外観よりも走りが大きく変わったのだが…ドレスアップするオーナーが多い「MINI」の場合、今回の変更は気がつかない人が大勢いるかもしれないが、乗れば確実に変化はわかる。今回MINIハッチバックファミリー(3ドア/ 5ドア / コンバーチブル)に施されたマイナーチェンジは、簡単に言えばそんな印象だ。 エクステリアではフロントヘッドライトの外周部分が楕円形にデイライトとして点灯する。夜はフォグランプを含めて全てのライトが真っ白のLED色で輝くように点灯。さらに、リアコンビネーションランプにはユニオンジャックがデザインされた。とはいえ、この程度の変更なら従来型オーナーとしてホッとした人も多いだろう。 しかし、乗り味は大きく変わった。正式に足回りの味付けなどを変えたというアナウンスはないが、誰もが気がつくレベルで乗り心地がよく、滑らかになっている。大人のMINIになったと表現できるほどに。思い返せば、以前MINIのフルモデルチェンジのときにも、そう書いた記憶がある。今回も同じ方向性でさらに進化した印象だ。 今回試乗した3ドアハッチバックのクーパーもコンバーチブルのクーパーSも、明らかに突き上げ感が少なく上質になった。乗り味という観点では明らかに評価できる。MINIが大事にするゴーカートフィーリングも健在だ。オススメ! と言いたいところだが、実は素直に喜べないモヤモヤがあった。これはあくまでも主観だが、MINIを買う人は、こんな優等生を求めていたのだろうか? MINIらしい走りとはどんなものだったのか?駐車場でご対面したときの非日常やワクワク感を抱かせるアイコニックな見た目。世界中探しても、MINIに似た内外装のクルマはどこにもない…それほどルックスは個性的なのに、走り出すと優等生的な、完成度の高い乗り味が備わり始めたのが新しいMINIだ。 うーん、この乗り味に拍手は送りたいが、MINIらしさとはこんな世界観なのだろうか? もっと型破りで、刺激的で、仕事やプライベートの嫌なことも、アクセルをひと踏みして、ハンドルをクイッと操作したら忘れられるような躍動感のある従来のMINIが懐かしくなってしまう。 「ポルシェ 911」が空冷から水冷になったときや、自然吸気エンジンを大事にしてきたモデルがターボエンジンに変わったときのような、クルマの性能は確実によくなっているのに受け入れたくない、そんな感情かもしれない。そうなるとよりMINIらしい走りをもった従来型を買ってもいいのかもしれない。 一方、ファッション性や個性的な見た目が好きなら、優等生的な新型MINIの方が幸せになれる。そして、この傾向の人達にはクーパーSもオススメのグレードとなった。新型はかなり穏やかで上質な味付けになったからだ。 おそらくMINIは、ジョンクーパーワークス=JCWを通常モデルの頂点としてポジショニングすることを明確にしたのではないのだろうか? そう勘ぐりたくなるほど、クーパーSは今までのトゲトゲしさが抑えられ、乗りやすくなった。以前のように荒れた道でガタピシと振動することも少なければ、ゴツンゴツンと突き上げが来る頻度も少ないし、何よりヒュンヒュンと俊敏に曲がる感覚もマイルドになっている。特にコンバーチブルはマイルド。後席後方に幌が畳まれる凝った収納動作を見せびらかしつつ颯爽と走る、そんな使い方が似合う世界観をクーパーSが備えてきた。 この上質さや優等生ぶりは、やはりBMWと基本となるプラットフォームを共有化したことでもたらされたのだろう。そう考えると、全てに納得がいく。 例えばゴーカートフィーリングは健在だが、以前のように曲がり始めるとフロントに荷重が乗ってますます曲がり込むような特性は影を潜めた。新型もクイッと俊敏に曲がり出すが、それは演出的な味付けであり、クイッという動きの後は無駄な車体の動きが抑えられ、前後タイヤをバランスよく使って綺麗に旋回していく。“綺麗な旋回”や“自然”といった表現をMINIに使うのは初めてのことだ。 クーパーSはBMWの高性能モデルを思わせる性格に今回のモデルチェンジの目玉はダブルクラッチ(デュアルクラッチ=DCT)の採用だ。6MTは従来通りだが、クーパーS、クーパー、ワンは7速ダブルクラッチ式ATに、ジョンクーパーワークスは8速トルコン式ATになった。 ノーマルモードで走る限り、トルコンATの旧モデル以上にシフト制御が穏やかになったのではと感じる。アクセル操作への反応にDCTならではのダイレクト感は出ているが、ターボが力強く回る回転数より低い1400rpm程度を常用するのだ。必要に応じてキックダウンはするが、シフトショックを嫌っているのかなかなかキックダウンしない。こうなると(ターボが働かなくても)エンジントルクのある排気量の大きいエンジンの相性が良く、クーパーSがオススメになってくる。 それにクーパーSの場合、スポーツモードにすると特性が大きく変わる。ノーマルモードの、80km/h前後なら7速/1200rpm前後で走ろうとするエコな制御から一転、2500rpm前後を積極的に使いだす。ターボも準備万端でアクセルを踏めば瞬時に反応して力強い加速を開始する。もちろんアクセルオフへの反応も鋭く速度コントロールしやすく、スポーティにも走りやすい。 加えて排気音が刺激的だ。このモードなら以前のMINIのように気持ちが高揚するが、そうなってくると荒々しさと上質さを兼ね備えたBMWのパフォーマンスモデルが思い浮かんできてしまう。以前のクーパーSは電子制御ダンパーを駆使しても、ちょっとしたギャップでガツンと跳ねたり、わだちでハンドルをとられるような俊敏さゆえのスリリングな動きがあり、それをねじ伏せながら格闘するように走らせる独特の楽しさがあったが、新型はクルマと調和してさらなる速さを楽しむような味付けになったからだ。 上質になったことでクセも気になるようになったクーパーもそしてクーパーSも上質で安定した走りをベースに、アームレストに寄りかかり、ハンドルに指を添えて高速道路をゆったり走る、そんな安楽な走りが似合うようになった。俊敏に曲がるゴーカートフィーリングも健在だから、MINIに初めて触れるドライバーの評価は高いはずだ。同時にハンドル操作に俊敏に動くからこそ、ギュッとハンドルを握りしめて運転していた昔ながらのMINIの味はとても薄まってしまった。昔が良かったと懐かしんでいるぼくの感覚が古くてオヤジ臭いということだろう。 最後に気になった点として、フロントが若干フワフワと動くフロントヘビーな動きを感じやすくなった。FFパッケージなので当然だが、以前はコツコツ系の乗り味だったのでそれほど気にならなかったのだ。新型は穏やかな乗り味を得たことで、改めてリアよりもフロントが動くミニ本来の特性が表に出てきた。クルマの素性とも言える、こうした基本の挙動を気にする人は、一度試乗したほうがいいだろう。 試乗の際にはコネクテッドの世界も体験しておきたい。スマートフォンの専用アプリを使い、鍵を閉めたり、ナビの目的地をクルマ側に送信しておいたり、車外からベンチレーションを起動させるなどのリモート操作が可能になった。クルマの位置を調べたり、故障した際にデータを送って症状を確認したり、入庫期間が最短になるように先に修理準備を依頼するなど様々なサービスが始まっている。 コネクテッドも含めて、いよいよMINIは高級車の仲間入りを果たしたとも言えるかもしれない。 スペック【 ミニ クーパー 3ドア】 【 ミニ クーパー S コンバーチブル 】 |
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