙には異なるが――おおむね似たような寸法である。ただしCX-30は全高1540mmということで、一般的な立体駐車場に入れやすいという点は大きなアドバンテージだ。 搭載するエンジンは、まずはガソリン自然吸気の「スカイアクティブG 2.0」とディーゼルターボである「スカイアクティブD 1.8」の2本立てで販売をスタートさせ、2020年1月に新世代ガソリンエンジンの「スカイアクティブ X」を追加した。トランスミッションは6速ATだが、ガソリンエンジン車では6MTを選択することも可能。駆動方式は全グレードにFFとAWDが用意されている。 ちなみによく似た車名の「CX-3」は、マツダ3ではなく「マツダ2」(旧名デミオ)ベースのよりコンパクトなクロスオーバー車で、CX-30とはまったくの別物だ。とはいえデミオの車名がマツダ2となった今はCX-3を「CX-2」という車名に変え、CX-30を「CX-3」とするのが筋だとは思うのだが、まぁ今さらどうしようもないのだろう。 それはさておき今回の試乗車両は、そんなマツダ CX-30のXD Lパッケージ 4WD、つまりは「ディーゼルターボのヨンクの、いちばん豪華なやつ」である。 低速域でのバタつきは重めの車両重量が原因か?結論から申し上げると、このグレードは「日本の速度域には合ってないのでは?」と筆者には感じられた。 やや飛ばし気味に走る分にはひたすら気持ち良く、まさにメーカーが言うとおりの「人馬一体」感を強く感じるのだが、日本の(特に都市部での)常用速度域で使う限りにおいては意外とそうでもないのだ。 具体的に申し上げよう。 先ほど言ったとおりの「やや飛ばし気味」の速度域に達した後は、非常に気持ちのいい走りが堪能できるクロスオーバー車であることは間違いない。ついでに言えば「デザイン」のクオリティも、世界的に見てもクラストップレベルであろう。 だがそういった速度域に達するまでの、というか東京都内などの一般道では常態化している「ノロノロというほどではないがゆっくりめな速度域」、あるいは少しだけ混雑している高速道路でしばしば陥る「100km/hではなく80km/hぐらいで巡航せざるを得ない」といった局面が、このグレードはやや苦手なのだ。 遅めの速度域では常に若干の突き上げ感のようなものを感じ、なおかつ、その速度域のまま交差点などを曲がる際にも、ステアリングおよび車全体から若干の「ナマクラ感」を感じてしまう。速度を上げればぜんぜん悪くなく、むしろいい感じに変わるのだが、最近のマツダ車らしい「ゆっくり走ってもひたすら気持ちいい」というアレが、このグレードではさほど感じられない。 おそらくそれは、ディーゼルエンジン+AWDゆえの重めな車両重量が災いしているのだろう。 同じLパッケージの6速AT同士で比較すると、通常の2Lガソリンエンジンを積むFFモデルの車重が1400kgであるのに対し、1.8LディーゼルターボのAWDモデルは1530kg。実に130kg、大相撲の力士で言うとおおむね松鳳山(しょうほうざん)1人分も重くなっているゆえ、低速域ではどうしてもバタついてしまうのだと思われる。 頻繁に使われるべき1500~1900rpm付近のトルクがスカスカまたCX-30が搭載する1.8Lディーゼルターボエンジンの「1000回転台でのトルクの薄さ」も、ゆっくりめに走る際の印象を悪くしている。 カタログによれば、この1.8Lディーゼルターボエンジンは1600rpmから270Nm(27.5kg-m)の最大トルクを発生するらしい。だが実際は1500~1900rpm付近のトルクはスカスカで、2000rpmあたりからやっとググッとトルクが盛り上がってくる。 「2000rpmからトルクが盛り上がるならそれで十分じゃないか」 そんな意見もあるだろう。だが実際に日本の都市部や高速道路をジェントルに巡航したい場合は、1500~2000rpmあたりというのは頻繁に使われるべき重要なバンドだ。 そこがスカスカで、なおかつ2000rpmぐらいになると急にググッと加速する様は、正直あまり気持ちの良いものではない。少なくとも、マツダがうたう「美しく走る」という概念には合致していない。 もちろん、アクセルペダルを踏んづけてやればSKYACTIV-DRIVEこと6速ATのギアはすぐさまキックダウンされ、十分な加速を得ることになる。 だがドライバーはその際、「……いちいちATをキックダウンさせないと気持ちよく加速しないディーゼルターボ車とは、果たしてどうなんだろうか?」という疑問に、常に頭を悩ませることになるだろう。 CX-30においてスカイアクティブD 1.8の存在自体が疑問またこれはAWDならではの重量問題からは逸れる議題だが、そもそも1.8Lディーゼルターボの「スカイアクティブD 1.8」の存在自体が、CX-30という車種においてはやや疑問である。 前述のとおり2000rpmを超えたあたりからはまあまあトルクフルになるのだが、それはあくまで「まあまあ」であり、ディーゼルターボならではの肉厚なトルクを期待すると肩透かしをくらう。別に悪くはないのだが、「かといって特別良いわけでもない」という意味で、いち消費者としては、27万5000円のアディショナルフィーを支払ってまでこのエンジンを入手する意義を見いだしにくい。ま、軽油だから燃料費が安く済むというのはあるにしても。 「お前、さすがにCX-30をディスりすぎじゃないか?」と感じられる方もいらっしゃるだろう。だが筆者がdisrespectしているのはCX-30自体ではなく、CX-30のXD Lパッケージ 4WDというグレードである――という点をご理解いただけたならば幸いだ。 普通の2Lガソリンエンジンを積むFFのマツダ CX-30は、普通によく走る、そして普通ではなく異常なまでに内外装が美しい、素晴らしいクロスオーバーSUVである。 ということで、全日本国民車評議会(通称:国民車会議)議長としての当該グレードに対する勝手な評価まとめは以下のとおりだ。 【 マツダ CX-30 XD Lパッケージ(4WD)=330万5500円 】 【 マツダ CX-30のその他の情報 】 国民車とは今、「新時代の国民車」が待たれている。いや、それを待っているのはわたしだけという可能性もあるわけだが、筆者が考える新時代の国民車とは以下のようなクルマだ。 「安価だが高機能かつ低燃費で、それでいておしゃれ感もある、程よいサイズの実用車」 100万円台でまるっと買えるのが望ましく、それが難しい場合でもせいぜい200万円台前半ぐらいまで。自動車オタクが求めがちなマニアックな諸性能はどうでもよく、どんな状況でも普通か普通以上ぐらいに気持ちよく運転でき、燃費が良くて維持費も安く、人と荷物をある程度積載できて、邪魔くさくないサイズで、それでいて大のオトナが乗るにふさわしい質感とデザインも備えているクルマ。 ……そんなある意味ぜいたくな一台を探し出すため、筆者はこのたび「一般社団法人 全日本国民車評議会」を(脳内で)設立し、実地調査に乗り出すことにした。 【国民車調査バックナンバー】 |
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