新しいアイテムは定期改良を待たずに投入するマツダのスタンス開発プロセスが終了して完成に至ったアイテムは、定期改良のタイミングを待つことなく導入することで、すでに販売中の車両にも常に「最新モデル」としての商品力を与え続ける――これが、昨今のマツダ車に共通をする、クルマづくりの基本的なスタンス。今年になってからでもCX-3やロードスター、アテンザなどに前例が見られる、マツダが「商品改良」と称するリファインが、CX-5とCX-8というこのブランド内では比較的大柄なSUVに対して、相次いで実施された。 両モデルに共通する今回のリファインの見どころは「走る歓びの深化」というキャッチフレーズと共に行われたターボ付きガソリンエンジンの日本初導入と、コーナーターンイン時に操縦応答性を向上させる「G-ベクタリングコントロール」をベースに、コーナーターンアウト時にも効果を持たせるべく発展させた「G-ベクタリングコントロールプラス」の採用だ。 それぞれではCX-5のディーゼルモデルに6MTの設定や2017年末の発売後初のリファインとなるCX-8には、最上級グレードに2列目をベンチシート化した7人乗り仕様を設定したり、リアアンダーフロアへの制振材追加などで特に高速走行時における3列目シートの静粛性を向上させるなど「質感のさらなる深化」というテーマに沿ったメニューが導入されたことも見逃せないポイントになっている。 レギュラーガソリン対応としたターボエンジン今回両モデルに搭載されたターボ付きのガソリンエンジンは、これまでの自然吸気仕様をベースとした2.5リッターの4気筒ユニット。「日本初導入」と記したのは、実は北米市場向けの大型SUV「CX-9」にはすでに搭載をされていたため。高圧縮比が特徴のマツダのガソリンエンジン群の中にあって、その値が10.5と欧州のライバルエンジンと比べてやや低めに感じられるのは、欧州よりもオクタン価が低い北米でのレギュラーガソリンに対応したユニットがベース、という事情と関係がありそうだ。 直線基調のクローズドコース内で短時間のみ、という条件付きではあったものの、ターボ付きのガソリンエンジンを搭載したCX-8の4WD仕様とCX-5のFWD仕様をテストドライブすることが出来た。「正しい排気量」のベースエンジンに過給を行うというコンセプトに基づき、「大排気量NAエンジン並みの過渡レスポンス」や「実用域での分厚いトルクと伸び感」を重視したという開発の狙いどころは、なるほどどちらのモデルでもしっかり体感が出来た。端的にいえば、「事前知識がない限り、それがターボ付きとは気が付かない人が大半だろうナ」という加速フィーリング。4気筒分それぞれにプライマリーとセカンダリーから成る排気通路を設け、セカンダリー側にはシャッターバルブを設置。その制御によって隣接する気筒の残留ガスを吸い出す「ダイナミック・プレッシャー・ターボ」の掃気効果が、良い意味で「ターボらしくない」というそんなテイストを生み出す主な原動力でありそうだ。 比べれば軽量となるCX-5で活発な加速感が得られるのは当然だが、CX-8でもスタートの瞬間から力感は十分。6速仕様ゆえ変速時のステップ比は大きめであるものの、駆動力のタイトな伝達感が好印象なATとのマッチングも良く、こちらのモデルでも”物足りない感”は全く受けることがないのだ。 6MTはドライブ好きに大いに受けそう一方、これまではディーゼルのみのラインナップだったCX-8では、「さまざまなライフスタイルに応じた選択肢の提供」と銘打って、前出のターボ付きと共に自然吸気のガソリンエンジンが新設定されたのも大きなニュース。ちなみに、基本スペックはCX-5用に準じるものの、こちらには気筒休止機構が採用されないのは、「重量が重い分高負荷域での使用が多く、それゆえ気筒休止が可能な領域に入り辛いため」と説明されている。 ターボ付きに比べて駆動ギア比が低められたことで、エンジン回転数の伸びに対する車速の高まりは見劣りをするものの、少なくとも1人乗りでのテストドライブでは加速力に不満を覚えることはない。3000~4000rpmで、なかなか太いトルク感が味わえるのが良い。減速時にダウンシフトを早めのタイミングで行うATは、いかにも「クルマ好きの技術者がセッティングした」という印象。それゆえ、エンジン音は比較的素直に聞こえてくるが、そこにこもり感が伴わないこともあって、余り気にならないのは幸いだ。 また、特にクルマ好きの間で話題となりそうなのが、CX-5のディーゼルにMTが新設定というニュース。こちらも短時間ながら味見が出来た。CX-5では初となる「3ペダル」のモデルだが、ドライビングポジションに違和感はない。ただし、クラッチペダル左側に残されたスペースはややタイト。幅広の靴を履いた場合、左側のフットレストと干渉の可能性がゼロではなさそうだ。 左腕を降ろした自然な位置にレイアウトされた短めのシフトレバーは、ストロークは短くないものの操作感は自然。ブレーキとオルガン式アクセルペダルの位置関係が絶妙で、実は「ヒール&トー」の操作がすこぶる行いやすいことに、またも「クルマ好き技術者」の存在を意識させられることとなった。1速ギアでクラッチのみでのスタートも可能なほか、6速ギアで1000rpm、約55km/hからアクセルを踏み込んでも何とか車速のリカバリーが可能というフレキシブルさも見逃せないポイント。強力なトルクバンドを細かくキープした走りも可能であるなど、メリハリの利いたドライブ好きには大いに受けそうなMT仕様だ。 カタログで読み解きづらい改良を積極的に導入するマツダの姿勢ところで、そんな今回のCX-5とCX-8のリファインとタイミングを同じくして、今後、すべての商品に搭載予定とアナウンスされたのが、冒頭に紹介した「G-ベクタリングコントロールプラス」だ。エンジントルクを絞ることで前輪荷重を増し、コーナーターンイン時の応答性を高める従来のGベクタリングコントロールに加えて、コーナリングの脱出時にかけては外側前輪にわずかなブレーキ力を加えることで、直進へと戻すモーメントを与えて安定性を向上させる機能を加えたことが「プラス」を謳う新しいディバイスの要ということになる。 ちなみに、ブレーキの「片効き力」を利用するという点では、いわゆるトルクベクタリングを謳うアイテムも同様。ただし、それらがヨーモーメントの発生でターンイン時の回頭性(ヨーイング)を高める機能であるのに対して、こちらはヨーイングを収める復元モーメントの活用である点が根本的に異なっている。その効果を実感するべく、特別に機能のON/OFFスイッチを備えたCX-5で、ワインディング路へとコースイン。が、白状をしてしまうと筆者自身では、実はその機能の働きを明確に体感することは出来なかった。 一方で、同行の編集スタッフやカメラマンなどからは、異口同音に「何かが違う」、「確かに安定して感じられる」というコメント。どうやら、エンジントルクの制御やブレーキ力の発生量いずれもごくわずかにしか過ぎないゆえに、コーナーのターンインやターンアウト時にアクセル操作による荷重コントロールをそもそも無意識に行っているドライバーに対しては、明らかな効果を実感させることは難しいようだ。 いずれにしても、カタログスペック上ではなかなか読み解き辛い機能を積極的に導入することで「もっと良いクルマ」を目指しているのがマツダのスタンス。派手さには欠けるが地道なリファインを続けるそうした姿勢こそが徐々に、しかし確実に「マツダ車が良い!」と指名をしてくれるファンを増やしているに違いない。 スペック【 CX-8 25T Lパッケージ(6AT・4WD) 】 【 CX-5 XD エクスクルーシブ モード(6MT・2WD) 】 |
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